第21話 クソメガネ、歓迎される。
ハールトセン伯爵家の騎士たちがルイーセたちを助けに来て、なんやかんやで俺に跪いたりした後、俺は例の3人娘たちと共に馬車に乗って街の方に向かっていた。
3人の娘たちは、女騎士たちから衣類の着用を何度も勧められるが、かたくなに全裸のまま俺のそばに侍ってきていたので、俺が一言言うことでようやく服を着てくれた。
で、今の状況はと言えば。
俺の左隣に伯爵令嬢のルイーセ。右隣に女子高生みたいな冒険者のディアンタがぴったりと俺に身体を寄せて、お飲み物やらお食事やらを変わりばんこに俺の口に運んでいる。
で、商人の娘の小学生みたいな幼女のクラシーナといえば、俺の太ももの上に対面座位で両手両足で抱き着いている。
……入れてないよ?
馬車の中には俺たち4人だけで、それを取り巻くように騎乗した騎士たちが護衛についている。
まあ、俺に言わせれば護衛というか、監視されている感じなのだが。
そんな状況なもんで、さっきからしきりに自分の凹と俺の凸をドッキングさせようとしているクラシーナの動きをどうにか躱し続けている。
……この娘たち、アプローチがすごすぎるのよ。
ルイーセなんかは騎士たちを跪かせたその場で「おまえたちも我の契りを見よ!」なんて言って俺を押し倒してくるし、ディアンタはなんか補助にでも回ろうとしたのか俺のズボンをおろそうとするし。
「そういうことは、こんな汚れた場所でするものではない」
という俺の一言で何とか回避した感じだ。
まあ、風呂に入っていない山賊たちの巣窟で、しかも山賊たちの死体だらけのところでそんな気にはなれませんわな。
というようなくだりを経て、馬車に乗ってからのあれこれ。
とりあえず、お互い名前も名乗ってないので自己紹介を行った。
「クウソ、メイガーニー(神のような尊いあなた様)。わたくしのことはルイーセと呼んでくださいまし! あのような目に遭ったからには、もはや貴族の娘として生きてはいけませぬ。どうか、あなた様の端女の一人としてでもおそばに置いて下さいませ。家の事は何とか致します故。」
「おれはディアンタという。冒険者をしていて、ハールトセン伯爵令嬢の護衛をしていたが、山賊連中にいいようにされてしまった。仲間もみんな殺されてしまった。あなた様に助けていただいて感謝する。これから、おれはあなた様の所有物となりたい。手となり足となり、身体もよければ使ってもらいたい。クウソ、メイガーニー(神のような尊いあなた様)。」
「……クラシーナ。商人の娘。商隊は皆殺された。あたし、あなた様の物。クウソ、メイガーニー(神のような尊いあなた様)。」
と、いうことらしい。
ルイーセはディアンタたち冒険者を護衛に狩りに出ている時に山賊たちに襲われた。
クラシーナは家族や使用人と商隊を組んで行商している途中を襲われた。
どちらも、他の随行員は皆殺し。
どうにか難を逃れたルイーセの護衛の騎士が命からがら救援を呼びに行ったのだとか。
で、他にもいろいろ気になっていることを聞いてみた。
何故に皆が俺のことをクソメガネと呼ぶのか気になっていたが、どうやらこちらの世界では『メガネ(メイガーニー)』という言葉は、『神のような』という意味があり、尊いものに向けたり、天に祈るときに使われる言葉なのだから。
地球で言うと、欧米の『オーマイGOD!』って感じなのかな?
つまり、こっちの世界で『クウソ、メイガーニー』は、(神のような尊いあなた様)であり、『クエッ・ツォ・メイガーニエー』は(栄光ある神に感謝を)ということらしい。
その話を聞く最中、うっかりこっちの世界ではなんて聞き方をしてしまったもんだから、俺は外の世界から現れた、この世を救う救世の神なのだと盛大な勘違いをされてしまい、さらに強く従属され心酔され隷属されてしまった。
俺も自己紹介はしたんだよ?
ちゃんと名前もあるから、名前で呼んでくれっても言ったんだ。
でも、そんな恐れ多き事できませぬなどと言われて『あなた様』という呼び名になってしまったのだ。
そんな感じで、馬車は無事伯爵領の街に着き、街の中でも一番大きくて豪華な屋敷? 城? の前に寄せて停まった。
馬車の扉があけられると、屋敷の前にはこの建物の主と思われる初老の偉丈夫が立っていた。たぶん、あれが伯爵様であり、ルイーセのお父様なのだろう。
そして、俺に密着していたルイーセは、俺より先に馬車を降り、その出口の前で四つん這いになった。
ん? これって、踏み台にしろってこと?
あれ? これって?
俺、殺されないかな?
そんなことを思った時。
その偉丈夫が地面にひれ伏してこう言った。
「おお。クウソ、メイガーニー(神のような尊いあなた様)。我が領地にその御身体をお運びいただき誠に感謝の極み。どうか、この領の物、者、ものすべてはあなた様の御心のままにお使いいただければ光栄です。クエッ・ツォ・メイガーニエー(栄光ある神に感謝を)」
なんか、めちゃくちゃ歓迎された。
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