第28話 この時代にデジカメ それは驚く

雄一は最後の決め手として写真を見せた。そこには鉄工所と製作所の写真。その中に映っているのは見た事もない近代設備、そこに雄一と従業員で撮ったスナップ写真。まるで宇宙人? もっともこの時代、宇宙人さえ意味不明だ。写真を見て度肝を抜かれた。まさに未来から来た人間。


「未来とやらには、こんな見事な絵を描く者がいるのですが」

「いや絵描きが書いたのではなく写真というもので、瞬時に見た物が映し出されるのです」

「そんな馬鹿な。ではどうやって」

「それなら仕方がない」

雄一はデジカメを取り出した。そして二人を映し、部屋の中も撮影した。

二人はいったい何を始めたのかとキョトンとしている。雄一は撮った写真を二人に見せる事にした。但しプリンターがない為デジカメに収められた写真だ。

「はい、これをご覧ください。これは貴方がた親子、そしてもう一枚は部屋の写真です」

二人はデジカメを除き込んだ。なんと何処かで見た顔だ。

「なんと、いつの間に書いたのですか。これは松三と私ですか?」

「書いたのではなく撮ったのです。いかがですか……少しは信じて貰えましたか?」

だが宗右衛門は、その問いに声さえ出せず溜息をついて、やっと声を絞り出すように言った。


「た! 魂が吸い取られたんじゃないか?」

「そんな事はありません。心配なら私も撮って見ましょう」

雄一は自分撮りをして二人に見せた。

「ほら私も映りましたよ。何も心配ありませんよ」

「信じ難い事だか、貴方様は普通の人間なのですよね?」

「信じてくれましたか。ありがとう御座います。それでは色々と教えて欲しい事があるのですが、まず此処は何処で、いつの時代なのですか」

「それは同じ府中の宿場町で、ほれ、先ほど来た道は甲州街道じゃよ。今は将軍秀忠様で、次期将軍が家光様と噂され最近世間は慌ただしいが。佐伯どのと申したか、気をつけなさいよ」

「えっ徳川家康が亡くなったのですか、あっいや家康様が。すると今の将軍は……秀忠公ですか」


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