第16話 夢と希望と初めての共同作業(前)
世間は夏休みも終盤、ついに予定した3Dモデルが完成した。
「これが新しい3Dモデル…見た目が大きく変わったわけではありませんのね。」
「確かに、もっとなんか派手に変わってるのかなー?って思ってたんだけど。」
ライバー2人にはまぁそう見えるだろうなーと思いながらも私は苦笑しながら2人に説明した。
「原形は出来てたって言ったでしょ?あれでも実際に動かすとなると粗が結構出てたの、それを解消して滑らかにかつ激しい動きにも対応できるよう、更にライバーの動きを制限しないよう細かな改良を施されてるんだ。」
高天原の開発部門は何かとマッド…凝り性な人間が多くて、もっといいものをもっと上をとどんどん上限を上げていくからとりあえずの着地点として作らせたのが今回の3Dモデル、正直言ってモデルの精度だけで言うなら業界トップレベルって言っていいかもしれない、大手に売り込めるレベルだ、しないけど。
さて、3Dモデルが完成したという事はつまり予定していたコラボ配信が行えるようになってという事だ、という事で2人にはお互いに日程の調節をしてもらい、希望の日にちを聞いてから、SNSで決まった日にちの告知をしてもらうことになった。
私のすることは当日に2人が00%を出せるよう準備をすることだ。
この間のような失敗は2度としない、絶対に。
★ ★ ★
・コラボ楽しみだー
・待機
・一緒にゲームとかやるんかな?
・結構準備期間あったから何か大がかりのことやるのかな?
・早く二人のてぇてぇが見てぇんだ
待機所のコメント欄には何をするのか楽しみだというコメントがちらほら見える、今回皆に楽しんでもらえるよう色々考えてきたけど、やっぱりちょっとだけ不安かな、皆が楽しんでくれればいいんだけど。
準備はできた、隣にいるのぞみちゃんも準備は出来ていてこちらを見ながら頷いてくる、よし、やろう!
『皆さん、こんにちは!夢の世界からあなたに夢を!アイドルVtuberのゆめのマナです!』
『リスナーの皆様、ごきげんよう、ヴァーチャル世界から希望の光をあなたに、アイドルVtuberのプリムラ・モンステラです。』
・おお!3D!
・今日は3Dで配信してくれるのか!
・3Dで2人並ぶと初ライブの事を思い出すね
・初ライブの時よりなんか自然に感じる?なんかぬるっとしてる感じ
『うんっ!今日はね3Dで配信していくことになります!でも以前のままだと書くついちゃうことがあるからってアップデートしてもらえることになってね?丁度2人のコラボ配信で3D配信でお披露目したいってお願いしたんだ!』
順番は少し違うけどコラボでお願いしたっていうのは事実だから嘘はついてないよね、あれが未完成だったと知られないよう前もって決めていたんだ、これは開発部門の皆のプライドの問題でもあるからね。
・だから滑らかに動いてる感じするんだね
・このぬるぬる具合で2人のダンスとか見てみたいな
・すげえな高天原の3Dモデル、大手にも負けてないんじゃね?
・これは良いサプライズ
・確かに!これでダンスとか見たい!
『ふふ、皆様、慌てなくてもまだ配信は始まったばかりです。なのでこれからの事を楽しみにしながら今日の配信を見ていただけると嬉しいですわ。』
画面の中のプリムラがくすくすと笑う上品に笑う、ああいう綺麗な笑い方は私には出来ない、笑い方ひとつで綺麗に見えるなんて羨ましいって思う。
『うん、とりあえずは今日私たちがやっていくのはこの3Dの体をうまく生かした体を使うゲームだね、ゲームはプリムラちゃんの方が上手だけど体を動かすことなら負けないよー!』
『わたくしこそ負けませんわよマナさん、今日のための秘策がありますの、今日はわたくしが勝たせていただきます。』
・おお、視線がバチバチいってそうな感じ
・こう並ぶとヒロインと令嬢キャラのライバル関係に見えてなんか新鮮だな
・友人にしてライバル、良い関係だぁ…
・二人ともがんばれー
そして私たちが選んだのは人気ゲーム会社が手掛けるパーティゲームが多数存在するゲームハード、その中でも体を動かす系統のパーティゲームをやることにした。
『ふふん、フィジカルならまだ私の方が上だからね、負けないよプリムラちゃん。』
『その余裕すぐに崩してあげます、見せてあげますわ!わたくしの実力!』
そうして始まった対戦だったのだけど、思った以上にプリムラちゃんが強い!あれ?まずい…私負け越してる?
・やはりゲームという舞台ではプリムラちゃんが優勢か
・というかプリムラちゃん早撃ちのゲームやばない?安定して0.12秒とか遅くても0.15秒とかだったんだが
・そうなるとこういうゲームって反射神経使うの多いからプリムラちゃん有利かもね
・やっぱり競技向けのスペックしてるなプリムラちゃん
ぐぬぬ、誤算だった、身体能力では勝ってると思ってたのにまさかこういうところで負けてるだなんて…というかのぞみちゃん人類でも有数の反射神経の持ち主では?
『ふふ、どうしましたの?このまま負けで終わってよろしいのですか?』
うわ、なんか興が乗ってきたのか悪役令嬢っぷりが出てきてるよ。
でも、そうだね、負けて終わりだなんて悔しすぎる、でも流石にあっちの得意な分野では勝てそうにない…なら仕方ない。
『悔しいけどこういうゲームでは私に勝ち目はないみたい、だから悔しいけど違うゲームで勝負させてもらうよ!今度は私の得意分野でやらせてもらうから!』
『いいでしょう、どのようなものだってわたくしが勝って見せますわ。』
・正統派ヒロインVS悪役令嬢
・何故か小説サイトで有名な構図がこんなところで見れるだなんて
・はたしてゆめのマナはプリムラ・モンステラに勝つことはできるのだろうか?
・バトル物始まったな
私の得意分野、それはダンスゲーム、姿勢や体感を重要視したゲームでは私が有利になるはず。
『さあ!これで勝負だよプリムラちゃん!』
『なるほど…ダンスゲームですか、確かにそちらの得意分野になるでしょう…ですが!わたくしだって日夜練習はしていますもの、ここでその成果を試してあげますわ!』
『望むところっ!』
そうして始まったダンスゲーム、これならと思っていたけど、まずい、プリムラちゃんが思った以上だ、でも負けるわけには!
大人げなく全力を出した。
その結果は、私の勝利、ではあったんだけど思ったほどの差はなかった。
思わずにやけてしまう、背中を追われるどころが徐々に迫られるこの感覚。
ぞくぞくした、ああこの娘は私の傍まで迫ってきてる、私の隣に立とうとしてる。
その後数回やって私が全勝したが最後の一戦での差はほぼ同点だった。
ああ本当にこの娘は。
私を熱くさせてくれるんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます