第29話 私とウィラクルボックス(後)

『うまー!マネちゃんの手料理めっちゃうまー!』


『うるさい、静かに食べられないんですか?』


『いや、声に出さないと視聴者にさー、おいしさが伝わらないじゃーん?だからあえて声に出してる訳、これもうまー!』


・騒がしくてパーティらしくていいね

・妬ましい、おいしい料理作ってくれる女の子がいるのが妬ましい

・主に騒がしいの一人だけだけどな

・いろんな意味でこいつウィラクル最強じゃねえか?

・隠すもの何もないし確かに最強かも

・ここにいるの全員女だけど


 挨拶が終わって皆で何かやる前にとりあえず腹ごしらえに私が作った料理を食べるという事になった。


 せっかくのクリスマスで皆が来るのだから、だいぶ腕を振るったのだがだいぶ好評で嬉しい限り。


『今日は豪華だねぇ、皆いっぱい食べてくれると嬉しいな!』


『これ…本当においしいですわ…マネージャーさんお店出せますわよ…後で参考にさせていただきます。』


・姉の料理でどや顔する妹草

・マネーちゃん以外で料理作れる女子力あるメンバーいる?

・流石にマネーちゃんには劣るけどおそらくプリムラちゃんも出来るはず、想い人にお弁当作ってたって言ってたし

・マナちゃんは専属シェフがいるからあれやけどガーネットと歩ちゃんはどうなんや?


『世の中自分で作るよりもおいしいもので溢れてるのに自分で作る必要性ある?』


『…作れなくはないけど…店屋物で済ませちゃうのは多いかも。』


・ガーネットは絶対料理しないと思った

・歩ちゃんはあまり作らないのか

・自炊してるの実質プリムラちゃんだけ?


 ガーネットはかなりのめんどくさがりだからね…一応言っておくと、想像以上には出来る、けど他人の作ったものの方がおいしく感じるらしく自分自身の為にはめったに作らない。


『ねー、マネちゃんさーやっぱうちに来ない?お金ならあるし、養ってあげるから私のお世話して欲し…』


『あげませんけど、おねえちゃんは誰にもあげませんけど。』


・はっや

・食い気味に言ってて本気さが伺える

・最愛の姉を奪いに来る相手にはたとえ推しだろうと許さない

・マネーちゃんの取り合いが起きてるやん


 何故か私の取り合いが起きているが、私はマナのお世話をするのが好きなのでガーネットの願いは却下だ、そもそもマナ>>>>>越えられない壁>>>>>ガーネットくらいあるので一考の余地すらない。


『ふふ…皆さんにぎやかでいいですわね、こういう騒がしさは新鮮で楽しいですわ。』


『もぐもぐ…んっ、確かにね、何ていうか、修学旅行とかのお泊りみたいな感じ?』


・なんとなくわかる

・普段と違う環境でわいわいするのって結構楽しいよな

・陰キャワイ、騒がしさ中に入るの無理

・その場の空気吸うだけでも楽しいもんよ、空気に酔うって感じにな

・ひたすらにもぐもぐしてないか?歩ちゃん


 最年少と一番低身長の子が、なんというか大人というか落ち着いた雰囲気見せてるのなんなんだろう、最年長がアレすぎるのが問題か、しかし思ったより食べるね、黒曜ちゃん…もうちょっと多めに作った方が良かったかな。


『ん?予定になかったけどお泊りする?部屋は余ってるしお布団敷けば全員泊まれると思うよ?』


『するするー!明日の朝ご飯もおいしいマネちゃんの料理食べたーい!』


『着替え無いけど…まぁ別にいっか、マナとマネさんがいいならいいよ。』


『あら、わたくし、こういうお泊り会というのが憧れでしたの!なんだか楽しみですわ!後わたくし部屋が隣なので着替えならお貸しできますけれど。』


『プリムラの服は絶対無理、サイズが圧倒的に合わない。』


・お泊り配信…だと?

・胸囲の格差社会に泣いた

・いいなー楽しそう

・おい、身長の事かもしれないだろ


 なんか全員お泊りするような話になっているな、私は問題ないし基本皆一人暮らしだからそこのところも大丈夫か、なら私は準備をしておこう。


『よーし、泊りなら今日は時間を気にする必要もないな!じゃあご飯のつづ…き…アレ?私のから揚げは?』


『ガーネットさんのじゃないですけど…から揚げは歩さんがおいしく食べてしまいましたわ。』


『もぐもぐ…あんなにおいしいの初めて食べた、あたしマネさんの妹になりたい。』


『おねえちゃんの料理を褒めてくれるのは嬉しいけどおねえちゃんの妹は私だけだよ?絶対に譲らないよ?』


・めちゃくちゃで草

・収集付かないw

・常識人が少なすぎる!

・歩ちゃんがボケに回ったらツッコミが少なすぎて

・マネーちゃん助けて!


 私はため息をつくとごちゃごちゃした場を収めがら、泊りの準備をしに行くのだった。


 ★ ★ ★


 準備を終えて戻ってくると、今度は皆で多人数でできるゲームをやっている最中だった。


『うわーん、プリムラちゃん強すぎるよぉ、ゲームじゃ絶対に勝てないよぅ。』


『強すぎて言葉も出ない、3対1でも勝てる気がしない。』


『ふふ、配信生活を始めてからいろいろなゲームをやらせていただいてますからね。このゲームも視聴者参加型枠でかなり鍛えられました。』


『くっそー…ならその手で行こう、私ら3人とプリムラちゃん一人で勝負!』


・プライド投げ捨ててリンチしようとしてて草

・ごめんな皆、どんどんうまくなるし配信者とやれる俺らも楽しかったからついつい育てすぎちゃって

・初めはボッコボコだったのに数時間経つ頃にはガチ勢すら余裕無くしてたからな

・界隈で有名なガチ勢煽りプレイヤーもいたけど最終的には煽り無しで敗北したからな…


 やっているゲームは大人気シリーズの大乱戦クラッシュブラザーだ、いろいろな人気ゲームのキャラを操作出来る事で不動の人気を持ち続ける神ゲーである。


 対戦ゲームである事から、プレイヤー同士の力量に差があると一方的になってしまうところが難点だけれど、こういう仲間内でやる分には問題ないだろう。


『きゃー!無理!無理だよ!囲んでも勝てないです!』


『……。』


『そう簡単には負けられませんわ、わたくし負けず嫌いですので!』


『え?3対1で負けるのマジ?…いや!ならばこうしてやる!』


『ちょっ、ガーネットさん?!何をするんですの?!んんっ…変なところ触らないでくださいませ!』


・3対1で全然優勢ですねえ…

・まぁ3人チームは練度それほどじゃないから…

・歩ちゃんマジになってない?声が聞こえないぐらい本気になってる感じが…

・リアル攻撃は反則やろ!

・エッッッ

・どこ触ってるんですかねぇ…


『ほれほれ此処が良いんか?此処がええのんかー?……いやすっご、実際触ると凄いなこれ。』


『集中できませんわ!セクハラです!女同士とはいえいけませんわよ!』


『なんだかこれで勝っても嬉しくない気がするんだけど…。』


『……。』


・ガーネットそこ変われ

・一人声が聞こえなくなった子おる…

・これにはマナちゃんも苦笑い

・えっちなのはいけないと思います!


 目の前の光景がなんかいつの間にか混沌としていた。


 苦笑しながらわちゃわちゃする二人を眺めるマナ、無言でゲームをする黒曜さん、プリムラさんの妨害の為変態行為を行うガーネット、妨害を受けながら必死にゲームキャラを操作するプリムラさん。


 まったく、とため息をつきながら私はガーネットの背後に立った、そして。


 お前がプレイヤーに直接攻撃するのなら私もお前にするのはかまわないな?


『…ん?ッッッぁ、あいだだだだだだ!ギブッギブッ!マネちゃん!アイアンクローは勘弁!もうしないから許して!頭われる!』


『うわぁ…痛そう、おねえちゃんって握力強いんだよねぇ。』


『あれは痛い、ミシミシ音が聞こえそう。』


『…ふぅ…助かりましたわ…マネージャーさんありがとうございます。』


・因 果 応 報

・マネーちゃん物理的にも強いのか…

・ゲームどころじゃなくなってて笑う

・おかしい人を亡くした…


 本気で反省してるようなので手を放す、嫌がってる子相手にそういう事をしてはいけません、同意があるのならともかくね、後ここはマナのチャンネルだ。


『あーー…死ぬかと思った、マネちゃんのアイアンクロー食らったの久しぶりだわー、懐かしい痛みだわ。』


『何度もされるようなことしてるのか、学ばないの?』


『流石に今回は擁護できませんわ、だめですよ?いけないことをしては。』


 落ち着いたところで仕切り直しでもう一度ゲームやるようだ。ハンデとしてプリムラさんはほとんど使った事のないキャラクターを使うみたい。


『今度は負けないよー!いや、せめて一矢報いる!』


『後で練習するか…配信でやるのもいいかもね。』


『はー、仕方ない…真面目にやりますか、勝てる気しないけども。』


『全力で来てくださいませ!いつでも挑戦は受けますわ!』


 こうして聖夜は過ぎていく、強い輝きを持つ宝石箱と私は日付が変わるまで騒がしい配信を行うのだった。


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