第2話 家族は他人のはじまり

奥様、そう呼ぶのに違和感がある程の若々しい派手美人。


「弥生、あんたの義母と娘名前何だっけ?」


「はい、義母がシャロットで義妹が和子です。」


奥様は呆れたように、


「シャロットって顔じゃないっしょ?あのエロガッパ。

娘はシワシワネーム…。

あんたのパパが再婚してから?どうだったんだっけ?」


「はい…パパは…。」


△ △ △

パパは外面が良かった。


職場や知り合いに、

娘が泣いて…娘がワガママで…娘が待ってるので…娘が熱を…。

残業から、転勤から、マンションのドブ掃除までなんでも断ってた。

私は知らないおじさんに会うと必ず、


「パパを困らせちゃいけないよ?」

「ワガママばっかり言っちゃだめだよ?」


と、言われた。

私は意味が分からなかったが、のちに判明した。

全部パパが私が…って吹聴してた事を。


ある日、学校帰りにパパの同僚に遭遇した。

私は数日前に42℃の熱出して今、生死を彷徨ってるって事になってるらしくパパは休暇中って驚かれた。

…会社から追求されて休んでパチンコ三昧だったって発覚した。



…パパは左遷になった。

転勤先は地方で、そこで出会った女性とパパは再婚する。

ママを忘れられる様で不快ではあったけど新しい義母はハーフ美人!義妹は一個下のクォーター!



…最悪な2人だった。


私はふたりに召使いの様に扱われた。

家事は全部私。

気に入らないと裸足で家から追い出されたり、食事を抜かれたり、陰湿なイジメを受けた。


私はパパに訴える。

義母と義妹は泣いて否定する。

怒ってる私と、泣いてるふたり、パパは躊躇無く義母達の味方をした。

私がパパに相談する以上に義母や義妹はパパに吹き込んでたんだね。


「弥生、たかが家事ぐらいでガタガタ言うな。

パパそうゆうの聞きたく無い!」


パパの後ろでふたりはビックリするほど悪い顔で笑ってた。

何度も私は訴えた、義母の横暴、義妹の残酷さ、私の私物はどんどん捨てられる。服も、本も、学校の道具さえも。

何より辛いのがママの形見もどんどん捨てられてて。

それを訴えても、



「もう、忘れなきゃ…その為にきっと心を鬼にして弥生の為にやってくれたんだよ?」


ママを忘れる?冗談じゃない!

その頃から、私は何も感じなくなった。

死んだ魚の目に無表情な女の子になった。

もう、何でも良いし、どうでも良い。

早くママの居るあの世に行きたかった。


パパは義母たちに私が反抗期で、金遣いは荒く、パパの悪口を言い、義母と義妹に暴力を振るうって言う荒唐無稽な讒言を繰り返し繰り返し吹き込まれ信じてしまっていた。

パパ義母義妹は仲良し家族、私は不良娘。


中学卒業後、私は1番近い公立高校へ進学した。

高校進学出来ない可能性もあったから嬉しかった。


つまらない日々。でも将来を考えれば高校位は出ておかなきゃ…。

たったひとりの友人以外とは接点を持たず生きる日々。

そして、高校1年生の3月、私はもうすぐ16歳になる。


義母が笑いながら言った、


「あんたさ50の変態キモデブ親父と48の女の子殴るのが趣味のくそ野郎どっちが良い?」


…意味わかんない。


「現役JKにした方がウリで稼げるでしょ?

あんたの初めての相手もうすぐ決まるよー♪」


「きんもー☆」


義母は上機嫌に言うと、義妹が歓声を上げる。

私は目の前が真っ暗になった。そんな理由で、私は高校進学させて貰ったんだ。ちょっと感謝さえしてた自分のおめでたさに震えた。



私は16歳になった。

その日家に帰ると派手なお姉さんが居た。

派手なお姉さんは札束(!)を無造作に義母に渡すと、

義母は契約書(?)の様なものに嬉々としてサインしていた。

お姉さんは、


「弥生?

じゃあ、着いてきて?」


私は意味がわからない。

義母がそっと耳打ちしながら、乱暴に私の乳房を捻りあげる、痛い!


「…行く家には親父と息子が居る。

おっぱいだけは立派なんだからうまくヤッて?金引っ張ってこい。」


??

さっぱり意味がわからない。

着いて行くと派手なお姉さんは私の方を振り返り言った、


「あんた家族に売られたんだよ?」



私…売られたんだ…。


これから誰ともわからない人と…その、えっちぃ事…


金持ちのすけべなおっさんか親の金で豪遊するボンボンに良い様におもちゃにされて…


暗い気持ちで着いて行く、車に乗せられ移動する。


…でも、家に居るより良いのかも知れない。

パパや義母や義妹にいじめられて暮らすより、汚いおじさんのおもちゃの方が幸せかも知れない…。

少しでもお金貯めたら逃げ出して泊まり込みの仲居さんとかして…

たっぷり50代までの人生シミュレーションをこなした頃、目的地に着いた。


そこは豪華で広いお屋敷!

表札には成瀬ナルセと書いてある。


「あーしさ、腹立ってるんだよね?」


なんで?


「表情も目付きも、身なりも?私物全然無いし?

あんたのママさ、あんたが世界一大事だって。今のあんた見たら…。」


そう言いながらお姉さんは泣いていた。

私はやっと気がついた、この人ママの親友のお姉さん!

お姉さんは泣いて私を抱きしめた!


「…弥生、探したよ。

あのくっそダメくず男があんたをどう扱ったか知ってる。

あとは私に任せて!風呂入ってきな!」


「…はい。」


豪邸のお風呂は控えめに言って最高だった…。

私は着替えを出そうとすると…無い?!


用意されてるのは…メイド服…。

フリッフリで胸元が強調されてるけど露出は全く無い綺麗で可愛いメイド服…。


(コレを着なさいって事かな?)


その服は私専用?ってほどピッタリで頭のブリムまで付けて鏡でチェック。


うわぁ、可愛い…。

私みたいな無表情の死んだ目しててもこんなに可愛い…。

風呂場から出てメイド服を着た私を見て奥様は上機嫌で説明してくれる。


「あんた契約金1000万で売られたの。

で、ここで住み込みメイドとして働いて。

発生する僅かな給料はあの義母が受け取るって契約。」


私は頷く、


「契約書には、あんたの生活にかかるお金はうちが出すけど、私服、勉強道具、スマホ諸々は弥生が自腹って書いてあるのね?

だから給料から一定額はあんたの手元残するようにって明記してある。

欲張りなあんたの義母全部私の口座に!って言ってたけど。」


ククって笑いながら言う奥様。


「ふふ。

まあ、まずこの家に慣れて?話はそっからっしょ?」


私は奥様に部屋へ通される。

テーブルに奥様の家族が座ってる。


事前に奥様から聞いてる。


奥様の夫、ご主人。

夫婦の長男 そうくん、私と同じ春に高2。坊ちゃんだね。

夫婦の長女 奈緒なおちゃん、春に小4。お嬢様

それに奥様の4人家族。


私は精一杯明るく挨拶した。

ご主人は無表情にこっちも見ないで頷いた。

…なんか失敗した?!


「あぁ、ダーリンは人見知りだからこれでも歓迎してるー。」


ご主人は真っ赤になって頷いた。


創くん…昔一緒に遊んだ男の子…大人になったな。


「…よろしく…。」


目を合わせてくれない。私の事忘れちゃったかな?


「初恋の弥生が家に来るってこいつめっちゃ意識して部屋掃除してたからね?」


えっ?


奈緒ちゃん…初めて会う…興味深々でこっち見てる?


「私!お姉さんが欲しかったんですわー!」


「奈緒はお嬢様に憧れてるんだよ、厨二病みたいなもんw

…じゃ、弥生座って?ご飯食べよ?」


私も一緒で良いのかな?メイドってそうゆうの…。


「他は知らない!でもうちは家族でご飯食べるって決まり。

明日からご飯や掃除洗濯手伝って貰う。

あたしが家に居ない時は弥生がメインでやって貰う。

それが仕事、良い?」


私は頷く。

緊張で何を話したかまったく覚えていない。

奥様と奈緒ちゃんが質問してくるのに必死で受け答えしてたんだ。



21:00

環境の変化についていけず、頂いた自室でぼんやりしてた。

こんこん、


ドアを開けると坊ちゃんだった。


「坊ちゃん…?御用でしょうか?」


「…弥生さん、23:00に俺の部屋に来て…。」


それだけ言い残し、坊ちゃんは真っ赤になりながら逃げるように去って行った。


…やっぱりか…

そんなに美味い話は無い…よね…。

私はお金で買われた…相手はこの家の坊ちゃんで。

私はちょうど良いおもちゃ…だよね。。


あの地獄から抜け出せるなら身体くらい…。


時間が来て、私は意を決して坊ちゃんの部屋へ向かう。

一応身だしなみを整えて、薄着で。


深呼吸をする。

坊ちゃんは、創くんは…私の初恋だった。

ママが奥様と会う時、いつも創くんも来てた。

私たちは仲良しで…会うたび創くんは私を可愛い!綺麗!って褒めてくれて…。

小3位には会うたびプロポーズされてて、


「まだ早いよ?」


って私返事してた。早すぎるって、断ってはいない訳で…。


…ある意味初恋の男の子が初体験なら…私幸せなのかも?

…いや、これも仕事なんだろう…ママ…。


コンコン、


ノックすると真っ赤になった坊ちゃんが出迎える。

坊ちゃんは私をベッドへ案内する…。


ふたりでベッドに腰掛ける。

せめて…


「坊ちゃん…私初めてで…せめて優しくして…ください。

あと、電気は消して…ほしいです…。」


「え。電気は点けたままでヤルよ?」


(そんな…まじまじ見られちゃうんだ…!)


私は恥ずかしくって、俯く。

坊ちゃんは乱暴に私の手を取ると…


コントローラーを無理やり握らせた。


「スプラトゥース!初めてなんだ?

じゃ、ブラシが良いかな?弥生さんは塗りまくってて?

いっぱい塗ったチームの勝ち!

慣れたら攻めに転じて?」


「へ?」


…数年ぶりのゲームめっちゃおもしろい…震えた。

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