第31話 希望と黒曜とルームシェア
「え?明日お泊りしたい?」
「うん、明後日会社に行かなきゃいけないんだけど午前7時からだからかなり早く出ないと遅刻しちゃうって思って、申し訳ないんだけど泊めて欲しい。」
年明け後、初出勤でライバーの皆のレッスン日に舞さんは結愛に声をかけていた。
「私は別にいいよ?おねえちゃんは?」
「私も問題ないよ、結愛が喜びそうだし。」
言われてから気付いたけれど、舞さんはウィラクルメンバーの中でも一番会社との距離が遠い、それなのに毎日とは言えなくともかなりの高頻度でレッスンルームに来ているのでそこそこ出費が多いのではないだろうか?
「うん、ありがとうございます。それじゃ明日お世話になります。」
そう言って彼女は自宅に帰っていった。
その姿を着替えてきたのぞみさんが眺めていた。
ん?なにか舞さんに用事でもあったのかな?
「のぞみさん、舞さんに何か用事でもあった?」
「あ、いえ…舞さん結構な距離があるのに毎日のようにいらしているみたいなので、大変ではないかと思いまして…。」
ああ、のぞみさんも同じように考えていたのか。そうだよね…。
「あの、舞さんは今一人暮らしをしているのですわよね?本人の意思次第なのですが、部屋も余っているのでわたくしとルームシェアしてみてはどうかと思うのですが。」
驚いた、のぞみさんは割と人との距離を取るタイプだと思っていたのだけど…いつの間にかここまで仲良くなっていたのか、そういえばレッスンとかの時間も一番多い二人だし気の合う要素があるのかもしれない。
「んー…まぁ本人に聞いてみないと分からないけど…でものぞみさんは結構配信とかするよね?確かに舞さんはあまり配信しないけど同時に配信することもあるか推しれないし、難しいところもあるんじゃないかな?」
「一応なのですが、配信用の防音室とは別にわたくしの寝室にも防音設備はあるのです。最悪そこでやれるようにいたしますので配信に関しては問題ないと思いますわ。」
何故かのぞみさんの寝室にも配信環境はあるようだ、うーん、そこの問題がなければ後は本人次第だし…明日聞けばいいか。
「わかった、とりあえず明日聞いてみよう、本人の意思次第だしね。」
わかりましたわ、と言いながらのぞみさんは帰る準備を始める、帰る場所はほぼ一緒だしね、今日は晩御飯でも一緒しようか。
そう思いながら私達も家路についた。
☆ ☆ ☆
翌日、舞さんはいつものようにほぼ一日中レッスンルームで練習をした後、私の仕事が終わるまで待っていてくれたみたいだ。
「お待たせ、部屋に直接行ってくれててもよかったのに、結愛には伝えてあるんだし。」
「いえ、その…しるべさんとお話もしたいと思いましたし…それほど待ってもないので大丈夫です。」
という事はつまり仕事が終わるまで、9時くらいには舞さんはレッスン室にいたからそれからずっとという事になる…本当に体が丈夫だなぁ…私だったら筋肉痛で動けなくなりそうだ。
「そっか、じゃあ一緒に行こう、そういえば私も話したいことあったしね。」
ついでに昨日のぞみさんとしていた話も先にしておこうと思う。
「舞さんにちょっと聞きたいんだけど、ほとんど毎日ここにきているけど負担になってないかな?一応給料に通勤手当もついているとはいえ、安くはないだろうし。」
「えっと、あたしがやりたくてやっている事なので。」
うん、そう言うと思った、聞き方が悪かったね。
「ああ、実は昨日のぞみさんと話をしたんだけどね?会社に通うのが結構負担になるんだったらのぞみさんとルームシェアをしたらどうか、って話になったんだ。」
「え?のぞみがそんなこと言ってたんですか?」
のぞみさんがそんなことを言うのは意外だったようで少し驚いた様子だった。
「そう、配信に関しても問題なさそうだったから、部屋も余っているからどうかって話なんだ。」
部屋に向かいながら、私達は昨日のぞみさんがしていた話をする。
「そう…ですね、特に今の部屋に思い入れがあるって訳でもないですし、ここに通うには不便であるのには間違いないですしね。」
「のぞみさんは勧めている側だし、後は舞さんの意思次第って機能の段階では言ってたんだけど…どうかな?」
舞さんは少し考えるような表情をすると口を開く。
「取り合えずのぞみと話してみることにします。ちょうど今日しるべさんの家に泊りの予定ですし、話をするのにも丁度いいと思います。」
その通りだ、確かに二人で話し合った方が良いので私の出番はここまでかな。
「それじゃこの話はここでおしまいかな、結愛も待ってるだろうし急いで帰らないとね。」
「ふふ、そうですね、きっとおねえちゃんまだかなぁ、なんて言ってると思います。」
和気藹々とそんな話をしながら私達は家路についたのだった。
☆ ☆ ☆
帰宅後、家に帰るとのぞみさんが夕食を用意してくれていたので、おいしくいただいた。
料理が出来る事は知っていたものの予想以上においしかったので舞さんはかなり驚いていた、何故か結愛はどや顔をしていた。
おそらくルームシェアの話をしようとうちで待っていたのだろう、舞さんもそれを分かっていたようだったので、単刀直入に話をすることにしたようだ。
「あの、のぞみ、私にルームシェアの提案をしてくれたのはありがたいんだけど、いいの?」
「ええ、舞さんなら何も問題ありませんし、寧ろ大変な思いをしているのに手を差し伸べないのはわたくしとしても心苦しいと言いますか。」
「まぁちゃんがのぞみちゃんの部屋に住むならとっても賑やかになっていいねぇ、私は大賛成だよ!」
どうやらルームシェアすることに関してはここにいる人間全員が好意的なようだ、もちろん私も賛成だけどね、サポートが楽になるからむしろこちらも助かる。
「じゃあ、その…よろしくお願いします。引っ越しとかの手続きとかもしなきゃね…。」
「ええ、それと此処にルームシェアするのに必要な書類と、準備するものが記載されていますので、これをお持ちくださいませ。」
「えぇ…?準備良すぎない?ていうかあたしが断る選択肢、考えてなかったの?」
のぞみさんは、必要なければ処分すればいいだけですしと苦笑しながら言う、まぁ準備しておくに越したことはないしね。
「それじゃ、話はまとまったし、何かする?今日は皆配信の予定はないよね?」
結愛が両手をパチンと鳴らすと、さぁこれから遊ぶぞーと言わんばかりに気合を入れていた、なら私は彼女達が楽しむためのサポートをしないとな!
3人はどうやらパーティゲームをすることにしたようなので私は来客用のお菓子と飲み物を用意しながら皆の様子を眺めることにした。
かわいらしい少女たちが、楽しそうにしている姿は目の保養になるなぁと思いながら、私も彼女たちに混ざることにした。
楽しい夜は始まったばかり、その日、日付が変わるまでその部屋は笑い声が絶えることはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます