第13話 ついにこの時代の人間を見た

何度も走っていれば土が固くなり道も楽になるだろうが、出来れば鉄工所にあるブルドーザーか大型トラックを使って道を馴らせば、何倍ものスピードが出せるようになるだろう。そんな事を考えながら進んだ。幸いに平坦な林だから木さえ避ければ、なんとか走れる。これが普通の乗用車だったらと思うとゾッとする。タイヤが埋まり枯葉を巻き込んでスリップするだろう。このランドクルーザーは車高を高くしてある。普通の車よりも五十センチ位高い。いま思うと、この日の為に用意したのではないかと思った。もう七キロくらい走っただろうか、やっと林を抜けた。


なんと田んぼが見えて来た。その先に煙が昇っているのが見える。

ついでにトラクターが見えてくれれば良いのだが、そう信じたい気持ちだった。だが煙が登っているという事は人が居る証拠だ。ここが平成の二十一世紀でなければ四百数十年前の人間と二十一世紀の人間が遭遇する訳だ。

雄一は怖さより興奮して来た。まさに未知との遭遇過去版ということになる。

映画では宇宙人との遭遇だったが、自分がそこ車に乗って行ったら宇宙人みたいに思われるかな。茅葺の農家が十数件ばかり見えて来た。雄一は心臓が高ぶって来た。

まず車を見て不気味なエンジンの音を聞いて驚くだろう。次に服装を見てまた驚くだろうか。それとも一斉に刀や槍、斧で立向かってくる事も考えられる。

その時は車を強引に飛ばして逃げるしかないだろう。


 時間は昼を少し過ぎた頃だ。農家まであと百メートルと近づいた。ここから見る限り人影は見えない。昼飯を食べるに家の中に入っているのかも知れない。五十メートルまで近づいてエンジンを止めた。

降りて行こうかと思ったが、やはり逃げる準備だけはして置かなくてはならない。こうなったら相手が出て来るまで、ここで待つつもりだ。

時間にして三十分、茅葺屋根の家から二人の子供が出て来た。やはり洋服ではなく着物を着ているようだ。もはや覚悟していたから戦国時代であることは間違いがない。ふと二人の子供がこちらの車に気づいたようだ。

怪訝な顔をしている。見た事もない大きな鉄の塊があったからだ。

二人の子供は驚いたのか、また茅葺屋根の家の中に走って戻って行く。



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