第7話 クソメガネ、彼女も転移する。
「……ん? ここは?」
梓さんと結ばれそうになったその日の夜。
俺は再びあの世界に迷い込んでいた。
「そういうことか!」
俺は突然腑に落ちた。
この世界に来るための条件、それは、
メガネをかけたまま寝ることなんだな!
そして2回目ともなれば、その状況も予想がついてくる。
「そして、恰好は寝た時のそのまんまの姿だと。」
自分の身体を見ると、ちょいと新しいスエット上下に裸足。
そして、メガネを仕舞おうと持っていたメガネケースが手に握られている。
「さて、前回同様だとすれば、何らかのクエストが現れるはずなんだが――」
そう思った瞬間、ウインドウが――
開かなかった。
周囲の状況を確認してみる。
名前 :ヴァール
年齢 :28
性別 :男
職業 :山賊(悪)
レベル:2
HP :0/11
MP :2/2
体力 :?
力 :?
知恵 :?
敏捷 :?
器用さ:?
魅力 :?
運 :?
カルマ:
状態 :死亡(復活不可)
・魔物討伐数:0
・殺人数 :2
・強姦数 :3
あの時の山賊の死体はそのままだ。
見た感じ、あのときからほとんど時間は経過していない感じがする。
そして、
「何で……」
名前 :
年齢 :19
性別 :女
職業 :会社員
レベル:1
HP :4/4
MP :0/0
体力 :?
力 :?
知恵 :?
敏捷 :?
器用さ:?
魅力 :?
運 :?
カルマ:|2(善)
状態 :近眼、睡眠(深)、恋愛(篠村基夫)
・恋人 :1(篠村基夫)
・経験人数 :0
「なんで梓さんまで!」
そういえば。
さっき、梓さんもメガネをかけたまま寝落ちしていた。
「この部屋でメガネをかけたまま眠ると転移するのか? それとも……」
梓のステータスの欄には前回とは違う点があった。
『恋人』の欄だ。
前回は『0』になっていたのだが、今回ははっきりと『1』になり、俺の名前が書かれている。
これはつまり、告白も何もしてはいないが、お互いに通じ合ったという事なのだろう。
聞いたことがある。
ある程度大人になれば、告った告られたなんぞの儀式的なものをすっ飛ばして恋人同士になることもあると。
「オレと恋人同士になったから巻き込まれたのかもしれないな……」
あとは、ヴァールとかいう山賊のステータスにも違うところがあった。
『死亡』のところはまあいい。
『レベル』のところだ。
前回は『?』で表示されていたのが、『2』と明確に数字が記されている。
これはたぶん、前回『メガネレベル』が上がったことによるものだろう。
こうやって、レベルが上がるごとに見える範囲が広がっていくんだなと不思議な納得感を得ながらふと手に握りしめていたメガネケースを眺めると――
名前 :『メガネケース』
機能 :半径10m以内で無機物を任意で収納、放出できる。ただし、所有権が自分にあるか、他者に無いものに限る。
収納量 :無限
時間経過:なし
「おいおい……」
なんだこのぶっ壊れ性能のチートアイテムは!
だってこれ、単なるメガネケースだぜ?
あ、そうか。
メガネに特殊な機能があるんだったら、その入れ物たるケースにも特別な機能があるってことだな。
いや、なんだそれ。
ツッコミどころは満載であるが、何処にどうツッコめばいいのかわからない。
とりあえず、この状況を何とかしなければ。
最優先は、梓さんと共に日本に帰ることだが……
そう考えた時、メガネの視界に新たなウインドウが現れた!
『クエスト発生:襲ってくる魔物から彼女を守れ!』
おいおい! またまた物騒な内容だな!
◇ ◇ ◇ ◇
新たなクエストが発生した。
この内容から行くと、まもなく魔物が襲ってくるのだろう。
しかし。
俺はあいも変わらず裸足であって、周りは砂利道だ。
とてもじゃないが、魔物を倒すなんて立ち回りの動きは出来ない。
だが、前回の状況から鑑みるに、このクエストをクリアしないと日本には戻れないだろう。
さあどうする?
オレと梓さんの距離は10mくらいは離れている。
靴を履いてさえいれば、今すぐ近くまで駆け寄れるのだが。
そこでふと、胸から血を流して死んでいる山賊の死体に目が行った。
「収納」
死体の靴を収納してみた。
すると、なんのエフェクトもなく山賊の履いていた靴がなくなり、俺の視界に新たな矢印が出現する。
その矢印に意識を集中すると、
◎収納物:
・山賊の靴(劣悪):1組
収納されているものがリストで出てくるようだ。
そして、そのまま取りだして装備できるか試すと、見事俺の足に劣悪な山賊の靴が装備された。
俺はそのまま、山賊の死体からナイフや毛皮のベストといった戦いに必要になりそうなものを追いはぎして装備していく。ついでに金目のものも。
ちなみに、山賊から頂いた毛皮のベストや靴はとても臭くて鼻が曲がりそうだ。
だが、背に腹は代えられん。臭いは我慢するしかないな。
靴を履いたことでようやく思う様に歩けるようになり、直ぐに梓さんのそばに駆け付ける!
「くさっ!」
山賊装備の臭いで梓さんは目覚めた!
臭いと言われた俺は微妙に心のダメージを負った!
アオォォォォォォォオーーーーーーン!
そして、森の中から魔物が鳴き声と共に迫ってきた!
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