11話 お昼休み

「わたしもご飯食べるーっ」

 よごれないようにとパンツスタイルにえてきたらしいようすけが、ストンととなりすわった。そのタイミングで、料理がカウンターに置かれた。

「はーい、『ハンバーグと春野菜の付け合わせ』です」

「あっ、美月のしいからぜひぜひ」

 とつぜんながんできた情報量に怜央れおいっしゅん固まり、『イ、イタダキマス』とカタコトになった。それに周囲の何名かは苦笑いをしていた。

 見たことはあるのに、パンツスタイルにも思わずドキドキしてしまう。細身かと思えば、あしこしもしっかりしている……というのを、来店時のようすけを思い出して、食べながら上の空になる。


 と、そこに紙ナプキンで口元をぬぐわれた。

「――?!」

「紙ナプキン、置いとくね。お母さん、こっちは捨ててもらって良い?」

「ああ」

 我に返り、また固まっていた怜央れおの思考がもどってくるまでに数秒かかった。『友達』で居たときのこのきょ感の近さも、変わらず心臓に悪い。気を許してくれているのだと分かっては居る。

「(――でも、それは『友達』として……)」

 忘れようとしていた考えが頭の中に満ちて、怜央れおの表情が少しくもった。少し食べるペースを速めて、おひやを少しふくんでむ。

 ――カランカラン……。

 そこに、ベルの音が届き、くと、そうが店をおとずれていた。手の空いていた京子がすぐ近づくと、注文を取ってじゅんに伝えた。いつも、コーヒーから先に出すのが、そうの決まった流れだからだ。

そう、昼は?」

「まだです」

「じゃあ、何か決めておいてくれ」

 そううなずき、またこちらにもしゃくをし、京子に元の席をゆずられてすわった。怜央れおの横からひょっこりと顔を出して、ようすけたずねる。

「今日は1人?」

は、ゆいたちと、食べに」

 スイーツがしいレストランに行く、という妹の提案に、じょせいじんを連れて向かったらしい。内心『いいなぁ』と思った怜央れおだったが、この昼食を食べに来たからには、食後のデザートも食べたいのだ。

「『こう野菜ソースのチキンステーキ』で」

 メニューをながめていたそうが注文をし、チラリと怜央れおを横目で見てページをさらにめくる。

めずらし」

 それを横で見てつぶやいた京子に、そうはこっそり人差し指を口元に当てると、京子も何かを察して親指をこっそり上げてうなずいた。

ようすけ……白玉ぜんざい、いける?」

「ん、おっけー。怜央れおもいる?」

「え、あっ、うん」

 怜央れおは急に聞かれてそくとうし、じょうきょうめないままそうと顔を見合わせる。が、そうは『常連の、裏メニュー。おごるよ』とだけ答えて、話しかけてきた京子の話に付き合い始めた。

 首をかしげたあと、『まずは主食を食べてからこっそり聞いてみよう』と決めて、残りを食べ始めた。

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