第3話 夢

俺は学校の廊下に立っていた。

足を一歩踏み出す。

するとふわりとした感触とともに滑らかに視点が前進する。

ちらりと横を見てみれば鼠色の曇り空と、校庭が見える。

校庭では同級生たちがサッカーでもしているようで薄暗い空気とは対照的にやけに騒がしかった。

俺は冷たい廊下に立って、ただその光景を眺めていた。

そんなふうにしていると、後ろの教室の扉がコンコンとたたかれた。


不審に思いつつもその扉を開けて教室に入る。

教室の中は無人で、電気さえもついていなかった。

俺はなんとなく、自分の席の位置に座った。

数週間前まで毎日のように見ていた風景だ。


静かな教室に俺はぽつんと独りで座っていた。

しばらくすると、ガタンと音がして教室の扉が開いた。

そうしてチョークが独りでに動き出し、カツンカツンという音を響かせながら黒板にも字を書く。


人が見えないだけで、これは俺にとっての日常そのものだった。

ただ、座ってじっと時間が過ぎていくのを待つ。


ふと、自分の手元を見るとノートがおいてあった。

いつの間に現れたのかはわからないが、自分の使っているよく見慣れたノートだ。

普段、教科の書いてある場所はマジックで黒く塗りつぶされている。

ノートをめくってみるとそこには、大きさも向きも不揃いな"嫌いだ"という文字で埋められていた。

俺は見てはいけないものでも見たように慌てて、ノートを閉じて両手で思いっきり押さえつけた。


そうしていると不意に眠気に襲われて、目を閉じて開いたらそこには見慣れた天井があった。

入り口の方には食事が置いてある。


深く息をはくと、ゆっくりと体を起こして食事を取りに行く。


 何も変わっていない。

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