2章

5話 もちろんバレてます

 一方、怜央れおが退店した後の『フォレスタ』のカウンターでは。

「……あー、ビックリしたあ……」

「あの子の事となると、ようすけきするな」

「ちょっ、それは……!」

 カウンターに顔をせていたようすけを母のはついじると、顔を真っ赤にしていた。そんなむすに、『ああ、悪い』とあやまっておいた。少しふてくされたような顔をして、ようすけがぼやく。

「……別にあのままえんでも良かったんだけど」

「本人が聞いたら傷つくぞ」

「分かってる。いやではなかったから……」

 以前、えんむすびの神様『えにしさま』をまつもりみや神社の周りで様々なカップルが誕生した、ともりみや家やおとずれる客とも話をしたので、ようすけ達にもそういう時期がいつか来るだろう、とは思っていた。しかし、めずらしくアンニュイな様子のようすけに、はつは『これは「えにしさま」もしんちようだろうな』と独り言を言った。

 はつはそんなむすを見て、昔の自分を思い出した。きなかついい服を着ただけなのに「キャラ」を期待されて、告白を待つしか出来なかったことを。ようすけは『自分とは訳がちがう』とは思いながらも、むすの「の部分」を知るからこそ、思うところはあった。


 考えをめぐらせたあと、はつはカウンターしにようすけの前に立つ。

ようすけ

「ん……?」

 顔を起こしたようすけに、メニューを差し出す。

「何か小腹に入れておけ。空腹になやごとはキツいぞ」

 こしに手を当ててやさしく声をけると、少しだけがおもどった。

「……うん、そうする」

「『なやごとがおの大敵』って自分の言葉、大切にしないとな」

「うん、ありがと。――じゃあ、アップルパイお願い」

「分かった」

 冷蔵庫からを取り出して、オーブンのスイッチを入れた。それから向き直って、ようすけが落ち着いたのを見計らって、話を続ける。

「自分でフった手前、言いづらい、か」

「う……うん、そうなん、だよね」

 ぴく、とようすけの指先がふるえたのを見て『相当不安になってるな』と思い、はつなりの助け船を出そうと話しかけた。

「でも、それは――」

 すると、

「――自分で答えを出さないといけない、だよね」

 ようすけの口から、すぐに返事が返ってきた。

 散々口うるさく言ってきた、『自分のきにしたいなら、自分で答えを出して責任を持ちなさい』という教育方針だ。

「……うん、そういう事だ。なやみを言うだけ言って、整理するくらいなら手伝う」

「言えるはんで、ね」

「それで構わない」

 加えて、『案外、他人に話しているうちに自己解決できるものだ』とも教えているが、こいごころは、なおさら自分で決めないとこうかいする。そう思うからこそ、親心としてそう伝えている。 

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