4章

13話 縁結びの神社の巫女

 そうの『いつでもいらっしゃい』という言葉にあまえることにした。元々流れで来るつもりで、かれもそれを分かった上で応えたのだろう。その上で、『足、おそいから』と先に行くよううながされた。

「真面目なそうさんでも、ゆいちゃんに何かあるのは知ってるんだ……」

 はなれてから、ぽつりとつぶやいた。期待しすぎるのは良くない、というのは分かっている。ようすけるまいにもきんちょうするというのに、わらにもすがる思いで、その足を速めた。

 道が分かりやすいのもあるが、スマホを見るゆうもない。そうしている間に、道路をはさんで目の前に神社が見え、立ち止まった。

「うぅ……」

 神社の前の横断歩道で信号待ちをする時間が、いやに長い。不安すぎて、頭の中でぐるぐると思考が落ち着かない。その横で、しボタンの電子音が鳴る。

「あ、もしかして怜央れお?」

「えっ」

 歩行者用のしボタンをし忘れていたのに気付いて真っ赤になり、そしてその声の主と、その後ろのグループにおどろく。

「あーっ、やっぱり怜央れおだ! 久しぶり!」

 長身の女性と、怜央れおと同じくらいのにゅうそうな女性、ポニーテールの活発な女性。そして。

「あっ……お久しぶりです。怜央れおさん」

「久しぶり……」

 会いたかったその人物、森宮ゆいがいた。


 声をけたのは、そうふたの姉であるゆう。そしてべったりくっついているのは、そのガールフレンド、らしい。そして、そうと共に世話になっていた、かれの妻であるもいた。

 女性同士、ということもあり、ようすけへの気持ちをゆうに打ち明けたこともある。当時のゆうは『アイツねぇ……怜央れおも分かってる通りだと思うわよ』とそっちょくに伝えてくれた通り、あの告白はダメ元ではあった。となりで、が心配そうにしていて、告白後にに長時間話を聞いてもらったことは、よく覚えていた。

 それは、かのじょたちもそうであったようで。

「……神社やフォレスタじゃない方がいい?」

「はい……お願いします」

 その提案に、怜央れおは深く頭を下げた。ゆうがスマホをさわり、短い電話の後。「じゃ、ファミレスに移動しましょ。みんなドリンクバーでいい?」

「さんせーい!」

はなは口止め料で何かおごるわよ」

「はーい」

 満足そうにゆうきつくガールフレンドこと、はなを慣れた手つきでがしながら、『あっちの横断歩道』と指さすゆうに、一行はついて行った。


 一方で。

「後で、話を……聞くのは、止めて、おこう」

 遠目に見えた一行をそっと見送り、そうは再び歩を進めた。

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