第33話 高天原とゲーム大会(前)

『こんの…!プリムラちゃん相手が煽ってくる!!くっそ腹立つぅ!』


『落ち着いてくださいませ、必ず助けますので少々お待ちを。』


『アフロの奴、バリア割れてる。』


・相手さんマナー悪いねぇ

・煽っててヘッショで即死させられてるのクソダサいんですけど…

・プリムラちゃんだけプレイヤースキルぶっ飛んでるなぁ

・およそ2か月でプロレベル、1対1はほぼ負けなしだからなぁ

・歩ちゃんも徐々にうまくなってるぞ、その…プレイ時間はいかれてるんですけど…

・最近これしかやってないまであるぞ


 現在私達が何を焼ているのかというと、3対3の人気FPSゲームで近々配信者を集めた大会を開くという事で、高天原もその枠の一つに入れてもらったという事なのである。


 なんで高天原が?という疑問はあるだろう、それはプリムラちゃんが配信でこのゲームをやりこんでいるというところにあった。


 こういうゲームには強さの指標となるランク、というものがあるのだけど、プリムラちゃんは初めて1か月で最高ランクのオーバーランクに到達、そしてそれから半月で上位20人の中のプレイヤーに与えられるオーバーロードの称号を得ている。


 そして、オーバーロードになった後、ソロでランクをやっていたところ、プロゲーマーのフルパーティー(野良を含まない知り合い同士で組んでいる事)に遭遇、ほとんど一人で返り討ちに合わせるという人外プレイをしたのだ。


 それに対し相手側がチートやらなにやら騒ぎ立て、炎上騒ぎになりかけたのだけど、初回配信から見ているリスナーからしたらただのやっかみでしかなかったし、こちら側からは騒がないで欲しいとプリムラちゃんが言ったため、多少のボヤはあったけれど沈静化したのだ。


 問題は相手側、プロゲーマーでありながら女のVtuberに完全敗北し、プライドを叩き折られた相手とそのリスナーがいまだに騒いでいる。まぁVtuberというものはそう言った証明が難しいものなのだけれど彼女の場合別のやり方でゲームのスキルの高さを証明している。


 世界的に有名なゲーム、全世界でプレイ人口が最も多いと言われる5対5の対人ゲーム、これにおいてもプリムラちゃんは最高位の実力を持っているのだ。


 そういう事でプリムラちゃんの実力の高さがゲーマーとして認められ、大会に呼ばれたのだけど問題はプリムラちゃんに大会に誘える相手がいなかったことが問題になった。


 流石のしるべもこれには頭を悩ませ、下手な人間を組ませるのもなぁと言っていたのだけれど、この大会への招待がプリムラ個人ではなく高天原に対してされていたことで解決することになった。


 そう、私、ガーネットと歩ちゃんがチームとして参加することになった、マナちゃんは…うん…あの子はゲームのスキルがね…、これとは別に今は別件で頑張って貰っているから…。


 いわゆるエンジョイ勢の私、このゲームをやってさえいなかった歩ちゃんが参戦することで舐めてると言われてまたボヤ騒ぎになったのだけど…ま、それはここでは割愛しよう。


 いろいろ騒ぎになってしまったので、運営側は仕方なく予選を開催することに決定しそれに勝ち上がった上位チームに参加権を与えることに決定した。


 それで現在、プリムラちゃんは私らという足手まといを連れながら大会予選を戦っている最中である。


『サーチ入れる…3人手前の家の中にいる、どうする?』


『蘇生完了…そうですわね、あの家は場所的に中々強いのですが窓が開いているのでそこからグレネードを入れてから突入しましょう、ガーネットさんアビリティ、いけます?』


『あー、回復終ってからでいい?アビリティは使える、万全になったら突っ込もう。』


・このゲームの知識をプリムラちゃんに与えたやつらは誰ですか?俺らです

・とんだ化け物を生み出してしまったなぁ

・現在国内でもTOPのプレイヤーだからね、同時にレジェンドオブユニオンの世界的プレイヤーです

・プリムラちゃんにゲームやりこませたらやばいことが分かった、どのゲームもめっちゃうまくなるからリスナーも楽しくてどんどん知識与えちゃうんだよな

・ガーネットが分かりやすくエンジョイ勢でおじさん助かるよ…


 なんだよ下手って言いたいのか、若い奴らには反射の能力では勝てないに決まってんだろ、プリムラちゃんなんて反応速度125ミリ秒とか聞いたぞ、もはやバケモンだろ。


『よし、じゃあせーので投げよう、いくよ…せーのっ!』


『ダメージは入ってない?読まれたかな。』


『予想は出来てますわ、大会に出ているような方ですもの、皆さんは下の扉をお願いします。敵が出てきたら対応を、わたくしは上から行きます。』


・相変わらずキャラコン狂っとる

・スラジャン、壁蹴り、から即座にエイムを合わせて攻撃、リロードのタイミングに合わせて遮蔽にぴったり隠れるのうますぎない?

・しかもリロード確認して突っ込んできた相手にグレネードでけん制、隙が無さすぎる

・当たったの確認したら武器持ち替えて残りのマガジンで全滅させるのヤバすぎる

・扉の外静かだなぁ…

・近接でスナイパーは草


 どうやら外で待機してた私らの出番はなかったらしい、うちの先輩が強すぎる件。


『終わりましたわ、次のエリア縮小までここで待機しましょう、この方たちもグレネードも持っていますので補給できます。』


『うん、多分ここでもう一回戦闘起きそうだから準備はしておこ、ガーネットさん回復アイテムは十分?』


『十分、籠城戦するなら取っておきましょ…あと何チームで確定だっけ?』


『2チームですわね、このまま油断しなければ本戦参加資格は得られそうですわ。』


・プリムラちゃんのワンマンではあるけどチームとしては悪くない

・堅実に死なないプレイングをする歩ちゃん、特攻しがちだけどダメトレでは勝つガーネット、最強のプリムラちゃんという布陣

・なんだかんだでいいチームになってるんだよな

・ガーネットはもう少し人の話を聞いてくだせえ


 うるせぇ、ゲームなんて言うのは楽しんだもん勝ちなのよ、そう思ってたら唐突にダメージを受ける、え?何?


『ガーネットさん!外に敵ですわ!さっきこちらがしていた戦術と同じ事をやってくるかもしれません!』


『人数は分からないけど、扉はあたしが見てるから上はガーネットさんとプリムラでお願い、取り合えず死なないで人数有利を作ろう。』


『了解……来ないなぁ…?回復入れていい?』


『待って…扉、グレネードです!歩さん回避してください!』


 その言葉と共に爆散する扉、どうやらプリムラちゃんは音で気付いたようだけど歩ちゃんは反応が遅れたようで直撃を食らってしまう。


・あっやばい

・なだれ込んできた!

・このタイミングで仕掛けてくるのか

・歩ちゃんがやられた!


 まずい、歩ちゃんがやられたことで人数が不利になった、相手は3人こっちは2人、私が上手いことやらないと。


『あ!間違えてグレネード投げた…あれ?皆当たってる?』


『ナイスですわ!ガーネットさん!これならっ!』


 ミスったと思ったのだがここでグレネードを投げるのは想定外だったのか、相手は直撃を食らったようだ。


『おおっ、なんか知らんけどチャー…あれ?』


 …チャンスだと、思ったんだけど…隙を突かれて集中砲火でやられちゃった…。ダメージは入ってるとはいえ狭い空間での3対1、これは流石に…と思ってたら…。


・ガーネット落ちたけど同時に1人落とした!

・これで2対1か

・うわっ壁ジャンからのの空中射撃?!

・残り1!


 狭い空間でも縦横無尽にキャラクターをうまく操作して敵を落としていく、流石プリムラちゃん高天原1のゲーマーだ。


『これで終わりですわ!…っ!?』


 そこそこ被弾しながらも相手を撃破したと思ったらほぼ同時にプリムラちゃんも倒される…え?なんで?


『これは…他のパーティが来ていましたわね…スナイパーで一撃でしたわ…。』


・ええー!?

・そんな…あとちょっとだったのに…

・これで上位チームは決まりか…惜しかったんだけどなぁ…

・でもみんな頑張った!楽しかったよ!


 そうやら私達がやっている間にほかのチームが漁夫の利を狙っていたようだ、申し訳ない…私が生き残れてれば…。


 そのまま試合は進み最終エリアでこの大会の優秀候補と言われるこのゲームで最も強いと言われるプレイヤー率いるチームが順当にTOPに、私達は惜しくも敗退となる。


 はずだったんだけど…。


『え?わたくしが撃破される2秒前に別チームが落ちてた…?という事は…?』


『ギリギリで予選突破だね…はぁ…よかった。』


『よっしゃー!なんか知らんけど予選突破できてよかった!』


・本当にギリギリだったな…

・っていうか最後にプリムラちゃんが3タテしたチーム騒いでたプロチームじゃん

・え…てことは予選落ちしたのか

・こっちを予選落ちさせようとしたんやろなぁ…それで自分らが予選落ちか…


 まぁ勝ったんならいいや、歩ちゃんは戦犯にならずによかったぁ…と小声で言葉を漏らしている、いや、チームの貢献度だったら間違いなく私より上だからね?


『皆様、応援ありがとうございました。無事予選突破という事になったので大会の本戦に出られることになりましたわ。本戦も頑張りますので今後も応援よろしくお願い致しますわ。』


・すごかったよ!

・本戦も応援してるぞ!

・おめでとう!

・最後のあれヤバかったな…


 無事予選突破したので数日後に開催される本戦も頑張らないとな…。


 ……もう少し本気でこのゲームの練習するか…二人も誘って。


 普段こんな事を思わないであろう私が、珍しくゲームで本気になるだなんて思わなかったけど、まぁ妙な達成感も感じるし、良しとしよう。


 この後、配信が終わった後、私は二人を練習に誘うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る