第15話 侍が鉄の箱(車)を見て驚く
「お主は何者だぁ!」
この侍も怖いようだ。顔が強張っているが威勢だけは良かった。
「こんにちは……怪しい者ではありません。刀を引いてください。大丈夫です。私は日本人です」
「にほんじんだと……なっなんだ。この鉄の箱は?」
「これは自動車と言います。動くのです。動かしてみましょうか」
「動く? 何が動くというのだ。お主……異人ではないのか?」
「その前に聞きたいことがあります。今は何年ですか? それとここは何処ですか?」
「何を妙なことを言うておる……お主、信長様が明智光秀に本能寺で襲われ自害なされた。お主はまさか明智の間者じゃあるまいのう。とにかくその箱から出ろ!」
「それは本能寺の変……私は間者でない、そう殺気だたれては出たくても、その刀で切りつけられては堪りませんよ」
「間者じゃないなら……よし、それなら刀を引く。おい! 刀を引け」
侍たちは刀を鞘に納めた。そんな様子を嗅ぎつけたのか農民らしき者たちが十人ほど遠巻きに見ている。
「いま降りるから遠くに下がってくれ。でないと降りない」
侍たちは互いに顔を見合わせていたが、やがて五メーターほど後ろに下がった。だが雄一は降りた途端に取り押さえられる危険を感じて、窓から身を乗り出し大声を発した。
「今から車のエンジンを掛け動かしから、驚くなよ」
侍たちは見たことがない車と云う鉄の塊と、聞き慣れない言葉に、かなり戸惑っているようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます