第24話  商人との出会い

距離にして二キロも歩いただろうか、その間は互いに何も話をすることはなかった。

雄一も何を話しても簡単に信じて貰える訳がないからだ。それと心配もあった。このまま役人の所に連れてゆかれるかも知れない疑念が残る。それとバイクは隠してきたが追われたら二キロも走って逃げなくてはならない。

そんな事を考えながら歩くと、どうやらここは町らしい。時代劇ドラマで見たような店が何軒か見える。それと道も広くなった。ここなら大型トラックでも通れるだろうか。そんな思いが過る。


「ほれ、あそこに見えるのが蔵だ。味噌と醤油を作っている家だ」

「味噌ですか? あの味噌汁に使う……それで大豆を仕入れにきたたんですね」

「あんたも面白いことを言う人だね。ほかに何がある?」

「じゃあ、味噌着けや、おでんとか」

「なに、味噌漬け。変なことを言うなぁ他に外に何がある」

もしかしたこの時代味噌はあっても味噌漬けはなかったのだろうか? となるとキムチもないだろう。元々キムチは韓国の漬物だ。


「うちは、漬物は売ってないかけど農家では味噌漬けを作っているよ」

「じゃあキムチは……失礼あるわけないか」

「キムチ? なんだそれ。やっぱりあんた異人さんかい」

大きな門を潜るとプーンと味噌の匂いがして来た。蔵の方から数人の男が出てきた。こちらを見てお辞儀をしているようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る