第38話  玉子焼き

雄一は一安心して家に帰って来た。そうだ父が愛用していたビデオカメラなど何台か持っているはずだ。まず仏壇の前に座り父と母の位牌と写真を眺めて線香をあげて手を合わせた。それから雄一は父の部屋に入った。流石は父だ見事に整理されて居て、すぐにデジカメとビデオカメラが見つかった。なんとデジカメは三台もあった。雄一はデジカメの写真を見た。仕事関係の写真や、それといつの間に撮ったのか雄一が仕事に出かける着前に撮ったのだろう。ランドクルーザーに乗る所の写真だった。父は自分を気にかけていてくたれとかと思うと涙が出て来た。 


気を取り直して明日は料理を作ってみよう。お袋が亡くなってから父と二人暮らしで自然と料理は上手くはないが簡単な物なら作れる。十個貰った玉子で玉子焼きを木綿屋に持って行ってみようと考えていた。この時代、玉子を焼くと云う習慣はなかったのか? 玉子焼きを食べるようになったのは江戸後期でまだまだ二百年以上先であった。ここで玉子焼きを作れば歴史が変わるということか?

玉子でも料理方法で随分と違ってくる。明日行って宗右衛門の驚く顔を見るのが楽しみだ。すでに都市ガスはないがプロパンガスはある。これはバナー用で鉄の加工なのに使う。だが工業用に使うもので繋いだとしても都市ガスと火力が違うから、台所にあるガス器具は都市ガス用で使えない。

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