WILL MIRACLE BOX

第23話 夢と私と配信

 どうも、高天原の仲間も増え、給料も増え、仕事も増えた今日この頃、私、稀石しるべは愛する妹と家でのんびりしていた。


「ねぇ、おねえちゃん…。」


「ん?どうしたの?結愛。」


 いつも私に対しかわいい笑顔を向けてきてくれるかわいい妹が、珍しく神妙な顔をしている、何かあったのかな?


「お願いが…あります…!」


 ★ ★ ★


『皆ー!夢の世界からあなたに夢を!ウィラクル所属、アイドルVtuberのゆめのマナです!』


・こんゆめー

・こんゆめ!

・今日のタイトルホラゲーっぽいけどマナちゃん苦手って言ってなかった?


 今日はホラゲー配信、怖いのが苦手な私は避けていたんだけど、リスナーさんがどうやら私が怖がっているのが見たいらしいのでやってみることにしたんだけど…。


 やっぱり私には敷居が高くて、他の子とコラボしてやろうかとも思ったんだけど、なんというか安心感というものが違い過ぎてですね…急遽助っ人を頼むことにしたのです。


『えっと、ごめんね皆今日ホラーゲームをやっていくんだけど…流石に私一人じゃ無理だって思ってね…実は助っ人を呼んでるんだ。』


・コラボ?

・ん?でも予定空いてる子いたっけ?

・お嬢は配信中だし歩ちゃんはスタジオに用事だって言ってたけど

・残り一人は…


 残念ながら全部違うんだよね…ホラゲやるのに誰かがそばにいてくれないとなんていうか耐えられそうにないから、傍にいてくれる人が必要ってなると近くに住んでるプリムラちゃんってなるけど彼女は今配信中だ。


 消去法でガーネットさんになるのだが連絡しても返信ないっておねえちゃんが言ってたし、私から連絡しても反応がなかったのでこれもダメ。


 という事はつまり。


『皆様こんばんは、今回ゆめのマナの懇願により配信にお邪魔させていただきますマネージャーもとい指示厨Mです。よろしくお願いします。』


・マネーちゃんやんけ!

・ついにマネーちゃんもライバーデビューしたか…

・ちょっと無機質クールっぽくていいですね、仕事中感が出てて癖に刺さります

・ガーネットの訳ないよなー、怠惰魔人だもんな…


『という訳でおねえちゃ『マナ。』…えー、マネージャーさんに傍で見守っていてもらいながらゲームをプレイしていこうと思います。』


・怒られてて草

・そりゃ(仕事中だもの)そうなるよ

・でもこの人もクールそうに見えて妹推しのやべーやつなんですよね

・気を抜いておねえちゃん言っちゃうマナちゃんかわいい


 …やっちゃった…傍にいる安心感で気を抜いちゃったみたいでついおねえちゃんって言っちゃった。


 視線でごめんと謝るとおねえちゃんはこちらを見て苦笑していた。


『という訳で他のライバーとのコラボを期待した人はごめんなさい、他の子も予定とかあるしマネージャーさんに頼むしかなかったの。』


・これはこれでおもしろいからええんやで

・いや姉妹コラボやろ

・マネーちゃんの生声聞けて満足

・今後もたまにでいいからコラボして欲しい


 どうやら比較的好評なようだ、ならたまにゲームやるときに参加してもらおうかなぁ。


『それじゃ、ホラーゲーム、初めて行くよー…うぇ、もう暗いんだけど、…んー…どうやら主人公は臆病な性格で仲間に馬鹿にされたことで逆上して、幽霊が出るって噂の洋館に肝試しに来たみたいだね…なんなんだろうね、臆病なのにこの行動力。』


・それは言っちゃいけない約束よ

・それ言ったらゲーム始まらないからな

・臆病な奴ほどキレると謎の行動力発揮するぞ

・やること極端なのはそう


 とりあえず、最初はチュートリアル的なものだからあまり脅かし要素はないだろうと思っていた私のヘッドセットから、ガラスの割れたような音が聞こえて思わず飛び上がる。


『ひゅい!…いや、何でもないよ?びっくりなんてしてないからね?』


・ひゅい!

・今までサクサク進んでいたのが噓のようにキャラ操作ゆっくりになってて草

・これはビビってますねえ!

・一瞬噴出した声聞こえたけどマネーちゃん?


『失礼、目の前で飛び上がるのを見たらつい。』


 …まぁいいよ…笑われるくらい…傍に誰もいないのにホラゲーとか絶対無理だもん。


『皆、ごめんね…思ったより時間かかるかもしれない、スムーズに進めないかも知れないけどそこは許してね?』


・RTA見たいわけじゃないので大丈夫です

・こういう反応が良いんだ…

・マネーちゃんももっと指示厨してええんやで

・姉妹のお話聞きながら見たい


 成程、それなら若干気も紛れるし良いかもしれない。


『マネージャーさん、そういう事だから何かお話ししよう?今日の晩御飯何かな?』


『…マナ、あまり配信に関係のない話はしないように、ほら…今調べるところあったのに通り過ぎたよ、ゲームに集中してね。』


・今日の晩御飯w

・完璧に胃袋握られてんだよなあ…

・舌肥えてそうなプリムラちゃんが絶賛するほどの料理スキル持ちだからな

・ちゃんと宣言通り指示する指示厨の鑑

・あっ、それは…


『うぅ…気を紛らわせたくって…どれかな?…これ?…きゃああぁぁぁぁぁ!』


 びっくりしたよ!明らかに怪しげな箱を開けたら画面いっぱいに顔が写りこんできたよ!思わずすごい悲鳴をあげちゃった。


・耳が無いなった

・鼓膜じゃないんか…

・いやぁ!綺麗な悲鳴でしたね!

・これマネーちゃん知ってて誘導したろw


 なんてことするんだ、可愛い妹を脅かすなんて、手伝ってくれるならともかく妨害は辞めて欲しい、心臓止まるかと思った。


『ごめんね、ふふ…でもこれ必要なフラグなの、びっくり要素言わなかっただけで進行に必要だからね。』


・笑っとるやんけw

・取れ高の生成に余念がないマネージャー

・ちょっと声が優しくなるのすこ


 進行に必須なら仕方ない…今晩のお夕飯は私の鉱物をリクエストするんだからね!


 その後は、まぁまぁ詰まりそうな所とかはおねえちゃんが教えてくれて、なかなかスムーズに進んでたと思う、雑談の余裕すらあるほど。


『ちょっと慣れてきたかなー、皆そういえばマネージャーさんがここにいる訳だしなにかマネージャーさんに対して質問とかある?』


・質問コーナーきちゃ!

・恋人はいますか!

・3サイズは!


『恋人はいないよ。』


・マナちゃんが答えてて草

・しかも即答である

・これは…大きい矢印が見えますねぇ


 はっ…思わず私が答えちゃった、で、でも本当の事だもんね。


『恋人はさっきマナが言った通りいないよ、言うなれば仕事が恋人かな?ウィラクルの…うちの子たちのサポートをすることが一番の生きがいだからね、後3サイズは秘密。』


・3サイズは秘密かー、分かってたけど

・仕事が恋人、しかもその理由に納得、マネージャーが天職なんだね

・高天原にはいない大人の女性ってタイプ、いいねぇ

・ん?26歳の女がいたような気が…

・あれはなんか大人っていう感じは…


 ふふん、やっぱりおねえちゃんは自慢のおねえちゃんだ、こうして皆、おねえちゃんの事好意的に見てるし…ん?普段から私がおねえちゃんの話ばかりしているせいかもしれないね?


 そんなことを言いながら進めていたらやはり油断していたのか、次の怖いポイントに対応できなかった。


『きゃあぁぁぁぁぁ!!』


『ちょっマナ!?』


・?なにがあった?

・マネーちゃんが焦ってる?

・なんか音したけど

・大丈夫?


 びっくりしたあまり思わず隣にいたおねえちゃんに抱き着いてしまった。


 びっくりした私を落ち着かせるように軽く私の頭を撫でながら、配信に声が乗らないように小さな声で。


「ほら、皆びっくりしてるから、大丈夫って伝えてあげなきゃ。」


 と耳元で囁かれた。


『ん、ぁ。』


 思わずゾクゾクしてしまい変な声が出てしまった。


・何?今の声

・ちょっとえっっな声でしたね…

・ガタッ…ふぅ…

・立つな座れ


 やばっ、配信に声が乗っちゃった?!


『ああ、えっと今のは…いきなり耳元で囁かれたからくすぐったかったのとびっくりしちゃって。』


・なるほど耳が弱点…

・マネーちゃんのささやきボイス売ってくれ…

・姉妹イチャイチャいいぞ

・あれ…?今ホラゲー中なのに空気が甘いんだが…


 …なんか変な空気になっちゃった。


 その後は何というか、変な空気のままなんとなくびっくりするところに出くわしても平気だったので、驚くほどスムーズに終わりまで行けた。


『あ、あれ?終わり…かな?…洋館から脱出できたし終わり…だよね?』


『クリアおめでとうマナ、なんだか私もあまり必要なかったんじゃない?』


・後半あまり怖がらなくなってたな

・イチャイチャしだしてからやぞ

・やはり愛、愛の力はすべてを解決する


 まさか私、ホラゲーを克服しちゃったのでは?流石はおねえちゃんだ、私にとっておねえちゃんはなくてはならない存在っていうのが証明されたね!


『これなら次にホラゲーやることになっても大丈夫そう!流石おねえちゃん!次も一緒に頑張ろうね!』


『一緒にやること前提に考えないように、次は他のライバーと一緒にやりなさい。あと私はマネージャー。』


 えー、またお姉ちゃんとやりたいのに。


・えー、また一緒にやってるのみたい

・今後マナちゃんと一緒にやらないんですか?

・姉妹のイチャイチャは不治の病に効く…だから頼む…

・マネーちゃんもウィラクルだからな、いつでも一緒にやってええんやで…仕事も忙しいだろうから無理せず程々にな…


『…まぁ、リスナーの皆さんがそう言うなら、機会があれば…ですけれど。』


 え?今気概があればOKって言った?言ったよね!言質とったよ!


『みんな!今の聞いた?言質とりました!やったこれでお姉ちゃんと一緒に配信できるよ!』


・言質とったで、俺らが証人だ!

・これからもよろしくな!マネーちゃん!

・無理せず、身体を大事にして毎秒配信して

・ありがとうございます!ありがとうございます!


 コメント欄が喜びの言葉に満ちていると、おねえちゃんは困った顔をしながら私に笑いかけてくる。


 そう、おねえちゃんも仲間なのだ、だからこれからもずっと一緒だ。


『さて、ゲームもクリアしたしそろそろいい時間になったので配信を終わりにしましょう!ウィラクル所属ゆめのマナでした!』


『マナ、忘れてるよ…チャンネル登録、高評価もしていただけるとありがたいです。それでは皆さん、お疲れ様でした。』


・おつかれー

・いやー今日の配信はよかったー

・またねー!


 お願いしたときはちょっとどうなるかなって思ったけど、いい感じに終われたから…いいよね?


 私はこれからの事を考えると、また楽しくなりそうだなって思いながら配信を終わらせるのでした。

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