第10話 車に鉄板を貼り付ける

 するとこれは信長の怨念の霊が、天地異変を起こしたと云うのか? 

歴史によると明智光秀が本能寺で謀反を起こして間もなくの頃だ。

 昨日は映画のロケかと思ったのは本当の侍であり、確か次の天下は徳川か明智かと言っていた。そうするとその謎も解けてくる。

 では今は一五八二年なのか? 正確には四百三十八年も過去の世界へ来た事になる。先日亡くなった父はどうなるのだ? 考えるとやはり信じられない事ばかりだ。

タイムスリップ事態、信じられないのだから全ての時間が歪んでしまったのか? 雄一は夢中で更に調べた。


ここは武蔵野の国になるのか? 調べてみれば武蔵野は広い埼玉から東京と神奈川東部一帯を武蔵野と呼ぶ。工学博士号を取った自分が歴史の勉強とは、思わず笑い出しそうになった。

少しはパニック状態から抜け出したのだろうか。こんな時に精神科医に行き薬を貰って来たいくらいだった。

 そうだ? 病気になったらどうするのだ。この時代に病気したら命取りになる。風邪だって引いて居られないじゃないか。

万が一、医者がいたとしても手術が出来るわけでもないし。せいぜい漢方薬か薬草で治すしかないだろう。そんな事を考えていたら寒気がしてくる。何処の国でもいいが安全が欲しい。たぶん今は戦国時代。国の獲り合いで人の命なんか犬猫の命と大した変わりがないだろう。とんでもない事になった。どうせタイムスリップするなら、治安と生活の安定した未来に行って欲しかったと雄一は運命を呪った。


 翌日、製作所の機械を使って武器を作ることにした。自分の命を守る為には武器が必要だ。先日まで研究のことしか頭になかったのに武器を作る事になるとは……笑いに笑えなかった。武器を作るとしたらボーガンなんか役に絶ちそうだ。いや自分は戦国時代にボーガンで闘うと言うのか、いや違う。

幸い父が生前、趣味で猪狩りや野鳥狩りに使っていたライフルが二丁と散弾銃一丁ある。何度か父と狩に出かけて野鳥狩りに行った事があるが、その猟銃の手入れをした。父が銃の保管場所にしてある小さな倉庫を調べたら、木箱の中に油紙に包まれた銃弾が大量に保管されていた、何百発あるだろうか、これ程の量を保管していたら違反じゃないかと思う程だ。違反だろが何だろうが、現代ではないし取り締まる警察もない、その点では亡き父に感謝したい。

戦国時代ともなれば物騒だ。弾は何発あっても足りない。その弾を分解して更に新しい弾を作る方法を考え出した。

そこは工学博士、科学衛星を作るのに比べたら小学生の問題を解くようなものだった。


次に愛車ランドクルーザーの回りを強固な鉄板を貼り付けた。雪国で見かける八の字型の鉄板だ。道路の雪かきする時に使う。それを車に取り付けた。窓にも取り外しの効く鉄板を取りつける。ヤリで突かれても守れるように。まるで小型の装甲車のようだが身を守るには、これが一番。これなら林のでも掻き分けながら走れる。本当は大型トラックの方が馬力はあるのだが、そんな大きなトラックが走れる広い道がないし小回りが利かない。


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