第25話 柘榴石と配信
朝、けたたましく鳴る通知音で目が覚める。
「うー…うるさぁ…なにぃ…?」
ねむ…こんな朝っぱらから誰だとスマホを手に取る、そこにうつる名前は私の今のマネージャーの名前だ。
「?…今日なんかあったっけ?」
とりあえずなんでこんな通知連打されてるのかわからなかったので、内容を見てみることにした、そこには。
―――ガーネットさん!配信開始時間すぎてます!視聴者さんみんな待ってますよ!
―――早く起きてください!もう時間すぎてます!
―――もう30分経ってます!あああ、どうすればいいんですか…
―――1時間!もう一時間遅刻です!リスナーの皆さんも呆れてます!
「…あー…。」
やらかしたなぁ、と言っても私はいつもこんなんなのだが。
どうにかしようと思っても怠惰なこの癖は治らず、それを知った上でしるべは私をうまいことやってきたが。
やっぱしるべが一番やりやすいよなぁ…自分の事を棚に上げて私は愚痴をこぼす、あの子だったら配信開始30分前には私を起こせてると思うし。
やべーと思いながら配信画面をのぞき込むとそこには。
・あと何分で起きるやろ。
・このまま配信終了に1票
・起きない、現実は非常である
・これフリーチャット?
あれ…?思ったより騒いでない?というか私が起きる起きないで賭けすらしてるが?
と…取り合えず起きたことを言っておこう、その後急いで配信準備しなきゃ。
ガーネットch:ごめん寝過ごした、今から配信します。
・お!一時間で起床!予想当たった!
・くそー、あと二時間いけるやろと思ったのに
・予想通りでしたね、ちょっとのズレはあってもおおよそ一時間でした。
ゆめのマナch:よかったよー、ガーネットさん起きたって皆に連絡しておきます。
えっ、妹ちゃんがいる?と思い通知を改めてみてみるとマネージャーだけでなく、各ライバーから何度か通知が来ていた、その中で最後、直前の通知でそろそろ起きた?と一言のしるべの通知、流石に私に対しての理解力が高い。
取り合えずあっちにはどうせバレないしパジャマのまま配信をすることにする、どうせこの家には私しかいないし、誰にも文句は言われないでしょ。
★ ★ ★
『…あー、本日は朝活やるなんて突拍子もないことを言いながら寝坊したクソ雑魚ヴァーチャルアイドルのガーネットです。お待ちの皆様申し訳ありませんでした。』
・おはよー
・まぁまだ昼にはなってないから
・チャット欄はちょっとお祭り騒ぎで楽しかったからいいよ
・マナちゃんが繋いでてくれたんだから感謝しなよね
・代わりにアイドル時代の赤石優美をめっちゃ宣伝されましたよ、我々
妹ちゃん何やっちゃってんの!?いや…本人がもうばらしてるとはいえもう十年前のあれこれを掘り下げられるのはなんか恥ずかしい、キャピキャピしてた頃の私だし。
『あーそれは記憶の底に置いていてもらえると、くそー、賭けは負けたかー…と言っても総括に勝てるとは思ってなかったけどね、あの子ほど私の理解者っていないだろうし?』
・総括ってマネーちゃんの事か
・ガーネットとそうかつさんって仲いいの?
・マナちゃんがV部門になる前のマネーちゃんはガーネットのマネージャーだったって言ってた気がする。
・賭けって?
『賭けっていうのはもし時間通り配信出来たら半年間私の家事手伝い、メイドさんになって貰うって言ってたのよ、まぁ二人ともお酒飲んでたし半分冗…』
ゆめのマナch:は?
いや怖!妹ちゃんこっわ!え?マジトーンの気配を感じたんだけど?
・ヒェッ
・マジ切れマナちゃんなんて激レアやぞ
・シスコン姉妹の間に挟まるのは罪
ゆめのマナch:おねえちゃんをメイドさんにするってどういう事?何をするつもりなのかな?
・なんか温度下がった?寒気を感じるんだが
やっべこれ地雷だわ、しるべ→妹ちゃんは知ってたけどこれ実際は、しるべ→←←←妹ちゃんって感じだわこれ。
『えーっと冗談のつもりだったんです…お酒の席の冗談のつもりでして…あの、お怒りを収めていただくと。』
・下手に出てて草
・アイドルとしては先輩でもヴァーチャルアイドルとしては後輩だからな…
・マナちゃんから先輩の圧を感じる日が来るだなんて
ゆめのマナch:大丈夫ですよ!怒ってないです!
ほっ、どうやらお怒りを収めていただけたようだ…これからはしるべをネタにするのは程々にしよう、少なくとも妹ちゃんがいない時にしよう。
『それでさー、朝活って言ってはみたものの何すればいいのかな?思い付きでやってみたけど、何すればいいか思いつかないんだよねー。』
・何も考えてないんかい!
・こいつ自由人過ぎるだろ
・同期が普通の配信者だからバランスは取れてるのか?
・リスナーにそれ聞くんか?
いやだってさ、しるべに寝坊癖治すのにも役立つかもしれないから朝活とかするのはどうかって言われたんだもん、朝起きて配信するのを習慣付ければ多少は良くなるかもしれないって。
『んー…雑談はなぁ、すぐにネタ切れしそうだから、毎日やるのには向かないしなぁ…どうしよ。』
・え?朝活毎日続けんの?ちゃんと出来る?
ゆめのマナch:えっ!これから毎日朝活するんですか!?私もこの時間は空けておかないと!!
・この自堕落モンスターが続けることはできるのだろうか…
・じゃあ歌配信というのはどうです?マンネリ化してきたらリスナーのリクエスト聞くとか
歌配信か…一応ヴァーチャル”アイドル”だからね…そういうのもいいかもしれない、情けない話ではあるが多少錆抜きしないと、お嬢ちゃんと妹ちゃんに負けそうだし、それに…追い抜かれるにしたって突き放されるのは個人的にも嫌だ。
『歌配信かー…いいねそれ採用。まぁでも基本的には私の自由に歌わせてもらうよ、気が向いたらリスナーのリクエストも受ける感じで、もちろん歌えない曲だったら却下ね?』
・ガーネットの歌配信金とれるのでは?
・おじさん3Dで踊ってるところも見たいんじゃ…
・現役歌手が歌配信とか贅沢ですなぁ
・毎日歌配信は純粋に楽しみだ
…よくよく考えてみたらこの感じなんというか、誘導された感じがする、それでう甘くこういう状況に持っていける知り合いが私にはいる。
多分しるべ…だろうなぁ、まったく…もう私の専属じゃないのにこういう事するんだから…
『という事で今日は土曜で時間も朝活っていうには微妙だから、あまり長くはやらないけどやろうか…えーっと…。』
む、いきなり歌おうと考えたら何を歌おうか迷うね…Garnetの曲を歌うのもなんか面白くないし…そうだ!
せっかく妹ちゃんも来てくれていることだし赤石優美の歌を歌う事にしよう、私のファンも多くいることだし多分喜んでくれることだろう。
・これGarnetの曲じゃないな
・え!?これもしや…
・うわ、なっつ、十二年前の曲や
ゆめのマナch:え?配信とはいえこれを生で聞けるの感動なのですが
そう十年前、私のアイドルとしての地位を固めた曲、私のデビュー曲でもある曲。
『ふふ、懐かしいな、十年以上過ぎた今歌う事になるなんてね…それじゃいくよ?――――柘榴石の恋愛。』
そして、私は懐かしい想いを込めながらかつての始まりの歌を歌うのだった。
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