第21話 金が使えないから物々交換しかない

その翌日、簡単使えないを炊いて、最後に一個残った玉子を焼いた。あとはインスタント味噌汁に、お湯を入れて出来上がりだ。

質素な食事だが、このままでは食料が底をつく贅沢は言っていられない。

食事した後またオートバイのエンジンを掛けた。本当は車が良いけどガソリンを節約しなくてはならない。

工場で使う重油やガソリンは貯蔵タンクに保管してある。重油は五千リッターほど、ガソリンは二千リッターだけだ。勿論二千リッター充分だが、江戸時代で一生、生きて行くならいくらあっても足りない。個人ではこれだけの量は貯蔵出来ないが製作所で使う為に許可を取ってある。重油はともかくガソリンが底をついたら車もバイクも本当に鉄の塊でしたかなくなる。雄一なら重油からガソリンを作れない事もない。ライザー、リアクター、再生器そして蒸留装置などの装置で作れるが、これらの装置を作るのに手間がかかる。いずれ必要な時に考えれば良い。


それより何より勇気を振り絞って人と会わなければならない。そして食料を分けて貰うしかない。生きる為にはどうしても必要だ。また侍と出会い面倒に巻き込まれるかも知れない。それを覚悟でもう一度、この時代の人間と会い生きる道を探さなくてはならない。

金はあるが、この時代ではまったくの紙切れでしかない。銀行預金もカードも全て失った事になる。もはや無一文の身だ。そうなると物々交換しかなくなる。その時の為に喜ばれる小物を用意しなくてはならない。

目についたのが使い捨てライターだ。趣味で集めた訳ではないがパチンコの景品で十五個ほどある筈だ。他にチョコレートが数二十個冷蔵庫に入ったままだ。そのうちのライターを三個を持った。他に思いついた物をバックに入れて行く。これは物々交換するつもりはないがデジカメだ。万が一平成の世に戻った時の為に、この時代の景色や人物を取ることだ。覚悟を決めてオートバイに乗りヘルメットを被った。本当は車の方が安全だがガソリンの節約が出来るのと小回りが効くので細い道でも素早く逃げられる利点がある。


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