第12話 クソメガネ、アジトに潜入する。

「よし、そろそろ頃合いかな」


 メガネレベルが上がり、おそらくは俺の身体能力もそれなりに上がったのだろう。


 もう、腕や足を犠牲にしなくても狼を倒せるようには成長した。


 狼一匹に腕一本なんて、普通ならリスクとリターンが釣り合わないからな。


 エビで鯛を釣るみたいに、足で狼を釣る生活にもおさらばだ。



 狼を倒せるのだ。


 山賊も何とかなるだろう。



 意を決して、山賊のアジトの壊滅に向かおうとして――



「アジトってどこにあるんだよ?」


 そうつぶやいたその時、メガネの視界にこの辺のマップが表示される。



「マップ来たー!」


 ただし、そのマップは黒塗り? が大部分であり、明示されているのはほんのわずか。


 これは、自分が移動したところのみオートマッピングされているって感じだな。


 なら、結局アジトは自分の足で見つけなくてはならない。



 俺は取り合えず、最初に山賊を倒した街道の場所に戻ってみた。


 すると、山賊の死体は仲間たちが運んだのか、すでにそこにはない。


 それに、少し離れたところにあった俺が倒した狼は、刃物で切り裂かれ、毛皮がはぎとられたり、もも等の可食可能と思われる部位も切り取られ、残っているのは頭部と内臓、骨格くらいの物だった。


 そうか、魔物の素材は食料や金になるのか。


 さっきまで倒した森の中の狼たちを放置したのはもったいなかったのかなと思い直すが、どちらにせよ解体の技術も売れる部位もわからないのだから案じても意味がないと気を取り直す。


 で、解体された狼からは、肉を運んだ時のものであろう、血のしずくがぽたぽたと街道から奥の森に続いている。


 おそらく、この血の跡をたどればアジトにたどり着けるだろう。


 俺はメガネの能力を使い、気配を消してその血の跡を追った。



 ◇ ◇ ◇ ◇


 森の中の獣道を進んでいくと、松明の明かりのともった一角にたどり着く。


 その明かりは洞窟の中から漏れており、洞窟周囲には簡素で粗野な掘っ立て小屋も建てられていて、そこにも明かりが見える。


 そして、なにやら騒がしい声も聞こえてきて、耳をそばだてるとどうやら宴会でもしているようだ。

 


「いやいや! ヴァールの野郎には感謝だぜ! なんたって命がけで肉を確保してくれたんだからな!」


「ああ、酒のつまみがないってんで不機嫌だったお頭もすっかりご機嫌だしな。いまごろはまた、あの攫った女どもに乗っかっているだろうさ」


「お頭たちばっかりいい思いしてずるいねえ。お頭が飽きて女がオレたちに回ってくるころにはすっかり弱って死にかけてやがるからな。アソコもゆるくていただけねえ」


「お前はそれでも首絞めて何発もやってたじゃねえか?」


「まあな! 首絞めりゃアソコの締まりも何とでもなるぜ! 生きてるうちはな!」 

 


 なんとも下品な騒ぎ声が聞こえてくる。


 この時点で想像できることは、俺が倒した山賊はどうやら同じく俺が倒した狼と戦って相討ちになったと思われているらしい。


 いや、狼は分かる。ナイフで倒されていたんだから。


 でも、あの山賊もナイフで胸を刺されて死んでいたのに狼に殺されたって考えるのは短絡的にすぎないか?


 多分だが、この山賊たちはあまり頭がよろしくないんだろう。



 そのうちの一人をメガネで『鑑定』してみる。



名前 :ドンゲン

年齢 :33

性別 :男

職業 :山賊(悪)

レベル:3

HP  :14/15

MP :1/1


体力 :9

力  :9

知恵 :1

敏捷 :5

器用さ:5

魅力 :1

運  :2

カルマ:マイナス16(悪)

状態 :酩酊(中)


・魔物討伐数:1

・殺人数  :4

・強姦数  :6

・強盗数  :2



 おお、結構な悪党だな。


 俺が倒したやつよりレベルが1高い。


 粗野な分、体力や力はそこそこ高い感じだが、案の定おつむは弱いらしい。



 これなら、正面から相手どらなければ何とかなりそうだ。


 ちなみに、俺が余裕で倒せるようになった狼さんはどうだったかというと、


種族 :灰色狼

年齢 :5

性別 :雄

レベル:5

HP  :27/27

MP :6/6


体力 :17

力  :18

知恵 :3

敏捷 :26

器用さ:14

魅力 :5

運  :8

カルマ:0(中立)

状態 :威嚇



 こんな感じだった。


 なんと、あの山賊は狼さんより頭が悪いらしい。


 それに、この世界では魔物よりも山賊の方が悪認定されているようだ。


 だからどうだと言われてもよくわからないのだが。


 

 で、自分のステータスは相変わらず自分で見ることが出来ない。


 普通、他人のが見える前に自分のことが見えるもんなんじゃないの?


 自分のステさえわかれば戦闘するのに敵と比較できて楽なのに。


 まあ、このステの狼を楽に倒せるんだ。


 この山賊くらい楽勝だろう。




 だが、楽観的に判断して突っ込んでいくわけにもいかない。


 どうやら、中には攫われた女性がいるようだ。


 不用意に突撃していったら人質に取られたりして面倒になるかもしれない。


 まあ、見ず知らずの女性を人質にされても俺の心に響くのかはわからんが。


 でも、俺も日本人だ。


 おそらく、実際に人質を盾にされたなら躊躇してしまうんだろうな。



 と、いうわけで。


 山賊のアジトの攻略、慎重に始めますか!

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