第13話 義理の妹は結婚できるんだよ
「お兄ちゃん、今日はアニソン歌おうよ!」
「お、いいな。なんにしようかな」
「それじゃ私はお姉ちゃんとプ〇キ○ア歌う!、ほらお姉ちゃんもマイク持って」
「あー、えーっと、あーー」
二日続けてのカラオケだけど、日曜日は妹たちとのアニソン大会になった。昨日に比べてみんなが好きな曲を好きに歌ってくれるので気が楽だ。
昨日のカラオケも美紀ちゃんがいろいろ気を使ってくれるのはいいんだけど、気を使われ過ぎて微妙にこっちもいろいろ考えちゃうんだよな。
その点、今日は家族だけなので気を使わないでいい。
この日のカラオケは、妹たちの某大人気日曜女児向けアニメのデュエットから始まり、僕らは兄妹で新旧取り混ぜたアニソンをしばらく熱唱する。
僕の妹たち、こういうの好きだったんだな。知らなかった。
「なんか兄妹でカラオケってすごいたのしいね」
ツインテの妹、絵里萌がちょっと興奮した様子でそう言うと、黒髪ストレートロングの妹の恵梨香がうんうんと同意する。
「そうね。妹以外の家族とカラオケってちょっと新鮮。それにおにいちゃんって結構アニソン知ってるんだね」
「まあ男子高校生としてたしなむぐらいかな。でも恵梨香と絵里萌がアニソン知ってるほうが僕的にはびっくりだよ」
「このぐらいは女子高生でも一般教養だよ。お兄ちゃん」
絵里萌が言う通り、いまどきは女子高生もそうなのかもしれない。
正直、僕は美紀ちゃん以外の女の子とあんまり話をしないので一般的な女子高生をよく知らないのだ。美紀ちゃんは本は読むけどアニメはあんまり見ないし。
あるいは僕の妹たちはオタクが強めな可能性もある。そういえば恵梨香も図書室でラノベ借りてたな。まさか腐女子ってことはないよな。どうなんだろう。カラオケを歌う二人を眺める。
『しかし恵梨香も絵里萌も、こうやってみると普通の女の子だな』
どうも妹たちについて、僕は知らないことばっかりだと反省した。やっぱりもっと兄妹でコミュニケーションとっていかないといけない。
今日はいい機会だし、たまにはこうやって一緒に遊びに行くのもいいかもしれない。家族だもんな。
「二人ともアニメとか見てたんだね」
「まあね。アニメは絵里萌の方が詳しいんだけど。私は流行ってるものを教えてもらう感じ」
「へー。でも姉妹でそういうのもいいよねー」
姉の恵梨香が説明してくれたんだけど、僕はきょうだいがいなかったので、そういう友達とかちょっとうらやましいと思ってたんだよな。
美紀ちゃんはお姉ちゃんみたいな感じだったけど保護者っぽいというか、やっぱり幼馴染でもきょうだいとはちょっと違う。
そんな感じで兄妹三人で適当にアニソンを入れては歌いまくる。こういう関係性って今までなかった。やっぱり楽しいかも。
「私ちょっとお手洗い行ってきます」
恵梨香が席を立ったところで、僕らは歌い疲れたので休憩することにした。
そうだ、せっかくだし絵里萌とちょっと雑談でもしてみるか。家族でのコミュニケーションも大事だもんな。ということで。
『うーん、なに話そう……』
考えると話しにくいな。ちょっと悩んでいると、絵里萌の方から話しかけてきた。
「お兄ちゃんはアニメ結構見るの?」
「どうだろ、普通ぐらいじゃないかな。絵里萌は詳しいんだね」
「詳しいって程でもないかな。上には上がいるしね。私はちょっと齧るぐらいだから」
「ふーん」
絵里萌から会話の口火を切ってくれたおかげで助かった。
「やっぱり双子でも好き嫌いとか違ったりするの?」
「うーん、そんなに違わないけど、お姉ちゃんのほうが本をよく読むかな。あと料理も上手」
「へーなるほど」
「お姉ちゃん凝り性だからね。私はどっちかというと広く浅くだけど、でもお姉ちゃんが好きなものは私も好きだよ」
「双子らしいな」
「まあね」
絵里萌がにっこりとする。話してみると分かってくるんだけど、姉に比べて妹の絵里萌の方が話し上手なんだよな。
「それに私は夜はぐっすり寝ちゃうんだけど、お姉ちゃんは色々考えこんで寝付けないタイプ」
「そうなんだ」
うーん、絵里萌の話を聞いていると、夜中に部屋に入ってくる例の妹は恵梨香の可能性が高い気がしてきたぞ。
僕がそんなことを考えていると、突然、絵里萌が口元をニヤッとさせて聞いてきた。
「ねえお兄ちゃん、お姉ちゃんのこと好き?」
「え、そりゃ妹だから」
「いや、そういうんじゃなくて、」
絵里萌がのぞき込むような目で僕の顔を見る。
「私思うんだけど、お姉ちゃんってお兄ちゃんのこと好きなんじゃないかなって」
「えぇ!」
ツインテールの妹がいきなり会話の中に爆弾をぶち込んできた。
「だって妹じゃん」
「でも義理の妹は結婚できるんだよ」
「いやーでもさー、そういうんじゃなくない?」
「そうかなー、でもお姉ちゃん、ときどきお兄ちゃんのことをじーっと見てるんだよね」
「気のせいだろ」
妹がニヤニヤしながら僕の顔を見ている。
「お姉ちゃんには行動しないと伝わらないよって言ってるんだけどね」
「やめてくれる?」
「お姉ちゃん、そういうのしてこない?」
「いや、ないけど……」
いやまてよ、夜中に妹が部屋に忍び込んでくるのは「そういうの」だろうか。
ガチャ
防音扉が開いて一瞬外の音が大きくなった。部屋に戻って来た姉の恵梨香がちょっと不思議そうな顔をしてこっちを見ている。
「どうしたの?歌ってないの」
「いや、ちょっと休憩中」
「私もトイレ行ってくるね」
恵梨香と入れ違いに妹の絵里萌が部屋から出て行った。
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挿絵はこちら。カラオケルームの絵里萌
https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330668325395542
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