第2話  天地異変の予感

 宇宙工学研究には興味があったし、将来は科学衛星を宇宙に送り出すことが夢だ。大学を卒業して博士号の学位を取得して六年、研究所では三十二歳にして主任を務めるまでになっていた。その夢が適った時こそスッパリと諦めて親父の後を継ぐことにしていたが、親父は嘆くだろうが借金まで重ねて経営したのでは、草葉の陰で父は、もっと嘆くだろうと思ったからだ。親孝行と言ったら自分が勤めている研究所が独自に開発した新型ソーラーパネルを、父の製作所に依頼し売り上げに貢献した事くらいだ。雄一が勤める研究所からはソーラーパネルの製造を頼まれていた。ソーラーパネルの部品や関係する材料が倉庫には山積にされている。倉庫といっても学校の体育館ほどの大きな建物だ。大型トレーラーが鋼材を積んでくるので、倉庫の中央が道路のようになっている。

そのパネルの見本を自慢の愛車ランドクルーザーにキャリアを屋根に取り付けパネルを乗せて、明日研究所に届ける事になっていた。この車は本来七人乗りだが荷物を載せるスペースを作るため座席を六人乗りへと変更してある。

この車は車高が高く、悪路でも平気で走れる。ちょっとした小川で渡れる。海外でも人気の車種である。

その他にも高級車レクサスを持っている。これは父と兼用で使っていたが、今では遺品のようなものだ。

 鉄工所に残された鋼材やアルミ、ソーラーパネル版、工業機械、鉄骨、化学薬品など鉄工所の資産を整理していた。更に製作所の方には大型蓄電池や、製作所に必要な機材が山ほどある。それを業社に売り渡し為パソコンに製品の内訳など打ち込んでいた。


 その時だった! もの凄い轟音と共に稲妻が走ったかと思うと、強烈な光が上空から敷地周辺を照らした。とう言うより襲ったと言った方が合っているかも知れない。目を開けて居られない程の光が覆った。まるで戦争映画で見る照明弾のようだった。光が強すぎて一面が真っ白になり、そのせいか一瞬気を失ったようだ。

気がついたら顔がキーボードの上に被さっていた。それは何分かの時間だと思うのだが意識が飛んだ事は確かだ。我に返って見ると停電していた。ついに天地異変が起きたと思った。

ヤバイ! 雷が落ちたかな? と雄一は思わず叫んだ。


つづく

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