第14話 夢とママと私

 高天原V部門オフィスにて、定例会議後の事である。


 会議と言っても重苦しいものではなく、ちょっとした意見交換とかライバー側からこうしたいという希望を聞いたりとかする場なので和気あいあいと話していて、今日も普段と変わらず特に問題なく終わった。


その後皆が持ち場に戻り始めた頃、社長に対して神目さんが話しかけた。


「あの、先日の配信でおそらくなのですがお兄様にわたくしがプリムラであることに気付かれたと思います。」


「本当か?と言ってもあちらから何かアクションを起こしてくることはないんじゃないか?ここ数年接触はないわけだし。」


 お兄様、神目さんの家族に関しては、ご両親が亡くなっている事くらいしか聞いてはいないためよくは知らないのだが、兄妹がいたのか。


「…でもあまりいい顔はしないと思います。それにわたくし恋愛することを前面に出していますし、そういった事で突かれるかもしれません。」


「…そうだな…しかも相手が私だとなると、確実に異議を申し立ててくるだろう、最悪連れ戻そうと動くかもしれん。」


「まぁ、その時の策も考えてはいますから大丈夫ですわ、いざとなればお義姉様に話を通せば問題ありません。」


「へー、のぞみちゃんって、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいたんだね。私知らなかった。」


 結愛が気になったのか、兄妹の事について神目さんに聞いていた、まぁここで話しているという事は聞かれても大丈夫という事だから、いいんだろうけど…少しは遠慮した方が良いのでは?


「いえ、お義姉さまはお兄様の婚約者の方でして、将来結婚することが決まっているのでお義姉様と呼ばせていただいているのです。実の姉妹ではありませんよ。」


「婚約者!そうなんだぁ、そのお義姉さんとは仲が良いの?」


 割と切り込んでいくな、まぁ神目さんだから大丈夫だろうと思って聞いてるのかもしれないけど。


「…以前はわたくしが一方的に嫌っていまして、あれこれと申し訳ないことをしてしまったのですが、謝罪の機会がありまして、心から謝罪をしたらあっさり許していただけましたの、心の広いお方ですね。今では寧ろお兄様よりお話をしていますわね。」


「おお…結構聞いちゃまずかったお話だったかな?えと、ごめんね?」


「かまいませんよ、いずれはわたくしの事をしるべさんや結愛さんには話す予定でしたし、それに実家の事はわたくし離れているのでもう半ば関係がございませんから。」


 やっぱり、以前の捨てられた話の一件ですよね…現在は関係修復したのかさほど重い感じはしないけど。


「まぁとりあえずはあちらから何かアクションを起こさないうちは静観という事だな、いや多分私の方に何か来そうな気もするが…。」


「裕司さんに対して何かするのであればわたくし許しませんわ、お兄様との通信関連完全にブロックいたします。」


 いや、それはお兄さん可哀想なんじゃ…聞いたは感じだと若干シスコン臭さを感じるし、シンパシーを感じるな。


 そうしてまた一つ、神目さんの事情を知れたのだった、今度は社長との進展具合を聞いてみようか。



 ★ ★ ★



『えっ?私とプリムラちゃんの絵師の人ですか?』


・そうそう、探しても全然それっぽいの出てこないし

・絵師担当さんの欄も不明になってるし

・だめならいいけどちょっと聞いてみたいね


 プリムラちゃんがいろいろなゲーム配信を始めたため、私ことゆめのマナも何かしなきゃと思いおねえちゃんに相談したところ、棒サンドボックスゲームの金字塔と言われるゲームのサーバーを作ってもらいそのゲームをプレイしながら私は雑談をしていた。


 絵師、かぁ…実は私、ゆめのマナ、プリムラ・モンステラの絵師は一緒なんだよね、それでその絵師というのが。


 おねえちゃんなのである。


 いや本当におねえちゃん、普通に私のお世話を普段しているけどいつ休んでるんだろう?今度おねえちゃんに頼らず頑張って生活してみようか?


 そんなことはさておき、言っても大丈夫かおねえちゃんにLineで聞いてみることにする。すると即座に返信が来てOKとスタンプが送られてきた、なら配信で言っちゃっても大丈夫だろう。


『えっとですね、実は私とプリムラちゃんの絵師さんは、マネージャーさんなんですよ、可愛く書いてくれてありがとうマネージャーさん。』


・マネーちゃんが描いてるのか

・マネーちゃん多才過ぎない?

・おねえちゃんでママって事か…なんて羨ましい

・おねえちゃんはママ!?ガタッ

・立つな、座ってろ


 思った通りの反応、やっぱりおねえちゃんてすごいなぁと思いながら、おねえちゃんが絵師だよって知らされたのは初配信が終わった後だったなぁ、とその時を思い出した。


 ゆめのマナを描いた後に、同期がいることを知らされ急遽プリムラ・モンステラを描くことになった、と言ってたから大変だったんだろうなぁと思っている…今度本当におねえちゃんに何かしてあげよう、本当に。


『それで…ッあっ、やだっだめっ!ああああああぁぁぁぁぁ!!。』


 雑談をしながら地面を掘っていたんだけど、急に溶岩が出てきて私の操作するキャラはあっさり死んでしまった、あれ?これ、全ロスってやつ?


・ちょっとえっだった

・全ロス…おいたわしや…

・すかさず失った採掘用のアイテムと食料を無言で渡してくるマネーちゃん草

・マネーちゃんも配信して


 これが全部を失うって事かぁと絶望していると、ゲーム上のおねえちゃんのキャラが現れいくつかのアイテムを渡してくれた、うう…ありがとうございます。


・担当の配信をちゃんと見て即座にフォローするマネージャーの鑑すぎる

・まだマナちゃん初心者だからね、介護が手厚いのは助かる。

・まだろくにアイテムもない豆腐ハウス在住だから手助けないと辛い


『感謝ぁ…本当に感謝だよぉ…、これからは気を付けないと…溶岩怖い…。』


・洗礼を受けちゃったね

・このサーバー住人まだマナちゃんとプリムラちゃんとマネーちゃんの3人しかいないからな…住人同士のやり取りが少ないのは寂しい

・まぁ高天原ライバーはまだ2人だからな仕方ないところはある

・後輩とか増えたら楽しくなりそう


 後輩かぁ、そうだよね、高天原V部門は始まったばかり、いずれは後輩が出来るのだろう、なんというか後輩っていうのもくすぐったい感じがする、フェイム時代もいたけどあんまり打ち解けられなかったし…、今度は仲良くできるといいなぁ。


『そうですね!いつか後輩の子が出来てこのゲームを一緒にやることがあったらここをいっぱい案内してあげたいです!』


 それまでには…このゲームを一人でもこなせるよう上手にならないと…。


・後輩もかわいい子だといいね

・何言ってるんだ?高天原やぞ、次もきっと問題児や

・高天原=問題児の構図が出来てて草

・問題児が増えるとどうなる…?マネーちゃんの胃が死ぬ

・おいたわしや…マネ上…


『えっ、私そんなおねっ…マネージャーさんに迷惑かけ…て、るかもしれない、どうしよう反論できない。』


・マネーちゃんはきちんと休んで

・でもマネーちゃんがママって知れたから、マネママには新衣装とか頑張って欲しい欲もある

・そうか、新衣装依頼するときはマネーちゃんにお願いすることになるのか

・マネーちゃんチャット打ってて草

・推しの為なら全力で働かせていただく所存w

・お前もドリみんだったのか…マネーちゃん…

・むしろ我々より先より推してるまであるから先輩やぞ


 まったく、おねえちゃんは…。


 おねえちゃん打ったチャットを見ながらつい口がほころぶ、本当におねえちゃんは私が大好きなんだから、それ以上に私もおねえちゃんが大好きだけどね。


『新衣装のあれこれとかはマネージャーさんと色々と相談して決めるね?マネージャーさんもいろいろと忙しいだろうから皆もあせらず待っていて欲しいなって思います。』


・了ー解ー

・マネーちゃんが体壊したらEspiReVE終るまであるからな、大黒柱過ぎる

・おっ配信してないけどプリムラちゃんがログインしてきた

・初コラボ始まるのかな?


 コメント欄を見ながらゲーム内で作業しているとどうやらプリムラちゃんがログインしてきたようで、コラボ、といった文字がちらほら見える。


 そういえばと思いおねえちゃんにコラボの予定についてLineで聞いてみる、するとちょっとしてからガワはもうできてるから2人の予定次第、コラボについてはもう言っちゃってもいいよ、との事だったのでここで告知させてもらおう


『さっきコメント欄に少し見えたけど近々プリムラちゃんとちゃんとした形でコラボの予定があるよ。予定が決まったらその時に改めて告知するからみんな期待して待っててね。』


・コラボマジか!

・マナプリ供給ありがてぇ

・コラボ待ち遠しいですねぇ

・なにやるの?


『何をやるかは秘密!当日を楽しみにしててね?皆が楽しく見れるように色々考えてはいるからね。』


・いやー楽しみだなー

・楽しみ過ぎて寿命伸びたわ

・お歌配信もあったら助かる


 コラボ配信、皆楽しみにしてくれるみたいで嬉しい、これはいろいろ考えておかないとね。


 そう思い、雑談しながらゲームをしながら自分自身もコラボが待ち遠しくなっていた。


 なお、この後も緑の匠に殺され再びの全ロスの目にあい、今度はプリムラちゃんに助けてもらうことになるのだった。全ロスのゆめのマナって言った人誰!?

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