第96話 未熟な甘い果実

 その夜、寝る準備も終えた頃、ミチャはベッドの上に寝転びながら伸びをした。



『今日はよく動いて、疲れちゃったね』



 ルノルノもその横に寝転がる。



『うん、疲れたね』



 ルノルノは体をミチャに寄せてミチャに甘えた。



『ルノルノは、本当に甘えん坊だね』



 多分姉にもこんな感じでくっついていっていたのだろう。普通に歩いていても手を繋いだり、腕を絡めたり、いつの間にか裾を掴んでいたりする。人の見ている前ではそうでもないが、人目がなくなるといっぱいくっついて来る。だから夜のこの二人きりの時間はルノルノの甘える時間と言ってもいい。



『明日も早いし、ミチャももう寝よう……』



 だがミチャはこうも思う。自分はルノルノの姉ではない。ルノルノに対して家族のような愛情とはまた違う気持ちを持っている。



(狙ってるのか、天然なのか……)



 これだけくっつかれて冷静でいられる訳はない。


 ベッドでルノルノが背中を向けて寝転んでいる時は後ろから抱き締めて欲しい時のサイン。ミチャはルノルノの小さな背を包み込むように抱き締めようとした。


 すると、ルノルノはミチャの腕の中で、ころっとミチャの方に向き直った。


 ルノルノの可愛らしい顔が近い。しばし二人で見詰め合う。



『ミチャ……』



 ルノルノはミチャの柔らかな胸に顔を埋めた。



『どうしたの?』



『なんでもない……』



 明らかになんでもない態度ではない。ミチャはルノルノの頭をそっと撫でた。



『今日は……いつもより甘えてるじゃん』



『だめ?』



『だめじゃないけど……』



 上目遣いでミチャの顔を見る。その小動物のような可愛さにどこかあざとさを感じる。しかしそれが逆にミチャの気持ちを揺さぶった。理性が一瞬飛びそうになる。


 ルノルノはミチャに抱きついたまま、脚をそっと絡めた。



『ルノルノ……?』



 相変わらず胸元からミチャを上目遣いで見上げている。ランプに照らされたそのあどけない大きな瞳は潤み、薄い唇は半開きで甘い吐息を吐いていた。


 ミチャの胸の音が自分でも聞こえるぐらい高鳴る。


 ルノルノは明らかに何かを求めている。それが何であるかは分かってしまう。自分もシュガルに求める時は同じ顔をして見せるからだ。



『あ、あのさ、ルノルノ……』



『なに……?』



 ルノルノは両脚でミチャの太ももを挟み、際どいところがきゅっと押しつけられる。



『あ、あの……ど、どうしちゃったの……? 今日は、その、随分……』



 お風呂で髪に塗り込んだ甘い香油の香りが鼻腔を刺激する。そのせいもあるのだろうか。まだ大人にすらなりきっていないくせに、甘い色気が醸し出されている。


 ミチャはもう我慢出来なくなった。



「あー、あたしもうだめだ……」



 トゥルグ語でぼそっと呟くと、目を閉じ、理性の箍を自ら外す。


 ミチャはルノルノの唇を自分の唇で塞いだ。


 ルノルノの唇が開き、ミチャの舌を求める。


 一度箍が外れると、もう止められなかった。


 ルノルノの服を捲り上げ、その幼い胸に指を滑らせる。同性の体をこんな風に触るのは初めてだ。どう触っていいか分からないが、たまにシュガルに奉仕する時のようにやってみる。慎ましい乳首をそっと優しく指先で触れ、勃ってきたところを舌で舐める。そしてそのまま乳首を転がすように舌を這わせてみた。


 しかし明らかに男とは違う、きめ細かな、柔らかな肌質。


 硬質な男の匂いとは異なる、柔らかな甘い香り。


 ミチャはルノルノの体に魅了されていくのが分かった。



(これが、男達が夢中になった少女の体……)



 それが今自分の腕の中にいて、蠱惑的な魔法をかけてきている。


 ミチャはルノルノの服を脱がせた。


 首飾りが揺れる。



『これ、外すね……。さすがに家族にルノルノのいやらしい姿を見せるのはよくないし……』


 ルノルノは首飾りも外し、枕の横に置いた。


 ミチャはルノルノにもう一度口づけた。情熱的に舌を絡め、唾液を舐め取った。首筋を舐め上げ、興奮を高め、もう一度胸に舌を這わせる。


 ルノルノはミチャの頭を軽く抱えて、甘い吐息を漏らした。


 その格好のまま、ルノルノの細く白い太ももを撫で上げてみる。


 ルノルノがひくっと震え、ミチャの頭を抱える腕に力が入る。



『ルノルノ、触るよ……』



 恐る恐る際どいところへ指を伸ばした。


 指に淫らな蜜が絡みつく。



『ルノルノ……ここ、濡れてる……』



 ルノルノは恥ずかしそうに腕で顔を隠した。


 ミチャも服を脱ぎ捨てた。


 自分でも恥ずかしくなるぐらいミチャ自身も濡れていた。シュガルとする時でもこんなには濡れないのに。



『舐めてあげる……』



 ルノルノの胸からお腹へ舌を這わせ、そのまま恥部に顔を埋める。


 初めて舐める同性の花襞。


 男とは異なる妖しく淫靡な香りに胸が擽られる。


 甘い吐息に混じって可愛らしい声が漏れた。


 ミチャは自分の欲望を思い返す。


 そうだ、あたし、この子の乱れる姿が見たかったんだ。


 ミチャは舐めながら、ルノルノの顔を見上げた。


 ルノルノは少し体を起こして、ミチャの舐めるところを見詰めていた。


 目が合う。


 一瞬恥ずかしそうに目を逸らしかけるが、結局そのまま視線を絡ませる。


 愛らしくいつもより少し甲高い甘い声を漏らしながら、快楽に身を委ねている。



(あたしが見たかったもの……。この子が快楽に打ち震える姿……)



 今まさにそれを見ている。


 男の手による必要はなかった。


 自分の手で導き出せば良かったのだ。


 なあんだ、最初からこうすれば良かったんじゃないか……。


 小さく漏れていた可愛らしい少女の声は色気を帯び始めていた。


 ミチャは舌を尖らせて襞からその上にある少し硬い蕾を舐めてみる。


 ルノルノの声色が変わった。


 さっきまでの甘く甲高い声は艶を得て部屋に響くぐらいのよく通るよがり声となった。


 あまりにも良く通る声だったので、一瞬ミチャが舐めるのをやめてしまう。


 すると、ルノルノは涙目で首を横に振った。



『ミチャ……やめちゃ、やだぁ……』



 その甘えた声にミチャはくらくらとするような感覚に陥り、導かれるように、もう一度蕾に吸い付き、舐め回した。


 ルノルノは切なげな声を上げながら、体をびくびくっと痙攣させた。



(イッちゃった……? あたしの愛撫で、イッちゃったの……?)



 そっと体をずらし、ルノルノの幼い花襞を観察した。



(綺麗……)



 そっと割れ目にそって指を滑らせる。今まで何人もの男がここを征服しようとしていたことが馬鹿らしく思える。


 ルノルノは未熟だが甘い蜜を湛えた果実。


 それを味わう権利は誰にも渡したくない。


 そのまま中に指をほんの軽く潜り込ませる。


 指に薄く吸い付くような処女の感触。


 このまま入れてかき回して、馴染ませていけばこの子の純潔は失われる。


 ミチャはそれを奪いたい衝動に駆られる。ベールが破れるのは一回限り。つまり一生に一度の経験になる。


 そこまで考えて我に返り、思い止まる。


 そんな大事な瞬間を自分が奪って良いとは思えなかった。

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