第3話 落雷で停電 電子機器すべてダウン

 案の定、停電してパソコンと蛍光灯の明かりが消え、事務所の灯りも一斉に消えていた。雄一は被害がないかと事務所の外に出てみたが、敷地内は何事もなかったように青空から太陽の光が降り注いでいるのに製作所を囲む塀の辺りは濃い霧に覆われている。

「なんだ、この霧は? 薄気味悪いなぁ。しかし先程までなかったのに……」

雄一は濃い霧の中に入って行ったが視界は二メートル先が全く見えない。まったく薄気味が悪い霧だ。雄一は外に出るのを諦めて、非常用の自家発電のスイッチを入れた。

ほどなくモーター音が響いて電気は回復した。同時に貸倉庫の電気も此処で調整しているので発電しているはずだ。工場では停電などに備え数台の強力な発電機を持っている。停電だからと言って製作所や鉄工所の作業は止められない為に大型の発電機が必要なのだ。発電機や工業機械を作動させる為に使うガソリンや重油は地下タンクを備えてあるが燃料の要らないソーラー発電も利用している。せっかくソーラーパネルがあるのだから利用しない手はないと父に進言したものだ。


工業用の物でかなり大きい。制作所で組み立てたソーラーパネルを製作所と鉄工所の屋根いっぱいに貼り付け、工学博士ならではの技術を加えて強力な発電力がある。一般家庭の二十軒分にも相当する発電装置だ。これには生前の父も喜んでくれて、唯一の親孝行だったかも知れない。鉄工所と製作所で使う電源は万が一に停電になっても、ソーラー発電と自家発電装置で使う電気を賄えるが自慢だ。雄一はテレビを付けた。だが画面はザーとなって何も映らない。さてはアンテナに雷が落ちたか? 

本当に薄気味が悪い霧が漂う。それにやたらと静か過ぎる。遠くに見える筈の競馬場の明かりもまったく見えない。


仕方がなく雄一は霧が晴れるまで待つことにした。退屈しのぎに近くのゴルフ練習場で働いている友人に電話を掛けてみたが、だが無音だった発信音もしない。それならと携帯電話を取り出して電話をした。しかしこれもまた無音だ。勤め先へ電話したが繋がらない。いつも通じる筈なのに(圏外)と携帯電話の画面に表示された。やはり異常気象で電波もおかしくなったのかと思った。電気が流れて居るのにテレビの画像も音も出ない。雄一は諦めてパソコンをネットに繋ごうとした。だがこれもまた繋がらなかった。


つづく

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