番外編 聖夜の高天原(後)

コラボ配信の話はおそらく本編でやると思います。聖夜デート後編です。

長くなっちゃった。だってイチャイチャ書くの楽しいんだもん。

後、しるべが義兄だったらIFとかも考えたんですが需要ありますかね?ただのハーレムものになっちゃいそうですけど。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ああ…なんてこと…」


 先ほどのハプニングを思い出しと顔が赤くなってしまいます。


 今日が大事な日だと分かっていたにもかかわらず夜更かしした上に、寝坊、更にはあられもない姿を想い人にさらしてしまうだなんて…。


 もう待たせてしまう事は確実なので仕方がない、焦らずしっかりと準備をしていかなくては、しるべさんが私が応対しておくから身だしなみはしっかりとして来なさいと言ってくれたので…本当にしるべさんには感謝ですわ。


 軽くお化粧をしているとつい先ほどの事を思い出してしまう、あのような格好で応対したわたくしがいけないのですが、裕司さんの視線はわたくしの胸元にくぎ付けだった。


 やっぱり男の人って好きなのかしら…と思いながら自分の大きく実ったものを眺める。


 だいぶ前の配信で大きさには自信があると冗談交じりで言ったが大きいことはなかなか不便もある。


 持つ者は、とはいうものの、下着や服選びに失敗すると太って見えたりすることはなかなかのハンデなのですわ、大きいなりに苦労もあるのです。


 まぁ、その苦労も好きな人が喜んでくれるのなら、苦労しがいがあるというもの、これで誘惑できるのなら武器として使う事もあるかもしれない。


―――今日、試してみますか。


 わたくしは今日勝負に出るための準備をしていくのであった。


 ☆ ☆ ☆


「お待たせしましたわ、遅れてごめんなさいませ、裕司さん。」


 しるべ君にお茶などを入れてもらい、くつろいでいたところに声がかかる、声の方に振り向くと身だしなみを整えたかわいらしい姿ののぞみがそこにいた。


 彼女の姿を見るとつい先ほどの姿が脳裏に浮かんでしまうのだが、一生懸命その光景を頭から追い出し、クリスマスデートの為だいぶ気合の入っている様子の彼女に声をかけた。


「今日の格好もよく似合ってる、待った甲斐があったな?」


 若干さっきの事をからかう意味も込め服装を褒める、本当に似合ってるしな。


「あ、ありがとうございます、あの…先ほどの事は忘れていただけると…。」


 あれは忘れようとしても忘れられそうにないと思う、気持ち悪いと思うかもしれんが男のサガだ、許せ。


「ふっ、忘れるかどうかは今日次第だな、プランは考えているが、さっきの事を忘れるくらいには楽しもう。」


 少し気障っぽくなってしまったか?緊張をほぐすためにわざわざそういう言葉選びをしたんだが…。


「ふふっ、なんですのそれ、ですが…今日の予定もお任せしておりますのでよろしくお願い致します。」


 どうやら正解だったようだ。今日のプランは若干気合を入れているからな、楽しみにしていて欲しい。


「それじゃあしるべ君、すまなかったな。」


「しるべさん、行ってきますわね。」


「はい、二人ともいってらっしゃい。」


 そう言って、しるべ君に見送られながら俺たちはクリスマスの町に向かった。


☆ ☆ ☆


 今日はまさに冬の寒さでありながら町は賑わっています。クリスマス・イブとはいえ、そういう時期なのだから、まぁそういった関係であろう男女の姿もちらほら、その中でわたくしたちはどう見えているのでしょうか?


「ねぇ?裕司さん、わたくし達って周りからどう見えてるのでしょうね?」


 そんな意地悪気な質問をわたくしは裕司さんに向ける、まぁなんとなく帰ってくる返事は分かっているのだけれど。


「まぁ良くて仲の良い親子、だろうな。のぞみには悪いが期待通りにはおそらく見えないと思うぞ。」


 ですわよね、わたくしもわかっております。彼とわたくしにはそれくらい歳の差がありますし…でもそれでも。


「わたくしが期待しているのがわかっているなら、そう答えてくれてもいいのではないですか?」


「真面目に返すのは少々恥ずかしいんだ…勘弁してくれ…。」


 分かった上での照れ隠し、かわいらしい裕司さんのお顔も見れたので良しとしましょう。


 あら?今日は車で移動なんですのね。少し遠出するのかしら?


「今日は車を使うのですね?」


「まぁ遠出をするわけではないが移動距離もあるからな、今日はこれを使う。」


 そう言ってあまり目立つことは嫌いな裕司さんではあるけれど、そこそこにお金をかけている車にわたくし達は乗り込む、この車に乗るのも久しぶりですわね。


「今日はどこに行くのです?」


「今日も定番巡りだ。そういうのが好きなんだろ?」


 流石、わたくしの事よくわかっていらっしゃいますね、まぁ…彼と一緒ならどこへでも、それこそ安いラーメン屋や牛丼屋とかでもいいのですけれど。


 車に揺られながらわたくしは今日のデートに胸を躍らせました。


 ☆ ☆ ☆


 最初に行ったのは水族館でした。


 水生生物というのは本当に不思議な姿をしているものばかりなのだなと思いながら裕司さんと一緒に手を繋ぎながら歩く、どうやらイルカショーをやっているようで、現在そこに向かっている最中ですわ。


 会場に到着すると丁度始まるところだったようでいいタイミングでした、が、始まる寸前だったせいか、近くの席は埋まっていた為後方で見ることになってしまいましたが。


「うーん…残念ですわね。近くで見れたらよかったのですが…。」


「いや…これで正解だ。準備してきてないからな。」


 ?準備?何の話だろうと私が思っているとトレーナーさんの合図でいるかが跳ねる、そして。


「あっ…。」


 そう、最前列どころか半ばくらいの席はだいぶ水がかかっていた、そうか、最前列の方がレインコートを着ていたんですね。


「ああなるからな、昨今イルカショーの数もどんどん減っているらしいからな、今のうちよく見ておけよ。」


 成程、いつかはこういうのも見れなくなってしまうかもしれないのか、そう思うと少し寂しい気もするけれどならばなおさら、今好きな人との思い出を目に焼き付けようと思いながらわたくしはショーを眺めました。


 ☆ ☆ ☆


 イルカショーの後、かわいらしかったのでついグッズコーナーのイルカをのお人形を買ってしまいました、仕方がありませんわよね、かわいらしかったんですもの。


 その後、テーマパークへ向かい色々な乗り物に乗ったりしました、こういうところに行くのは両親が存命だった時以来だったのでついついはしゃいじゃいましたわ。


 裕司さんは流石に年齢的にはしゃぐ歳でもないと思っているのか若干疲れた様子でしたが、わたくしが楽しんでいる姿を見て笑顔を向けてくださいましたわ。


 テーマパークを一通り楽しみ日も暮れ始めました、…本当にどうして楽しい時間はすぐすぎてしまうのでしょうか、まだ裕司さんと一緒にいたいのに。


「さて、そろそろ夕方か、ふむそろそろいい時間だな。」


 まだ終わりにしたくなかった、人生初めての好きな人とのクリスマスデートなのです、だから。


「あのっ、裕司さんわたくし―――。」


「なぁ、これからまだ時間あるか?」


 まだ終わらせたくない、帰りたくない、そう口にしようとしたわたくしに対して裕司さんはそう口にしました。


「…え?…あ、はい全然大丈夫ですわ。」


「そうか、ならのぞみの夕飯の準備はしなくていいって伝えておいてくれ、俺が夕食を奢る。」


 わたくしが返事を返すと目的地に向かい車を発進させる。


 一瞬わたくしの想いが届いたのかと思いましたわ…。


 あまりにも楽しかったから、このデートだってわたくしの我儘で付き合わせているのにデートコースまで考えてくれて。


 そんなことを考えているうちに目的地に着いたようで…ってここは…。


「あの…ここって高いところではありませんか?」


「…のぞみ、悪いが服は用意してあるからそれに着替えてきてくれ、着替える場所はあるから大丈夫だ。」


 わたくしの質問には答えずわたくしはただ裕司さんの後を追うでした。


 軽く周りを見回したところやはりドレスコードがある場所です、こういうところはまず予約制であり、この時期となると間違いなくだいぶ前から予約を入れないと取れないはず。


 という事はつまり。


 デートに誘われるのを予測していた…という事。


 そしてその準備を前もってしていたという事です。


 それを考えると胸が暖かくなる、本当に加齢がはあり得ないと。


 ブラックのレース付きのドレスなんて着るのいつ以来かしらと思いながらそでを通し待たせている彼のもとへ向かう。


 そこには正装に着替えた裕司さんの姿があった。


「似合っているよ、お姫様。」


「この服も安くはなかったでしょうに、それにここの予約も。」


「俺こう見えて会社の社長なんでな、金に関しては気にするな。」


 そんなこと知ってますわ、そういう事じゃないんです。


「そんなことはどうでもいいから、そろそろ時間だ、行くぞ。」


「あっ…もう。」


 そう言って背を向けてしまう彼を追いかける、彼の気遣いに口元を緩ませながら。


 ☆ ☆ ☆


 綺麗な夜景、豪華な食事、そして…目の前にいる美しい少女。


 普段適当に生活してる身からすればどれだけ贅沢なんだと言えるだろう。


「こういう食事…なんというか久しぶりですわね。」


「そういえば元お嬢様だったな、すっかり庶民が身に着いたが。」


 のぞみを拾って以来、というか俺と一緒に生活してから、あまりの俺のだらしなさに俺の世話を焼き始めてからだな、なんというか所帯じみてきたのは。


 今思えば好意があったからだったんだろうな、と思いながら昔を懐かしんでいると食事の手を止めたのぞみが口を開いた。


「あの、今日は本当に素敵なデート…ありがとうございました。」


「なんだ、しおらしいじゃないか、こういうのは趣味じゃなかったか?」


 こういうのもある意味ベタだからてっきり好きなのかと思っていたが、今日の予約を取るのそれなりに大変だったんだがな…。


「いえ!その、とても嬉しいのですが、裕司さんは、その、楽しめているのかなと…。」


 ?何を言ってるんだろうこいつは、のぞみとデートだなんてこんなおっさんからしたらかなりの贅沢で楽しいに決まってる。


「楽しいに決まってるだろ、こんなおっさんに若い娘が付き合ってくれてるだけで最高なのに、その相手も最高の女だ、これでつまらんなんて言ったら男として終ってる。」


「…楽しんでくれてるならいいのです。貰ってばっかりで申し訳なくて、今日のお誘いもわたくしの我儘でしたのに。」


 普段良い子ちゃんなんだからこれぐらい我儘でも何でもないと思うんだがな、初配信の炎上と比べたらこれぐらい全然苦でもない。


「ま、のぞみが楽しむ姿を見るのが俺にとっては一番楽しいことだ、だから喜んでもらえて俺も嬉しいよ。」


 今日一日楽しそうだったのぞみを見て達成感を感じたし、こんな美少女を連れまわしたことで優越感も得られた、個人的にはそれだけで満足だけどな。


 俺がそう言うと、なら食事も楽しみませんと、言いながら食事を再開する、なんというかやっぱり手つきが様になってるなと思う。


 そんなことを考えながら綺麗な景色と目の前の少女をただ眺めていた。


 ☆ ☆ ☆


 食事も終え、後は家に送るだけになった少女と車に乗り込もうとすると、その少女に腕をつかまれる。


「ん?どうした?何かあったか?」


「……。」


 少女はうつむき何も喋らない、表情も分からないので何をしたいのかもわからない。


「何も言わないと分からないんだが…。」


 俺がそう言うと少女は小さく口を開く。


「……くないです。」


「なんだって?」


 難聴系主人公って訳じゃないんだが、声が小さすぎる上、うつむいていたから何を言っているかわからなかった、なのでもう一度俺は聞きなおした。


「今日は、帰りたくないです。」


 顔を上げ顔を赤らめながらこいつがそんなことを言い出した。


 …ふーっ…落ち着け、そのままの意味でこれに乗ったら終わりだぞ、俺。


「どういう意味で言ってんのか分かってるのか?それ。」


「はい。」


 即答、若干頭の痛みを感じながら、俺は苦し紛れの返事を返す。


「泊まるだけなら構わない、絶対に俺からもお前もそういった事はしないって約束できるならいいぞ。」


「…はぁ…」


 溜息を吐かれた、内心ヘタレとでも思ってるんだろうか。


「わかりました、”今は”それで構いませんわ、久しぶりにお泊りしましょう?」


 しるべさんが心配しないように連絡しないと、と言いながら、スマホをいじりだす、スマホを手に持つ指にはキラリと光る指輪が見えた。


 …まったく俺は、いつまで耐えられるだろうね…


 そう思いながら俺は自分の自宅へと車を走らせた。

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