第14話  侍と対峙した雄一

雄一は思った。さぁここからが問題だ。たぶん家の中に居る大人達に知らせに行ったのだろう。さて、どんな反応を見せるか? 自分としては勿論、友好的な話し合いをしたい処だが、いきなり襲ってくることも充分考えられる。車のドアはロックして、いつでも始動出来るようにエンジンキーを握って、その時を待った。緊張のせいか手には汗が滲んで来た。いよいよ四百四十年前の人間とのご対面だ。その瞬間から歴史が変わる……。


 なんと! 出て来たのは百姓ではないようだ。テレビで見る侍姿だ。腰に刀を持った侍らしき人間が六人ほど出て来た。しかも槍も持っている。

その先頭に先ほどの子供がこちらを指差している。その侍達は見た事もない大きな鉄の箱を見て、子供以上に驚いた顔をしている。アングリと口を開いて呆然としている。

 その中から恰幅のいい侍が前に出た。この中で一番偉い侍なのだろうか、腰の刀に手を掛けて恐る恐る近づいてくる。

雄一は焦った。武器を持ってない相手なら車から降りて、手を挙げて笑顔を振りまけば敵ではないと悟るだろうが。刀を持った相手、それも六人の侍だ。降りた瞬間に斬りかかって来るとも限らない。その侍達が二メーター前までやって来ている。そこから様子をみているのだろうか遠巻きに車を囲んだ。

「しまった! 今日は窓の鉄板を外して来た。まさか侍が現れるとは」

これが現代の兵隊なら手を挙げて投降するところだが、武器は刀だけのようだ。ハンマーでもない限りガラスは割れない筈だ。

 だが車から出なければ安全だと雄一は思っていたが、やはり気持ちの良いものじゃない。助手席に置いてあるライフル銃に手を伸ばした。もちろん使うつもりはないが、万が一の為に威嚇発砲もありうる。だが敵だと思われたくない。

それから三分ほどして、彼らは車の中に人間がいる事に気づいた。雄一は少しウインドウガラスを下げてみた。一番偉い侍だろうか、その侍と目があった。ギョッとしている。雄一はニコリと笑った。相手は驚いたのか数歩下がって刀を抜いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る