7話 今の答え

 ようすけが、そうに問いかけた。

「……本音で、良いんだけどさ」

「ん」

 少しためってから、ようすけは続ける。

「やっぱこう、男の身体だからアレかなって……」

 その言葉を予想していなかったそうが、飲んでいたコーヒーをした。


「ご、ごめん。お母さん、タオル」

 そうは、苦笑いしながらタオルを持ってきたはつからタオルを受け取り、軽くおをすると、少し考えてから。

「…………まあ、そこは。あの子も、同じでしょ」

「うん……」

「でも、なやむのも、分かる。『わいくても、男だ』なら……分かってても、ビックリ、するだろうね」

「そう。そう思うから、どうしようって……」

「昔も、そう言ってたしね……」


 まだここまで本音で話していなかった中学生のころ、頭は良いから、とかくして聞いてみたことがある。先ほどと全く同じリアクションをされたが、気難しかった流石のそうも、しんけんようすけの表情を見て『今できる回答』をしてくれた。昔の回答はあいまいだったが、今日はこう返してくれた。


「――とはいえ、いずれ、向き合うことになる。だけど、少しずつで、いい」

「……だよね。昔は、難しかったからけてたけど」

 そうらしい、ぐな回答。その後に。

「まあ、その……コスプレとか、水着とかの、えも」

「あっ、……あー」

 少し言いよどみながら『気にかかるものは、挙げておきたい』とそうの言。

「でもまあ……コスプレ、やってくれるかなあ、なんて」

「それはそれで、良いんじゃ、ない?」

「……うん、ありがと」

「ん」


 森宮神社のあとぎのそうは、れんあいについて難しい質問も聞かれると言っていた。せめて自分なりの、そしてこれからの神社としてずかしくない答えを、毎日のように考えているらしい。今日のような急な展開にも付き合ってくれることに、ようすけはただただ感謝の気持ちで一ぱいだった。


「……だれかに、指輪をわたすときもあるのかな」

 そうつぶやきながら、そうの左手を見る。すうげつ前にけっこんしたそうは、こんやくしゃから妻となったを今でも連れてくることもある。いつか来るかもしれない未来の、自分のよそおいも考える。その姿はまだ、ぼんやりとしている。

 そんなようすけの言葉を聞いていたそうは、こう返してきた。

「プロポーズは、コーヒーにしたら?」

―― そうの言葉に、ようすけうれしそうに『そうだね』とうなずいた。

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