第13話 希望と配信と過去

『皆様、高天原プロダクション所属、ヴァーチャル世界から希望の光をあなたに、アイドルVtuberのプリムラ・モンステラですわ。今日は初めてのゲーム配信をやっていきたいと思います。』


・お、ゲーム配信!何やるんだろ、たのしみー

・プリムラちゃんって結構ゲームやるの?

・かわいい系のゲームとか好きそう


 お休みの日からしばらく、しるべさんから配信OKのゲームの中から今日配信するゲームを選び、リスナーの皆様の前で本日プレイすることに致しました。


 そのゲームとは。


『ゲームは少しだけといった感じです、子供のころは全然やらなかったので、そして今日やるゲームは…はいこれです、この悪魔村を今日プレイしていこうと思っておりますわ。』


・ええぇ…

・意外過ぎるラインナップが来た

・プリムラちゃんこれかなり高難易度のゲームだけど大丈夫?

・プリムラちゃんのキレ芸が見れる?


『難しいゲームなんですか?とある方からおすすめされたものの中から選んだのですが…。』


 裕司さんからおすすめされたゲームの一つだったのだが、まずかっただろうか?とりあえずやってみなければわからないのでやってみようかしら。


・そのおすすめした人性格悪くない?

・初ゲーム配信でこれは玄人過ぎる

・今日のゲーム配信何時間かかるかな…

・しかも初代だからなぁ


『それではやっていきましょうか…レトロな感じがするゲームですね、最近の綺麗なグラフィックのゲームじゃないのは新鮮です。』


 裕司さんもこういうゲームをやって育ったでしょうか?…いえあの方もなかなか厳しい家の出ですから、あまりこういうのはやったことがないと思うのですけれど。


『姫を助けるゲームなんですのね、これが攻撃でこれがジャンプ…うーん…妙に動きに癖がありますわね。あっ。」


・あっ

・ゲーム初心者に勧めるゲームじゃねえんだよなぁ

・この調子だとクリア無理臭いが

・もうダメージ食らったが


 ダメージを受けると鎧が脱げるんですわね、なるほど、学びを得ましたわ、それで、あっ。


・あっ

・足元から湧くゾンビさん…

・洗礼

・レトロゲーはこれだから…


『やられてしまいましたね、うーん…このゲーム大変難しそうですけれど…いえ、難しいからこそやりがいを感じますわね!頑張ってクリアを目指しましょう!』


・アカン、この娘マナちゃんの鬼畜トレーニングをこなすやべーやつだった

・ここで負けず嫌い根性見せなくてええんよ

・皆(耐久の)覚悟はできたか?俺は出来てる

・ほな、未届けの為に食料仕入れとくかぁ


 わたくしは結愛さんのカス試練すら乗り越えたんですもの、これくらいの試練絶対に乗り越えて見せますわ!


 ☆ ☆ ☆


『うーん…辛いのはやはりゲームオーバーになった時に最初に戻されることですわよね…それがなければ時間短縮になるのですが…』


・そしてそろそろ11時間たつのだが…

・3,4時間で音を上げると思ってた

・そろそろ休憩しない?

・枠変えないとアーカイブ途切れちゃうしね


 あら?もうそんなに時間がたっていましたか、それと何かスマホに通知がいっぱい来ておりますね。


『マネージャーさんから食事休憩をとれと連絡をいただきましたので枠を変えるついでに少し休憩に致しましょう。続きは20時から始めます。続きも視聴される方はよろしくお願い致しますわ。』


・マネちゃん…ありがとう…ありがとう…

・俺らもこれで休憩が出来るってもんよ

・ここまで残った勇士達だ、面構えが違う

・おつかれ、また20時に


 取り合和えず配信を終わらせ、一息を付く、そうしたらスマホの通知音が鳴ったので確認すると、どうやらしるべさんがお夕飯を作ってくださったとの事でした。


 わたくしの分ももう用意してあるとの事だったので、ありがたくお呼ばれになると致しましょう。


 ★ ★ ★


『さて、皆様続きをやっていきますわ、実は先ほどマネージャーさんからお夕飯に誘っていただきましてそれをいただいていた時に、ゲームオーバーの続きからプレイする方法を教えていただいたので、それを使いながらプレイしていくことに致します。』


・有能マネちゃん助かる

・ありがとう…マネちゃん…ありがとう

・マナちゃんと同じマネージャーさんなんだっけ?

・マナちゃんがめっちゃマネーちゃんの作るご飯はおいしいんだよって鼻高々にさせてたな


『はい、マナさんと同じマネージャーさんですわね、いつもお世話になっておりまして大変助かっております。最近はわたくしお料理の勉強もさせていただいているので、とても孫家出来る方ですよ。』


 本当にしるべさんには助けられています、日常的にも仕事も何でもこなしてくださるので少々申し訳ないのですが、あなたたちのサポートをするのが私の仕事だからね、と言われてしまうと何も言えません。


・という事はマナちゃんのマネっていうよりEspoiReVEのマネージャーっていう方が正しいのか

・問題児2人を華麗にサポートするマネージャーの鑑

・しかもマナちゃんの姉って事はおそらくまだ結構若いぞ

・仕事が出来て炊事家事万能なおねえちゃんとかワイも欲しい


『ふふ、確かに姉がいるなら、マネージャーさんのような方が思い浮かびますわね。優しくて頼りになる方ですし。』


 わたくしにも兄妹はいました、いましたが今は距離を取っている形になりますので、ここ数年顔を合わせておりません、一応何度か会おうとは言われたのですが、まだ会う勇気が出ません…。


 それはそうとゲームの続きを致しましょう、先ほど教えていただいた方法を使いどんどん先を進んでいく、続きからできるなら全然効率が違う、あまり同じ失敗はしないタイプではあるので今までの限界だった場所よりも進み、だんだんと終わりに近付いてきたようです。


・ようやっと最終ステージ…

・まだ視聴者1000人いるのがすげえわ

・現在このゲーム始めてからの総配信時間16時間突破…

・というか今日初めてからの初心者のはずなのにかなり動きが良くなってる

・流石にRTA勢と比べたらあれだけど、普通に上手いプレイヤーレベル

・数日やったらRTA勢になってそう


『RTA…リアルタイムアタックの略称でしたか、流石にそう言った方々に並ぶのは無理だと思いますが、上手くなったと褒められるのは嬉しいですわね。』


 思わず口がほころぶ、年月が経ってもわたくしは人から褒められるのが大好きのようです、だから褒められるとつい頑張ってしまうのですよね。


・と言ってる間にボスか…

・大丈夫ここまでこれたんだからボスもきっとやれる!

・頑張れ!16時間を共にした俺も応援してるぞ!

・ここまで怒ったのは性格悪そうな罠にかかった時のむすっとした顔くらいで罵声も台パンもない淑女の鑑

・16時間ニキすげえわ

・いっけえぇぇぇえ


『皆様、応援ありがとうございます。出来ればこのままクリアしたいところですが…まずは敵の動きをよく見て攻略していきましょうか。』


 こういったレトロゲーによくある容量の限界というものがあり、つまりは多少のランダム性はあってもパターンというのはそこまで複雑ではない、つまりそれを見切ってしまえばクリアは難しくない。


『なるほど、おおよそ理解致しましたわ、これを…こう回避して、ここ!よし!いいですわこの調子でいきましょう!。』


・マジで上手い

・初見攻略いけそうじゃね

・丁寧にパターン観察してるから動きに無駄が少ない

・あまりゲームやってなくてでこれってプリムラちゃんゲーマーとしての素質あるよ


 そういってゆっくりと攻略していたのですが、長時間配信の疲れが出ていたのか、手元が狂いミスをしてしまいました。くっ…ここで負けたくはありませんわ。


『ふぅ…落ち着いて、気を取り直しましょう、焦ってはいけません、焦ってミスをしてしまえば負けてしまいますからね。』


・お嬢はこれが強い

・メンタルお化けだからすぐ冷静になれるの強い

・でもこれならいけるで

・ラストや!いけるで!


 冷静に敵の動きを読みカウンターを仕掛ける、そうしてボスを撃破いたしました、最後の最後で初見クリア達成致しましたわ。


・きたぁぁぁぁぁ

・おめでとぉぉぉ

・17時間の激闘…素晴らしいものを見た

・もう17時間か…長かったような短かったような

・いや長いやろ


 視聴者も歓声を上げてくれています、17時間お付き合いしてくれた方もいるようでありがたい限りです。


『皆様、クリアまで視聴いただきありがとうございますわ、流石に最後は疲れが出ていたようで操作ミスが出てしまいましたがクリアできて本当に良かったです。応援していただいた方々ありがとうございます。』


・初ゲーム配信で17時間はかなりの怪物具合

・配信者魂を感じた

・最初は無理だと思っていてすみませんでした…

・根性に感動いたしましたチャンネル登録しました


 こういうリスナーの皆様と分かち合う達成感は良いものですね。


 そう思ってゲームのボタンを押した瞬間。


 もはや聞きなれたBGMが、あら?


・あっ

・もう一回遊べるどん…?

・見なかったことにしよう

・あークリアめでたいなー(棒)


 …なるほどそういう仕様なのですね、クリアしたと思えばもう一周と、なかなかやってくれるではありませんか、ですが流石に…裕司さんからも謝るからそろそろ配信やめようという通知が何故かきておりましたのでやめることにしましょう。


『えー…流石にこれ以上はわたくしも皆様も身体の方が限界になってしまいそうなのでここで終わりに致しましょう、良ければチャンネル登録、高評価もいただけるとありがたいですわ。』


・ホッ(安堵)

・お嬢ならもう一周っていうかもしれないと恐怖を感じたわ

・長時間配信お疲れ様ー

・高評価了解

・おつかれー


『お疲れさまでした。皆様それでは次の配信までごきげんよう。』


 そういって配信を終わらせようと思い、コメント欄を見たわたくしの目に目を疑うものが写りました。


・麗明院 武:お疲れ様、ゆっくり休んでね。


 まさか実名でとは思いましたが、あの方はそういった事をあまり気にしなさそうだとも思いました。


 とりあえず配信を切り、虚空を眺めながらわたくしは、厄介な人に見つかってしまったなぁと、そう思いました。

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