12話 白玉ぜんざい

 メインを食べ終えてから少し待って、デザートの白玉ぜんざいが出てきた。

「はーい、白玉ぜんざいです。あと、ついでにサービスで緑茶ね」

「あ、ありがとう」

「……」

 横ではそうが少しうれしそうにうつわを受け取っていた。マイペースに食べ始めるそうに声をけづらく思い、代わりにようすけの方を見る。『器用だなあ』と、女子としては何だか負けた気分になるのだけれども、『わいい』を追い求めるそんなようすけだからこそかれるのだ。

「どうしたの? 食べちゃって」

「あ、う、うんっ……」

 怜央れおあせり始めていた。また顔に出たのではないか。そろそろ平静をよそおうにも無理があるかもしれない。怜央れおは、それをすように木のスプーンを持って、ぜんざいに手を付ける。

「……しい」

 そうつぶやきながら、そうを見る。昔も、けんこそしていたけれど、勝手知ったる仲という印象だった二人。そんなそうを頼ってようすけと近づきたいが、まずは目の前のスイーツを食べないことには始まらない。少し上の空になりつつも、白玉ぜんざいを食べ進めるのであった。


 食べ終え、だんしょうののち。そうが席を立った。

「じゃあ、神社に、もどるね」

「うん、ありがとねー」

 準備を始めないと。怜央れおはいそいそと片付けを始めた。と、そこにようすけが話しかけてきた。

「それでさ、怜央れお――」

怜央れお、時間はだいじょうぶか?」

 話の続きをしようとしたようすけに、別の声がかかる。顔を向けると、はついてこちらに声をけていた。

「あっ、ホントだ。ごめん、ようすけ。次、別の用事があって!」

「あぁ、そっか。ごめんね、引き留めて」

 そうの分、そして怜央れおの分と食うつわを下げるようすけと軽くこぶしを合わせると、ぶくろの下にかくれた骨張った手を感じて、怜央れおが少し赤くなった。

 その後、そうおくれて会計を済ませて、レジに立ったはつにおをすると『そうは歩くのはゆっくりだからな』と助言ももらい、『なんかすみません』と苦笑いしながら店を出た。


「あの、そうさん」

「……ん。あ、怜央れお

 追いついて声をかけ、数秒迷って、ようやく出した言葉が。

「あのっ……今日はごちそうさまでした。気にけて頂いた、みたいで」

「ああ……」

 そうほほみ、それに応える。

「――いつでも、もりみや神社に、いらっしゃい。ぼく以外にも、相談に乗れる人は、いるし」

 その言葉に、前のめり気味にたずねてみた。

ゆいちゃんも、お元気ですか」

「うん。会えるかは、人によって、ちがうみたいだけど」

 えんむすびの神社の、『会ってあくしゅが出来るとごやくがある』といううわさがあった巫女みこ。そんなうわさでも、あわい期待にすがりたいのだった。

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