第3話 秘めたる覚悟
その後、
キュリオスの
「これは、いったい……?」
「はい団長。町で事情を説明したところ、この者たちが直接ピザを振る舞いたいと」
従騎士に
「いやぁ、なんでも最後の決戦に挑まれるということで。ワシらも家で震えるくらいなら、いっそ皆様の応援をさせていただきたいと思いましてね!」
男性の背後では続々と、馬車から野菜の
「ふっ。これは勝利するしかないな」
「だなっ! まっ、大盗賊が二人も加わりゃ楽勝よ!」
「そうだな……。わかった、諸君らの心遣いに感謝する!」
キュリオスは街の者らに対し、深々と頭を下げる。
そうしている間にも作業は進み、土魔法によって創られた即席の
◇ ◇ ◇
やがて野営地が夕暮れに包まれる頃になると、辺りには食欲をそそるピザの香りが漂いはじめる。すると焼きあがった小さなピザを手に、キュリオスは満面の笑みで早速
「おお、
見た目は不規則、食材はシンプルで熟成も不十分ではあるが、その味は〝
「ハッ! 俺様は勝つ! そんで、世界が終わる日を見届けてやるぜ!」
「ええ、そうね。だって、こんな展開は一度も……。これほど美味しい料理も、無礼な盗賊も出てまいりませんでしたもの」
「けっ、一言余計だぜ! せっかくのイイ女なのによ」
グリードはたっぷりとソースの載ったピザを口に放り込み、おどけた動作と共に口元をつり上げてみせる。そんな彼を見たレクシィは口元を押さえ、
◇ ◇ ◇
「む、
切り分けられたピザを片手に、空を見上げていたアクセルが
「おっ、そろそろ祭りか? あらよっ、いただきだぜ!」
彼の元へ近づいてきたグリードが、アクセルの手からピザを奪い取る。
そしてそれを迷いなく、自らの口へと押し込んだ。
「ふっ。
「――ぶはぁ! おうよ! 何せ盗みにかけては、俺様の方が上だからな!」
トマトの香る息を
「ああ、わかっている。期待しているぞ、相棒」
「ハッ、今さら認めやがって! 任せとけ、相棒!」
野営地の中央ではキュリオスが皆を招集し、最後の号令を掛けている。
アクセルとグリードも姿勢を正し、彼らの中へと加わった。
◇ ◇ ◇
「諸君! 我らはこれより、決戦の地へと
「皆様。
キュリオスとレクシィの言葉に
それと時を同じくして、大桜の根元から幹に沿って空間が裂け、そこに虹色に輝くゲートが出現した。
「ついにきたな。おい、団長さんよ。こん中に飛び込んで、好きなだけ暴れりゃいいのか?」
「ああ、そうだ。どうかレクシィ殿を
「ここへ入れば、もう引き返すことは不可能です。本当によろしいのですか?」
「ふっ、今さら迷いなど無いさ。――さっ、いくか」
アクセルは肩を慣らしながら、その言葉通りに迷いなくゲートの中へと入ってゆく。続いて相棒の背中を追い、グリードも勢いよく光の中へと飛び込んだ。
「よし! 彼らに
騎士団長キュリオスを先頭に、騎士らも決戦の地へとなだれ込んでゆく――。
そんな勇ましい仲間たちの姿を見送ったレクシィは、ひとり静かに
大学を卒業後、名誉ある評議会の一員となれたものの、恋人であるヴァルナスの
そしてレクシィも〝ダークエルフ族〟と
その後、二人は世界から隠れるかのように各地を転々とし、レクシィは魔法の教師として、ヴァルナスは持ち前の戦闘力の高さで
――しかし、強すぎる魔族の血はヴァルナスを
「ヴァル……。今度こそ、
レクシィは強い覚悟を誓い、虹色に輝くゲートを
そして今、ここで〝最後の最終決戦〟の幕が上がることとなった。
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