第27話 電卓の凄さ

「まぁ私の時代では誰でも出来ますが、今はそれより便利な物を使います」

「ほうそれはどのような物ですか」

「それはこれです。電卓といいます」

「デンタクですか?」

説明するのが面倒なので宗右衛門に手渡した。不思議そうな顔とて電卓と雄一を見比べる。

「ほうこれは西洋の数字というものですね。でも使い方は知りません」

「流石は商人ですね。西洋数字をご存知なら早い。その数字を押すと同じ数字がでます。足し算なら+を引き算なら―と最後に=を入れれば簡単に計算出来ます。慣れると便利なのですよ。とは言っても日本に西洋数字が入って来たのは明治五年(1872)ですから……ところで今は何年ですか」


「寛永七(1630)ですが、それも知らないのですか」

「ちょっと待って下さいよ。では現在の将軍は秀忠様、二年先(寛永9年)に家光様が将軍になるのですね」

「どうしてそんな事が分かるので?」

[あっ失礼、歴史がそうなっていますので]

「……意味が分かりませんが」

「そうですね、でも私には分かるのです。それはそれとしてデンタク西洋数字が分からないと使えません」

「そうでしょうね。便利でも西洋数字がわからないし無理ですね」

「いやいや簡単ですよ、これを見て下さい」


雄一はポケットかボールベンを取り出し、紙を借りて和数字と西洋数字を並べた。

数字以上に驚いたのはボールペンだ。墨を使わらず細いボールペンで文字を書いたからだ。

構わず雄一は数字を一から十まで書き終えた。

「上が和数字で下が西洋数字です。つまり1は一2は二3は三4は四5は五       6は六7は七8は八9は九10は十となります」


宗右衛門は早速25と5入れ=を入れると30と出た。

「つまり和数字と西洋数字を覚えれば良いのです。答えを書くときは三十と和数字で書けば良いのです。たった十文字覚えるだけですから分かりやすいでしょう」

「そうですね、なんとソロバンより早く答えがでますね。凄いものですね」

「なんなら、上に和数字と下に西洋数字を書いておきましょうか。つまり早見表です。それで電卓で答を見比べれば便利になりますよ」

「なるほど、では数字を入れて見ましょう。味噌三十文として一日の売りが二十個、一月三十日としてその合計が一万八千文。で早見表を見ればいいんですね」

「いゃあ大したものです。ご主人は頭が良い。これはどんなに大きな数字で瞬時な答えが出るから商いには一番ですよ」

「いやあ凄い、これはいくらなら譲って貰えます」

「出来れば米と玉子など都合して貰えれば」

 やはりこの男、未来から来た者かも知れないと思った。

 流石の宗右衛門も目を丸くして手には汗をかいていた。

「まさか……しかしこんな品物を見せられては、真(まこと)かと思えてくるが。しかし天狗が鞍馬の山に居ると聞いた事があるが、手品師でもなさそうだし、他に何か?」

宗右衛門は興奮して、未来から来たと云う目の前にいる男を、目を点にして見つめた

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