第12話 夢と希望と私と日常
「コラボ配信…ですか?」
「そう、同箱の同期だし、神目さんもプリムラとして正常稼働を始めたしね、普段と違う姿、同期とのやり取りが見たいリスナーもいるからね、そういった層へのある意味ファンサービスみたいなものかな。」
本日、お互いに配信もなく実質的な休みとして我が家でくつろぎタイム中の私と結愛と神目さん、この間の配信も好評で入りはよかったと感じた。
高天原V部門がようやくの正常稼働を迎え、私たちはやらなければならないことが大幅に増えた、まぁ当然の事なんだけどね、今までプリムラさんがお休みしている状態で実質私は結愛の面倒を見ていればよかったのだ。
プリムラ復帰にあたってそちらの方の仕事も増えることになった私はまずリスナーのニーズにこたえる形で、企画を立てることにした。
配信上でプリムラもマナもお互い仲が良いことを発信してはいるものの、実際にそういう姿を配信で見たいと感じるものだ、その声に応えつつ良いシーンがあれば切り抜きを作りそこから新規を呼び込むことも考えてはいる。
ちなみに今のところ非公式の切り抜き師はいるものの数が少ないので、公式切り抜きとして私が良さげなシーンを切り抜いている、まぁ今のところはゆめのマナやらかし集だけど。
「本当は同箱じゃなくて別箱の方が新規の取り込みとしては良いんだけど、現状コラボ先としての旨みが高天原は小さいのよ、高天原にはメリットがあってもあちらからすれば大したものではない、だからあちらからしたらコラボしたいとは思えないはずよ。」
まずこれが一つ、これから人気が出れば別箱とのコラボも行けると思うが、今はまだその時ではない、ちなみに別箱とは高天原内のVではない配信者の事だ、別企業や個人勢などの事ね。
「そしてもう一つ、高天原のVがアイドルで売り出している事、実はこれはかなり足かせになるの、神目さんは分かるだろうけどアイドルに男の影がちらつくのを嫌がる視聴者はいる、だから男性配信者とのコラボ配信は避けなきゃいけなくなるの。」
私は気にしないほうだけれど、そういった人もいるにはいる、その点実はプリムラは男性Vとコラボしても炎上しにくいのではないかと見ている、理由はいわゆるそういった人種はすでに撲滅されているからだ。
「まぁ、そうだよねぇ、私もアイドル時代あったなぁ、お仕事の撮影とかで男性俳優の人とちょっと距離が近くなっただけで週刊誌に取り上げられたりしたよ、アイドルユメ、だれだれと熱愛疑惑!?って。」
過去の事を思い出した結愛はテーブルにだらけた様子でへばりつきながら、うえぇーと嫌なことを思い出したような声を上げる。お行儀が悪いわよ。
「結愛さんにはそういった事もありうるかもしれませんが、わたくしはどうなのでしょう?男性の影も見えておりますし、結愛さんよりはマシなのではないでしょうか?」
「確かにそれはそうなんだけど、避けるに越したことはないよ、あちこっちとコラボしてとっかえひっかえ尻軽だーなんて印象も持たれたくはないし。」
「し…尻軽……確かにそう言われるのは嫌ですわ…。」
この一途な神目さんからしたら考えられない事だろう、しかし世間はそう思わないかも知れない、SNSなどで発信されたらアウトだ、ネット社会は怖い。
「んー…でもさ、いつかは別の箱とコラボは考えてるんだよね?そうなると相手も女の子とかになるのかな?」
「それは相手にもよるかな、まずい発言をしそうな相手は避けたいし、オフコラボなんてなったら口が軽い相手も避けたいところだし、そういったところは私がいろいろ探しているから二人は気にしなくていいよ、この子とコラボしたいっていうのが将来的にあったら私に報告はしてほしいかなとは思うけれど。」
そういった、営業のような仕事や添削作業は全部私の仕事だしね、二人にはのびのびと配信者兼アイドルをやって欲しいのだ、そういった姿が私にとっては人生を楽しく過ごすエネルギーとなる。
神目さんは、お茶請けのクッキーをかじりながらおいしそうに頬を緩めている、こういった姿を見ていると配信て語ったような暗い過去を感じさせないのだけれど、まぁ彼女にもいろいろあったんだろうな。
そんなことを考えていたらお茶を飲み一息ついていた神目さんが口を開いた。
「それで、コラボ、と言いましても何をすればいいのでしょう、2人で何かをする、というのは分かるのですが。」
「ゲームでも二人で雑談でも何でもいいんだけどね、まぁ意外性があった方が配信受けはあるから、普通の配信者がやらないような事とかだったら面白そうだね。」
「ほかの配信者がやらないようなことかぁ…。」
結愛は何か考えているような表情だ、神目さんも何か考えているように見えるし今のうちに昼食の準備でもしよう。
「それじゃそろそろ私はお昼を作るから、神目さんの分も作るから食べて行ってね?」
「あ…はい、それではお呼ばれになります。ありがとうございます、しるべさん。」
結愛は、まだむむむと先ほどの事を考えているようだ、ご飯が出来れば戻ってくるだろうし、気にしないでおこう。
☆ ☆ ☆
お腹を満たしてしばらく、食後のお茶を飲みながらまったりタイムである。
神目さんは食事がすむと、いろいろと料理の感想と味付けについて色々と聞いてくる、こう見えて神目さん料理は結構できる、将来の旦那様の胃袋を掴むため日々の研鑽は欠かせないんだろう、社長には後で合掌しておく。
逆に、結愛の方は料理どころが家事も駄目である、本人も向いていないことを自覚しているため基本的には私に頼る傾向にある、どんどん頼って欲しい、お世話し甲斐がある。
「おねえちゃん、ゆめのマナとプリムラちゃんの3Dモデルって今どうなってるのかなーって、聞いてもいい?」
お腹を満たし、ふにゃふにゃになっていた結愛からそんな質問が向けられる、ふむ?3Dモデルか。
「3Dモデルは現在急遽開発中だよ、流石にこの間のライブで出したプロトタイプを完成形で出すわけにはいかないし、そう遠くないうちにVersion1として完成品が出来る予定。」
あれは本当に不覚だった、この娘達のマネージャーとしてああいう失態は今後無くさなければならない、推しの為に全力をかけなければ。
「えっ?あの、ライブからそう時間がたっていないと思うのですが…もう完成が近いほどの仕上がりになりましたの?」
「うん、うちの開発チームもあれは不満だったみたいでね、原形は出来てたし完成まで頑張ってくれてるから、たぶん来週には出せるんじゃないかな?もちろん今後改善策とか衣装差分とかで改良はあるけどね。」
本当に開発チームは悔しそうだった、あそこではああするしかなかったとはいえ、半端なものを使うしかなかった事で私は彼らに頭を上げ謝罪したのだが、しるべさんは悪くないです、あの場ではあれが最善でしたと言ってくれた。彼らもあれが苦肉の策であることをわかってくれていたようで、受け入れてくれた。
とはいえ、半端なままなのもプライドが許さないようで、ライブの日から全力で妥協もしない出来栄えのものを製作中なのだ、もう9割がた出来ていて、お披露目もそう遠くないはず。
「じゃあさ、そのコラボ配信の時に3Dをお披露目したいって思うんだけどいいかな?それで、何か体を使ったゲームが出来ればベストだと思うんだけど。」
「なるほど、アイドルは見られるのがお仕事ですからね、わたくし身体を動かすゲームでやりたいものがありますわ。」
悪くない、2人のモデルを同時に公開するのも手間が省けていいし、そのモデルを使ってゲームをするというのも宣伝効果としていいと思う、最高なのはそれでライブをすることだが…配信ミニライブくらいならいいかな?
「いいんじゃない?案自体は悪くないと思うし社長もOK出すと思う、あっ、神目さんやりたいゲームがあるならそのゲーム教えてもらっていいかな?配信OKのゲームならいいけどそうじゃないならこっちで手を回しておく必要があるからね。」
神目さんは分かりましたわ、というと配信でやりたいと思っているゲームについて色々教えてくれた、思ったよりあるな…それに結構鬼畜ゲーもあるけど、この娘結構配信者適正あるなやっぱり。
話もまとまったところで午後もまったりと過ごす。
二人が心を休め、リラックスする姿を見せる休日の午後、私もその姿を見て癒されながら休暇を楽しむのであった。
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