第31話  3両の価値

「銭は三両ほどで宜しいですか」

「それは有難い、ただ三両あると何が買えるのでしょう」

「はっはは一両あれば家族四人で三ヶ月暮せますよ」

「えっそんなに大金ですね、そんなに都合して貰って良いのですか」

「なぁなこれからも懇意にして下されば良いのです」

それにしても缶詰は驚き二人は目を輝かせて雄一を見つめた。宗右衛門は未だに信じられない。突然未来きた人間だと言った。最初は気が狂ったおかしな男だと思ったが、色んな物を見せられ天狗が手品を使ったのか、ともあれ頭の良そうな青年のようだ。嘘を言っているようには思えなかった。


松三は手代(てだい)を二人に連れて大八車に乗せて運ぶ事となった。

運んでくれるのは有難いが、今の鉄工所に案内して更に驚かせたら、どうしょうかと懸念もあった。宗右衛門は雄一にかなり興味を持ったようで、毎日でもいいから来て話を聞かせて欲しいと頼んだ。それは雄一に取っても願ってもない話だった。これで食料は当分心配しなくもいいようだ。それに宗右衛門に頼めば、安全もある程度保証されるだろう。勿論その度に物々交換では、いずれ品物が切れてしまう。

それなら未来から得た知識を売りにして、江戸時代の金銭を手に入れる事を考えていた。

平成の時代に戻れると云う保証は何処にもない。期待していては辛いばかりだ。とりあえず、この時代を生き抜いて行くしかないと腹を括った。

ただ心配は山ほどある。車やオートバイを動かすガソリンが、いずれ無くなる事だ。

この時代の油といったら行燈に使う油が主流で食用油があったか定かではない。食用油があったら食生活も変わっていただろうまだ天ぷらが登場したのは先である。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る