第5話 相手探し
あれから1週間後やっと明日香さんとシフトが被り、また明日香さんが22時に帰らされたので、一緒に帰ることができた。
「今日も帰り一緒になりましたね」
「本当だね、なんかうれしい」
明日香さんは今日もブランド物で固めていた。
「私もうれしいです」
「そういえば、前の話だけど、ありがとね」
「何がですか?」
「あのおじさんのお客さん」
「どうして明日香さんが感謝するんですか?」
「実はあの時狙えると思ってさ」
は?あのやばいおじさんを?
「まさか明日香さんああいう人がタイプなんですか?」
「違くて。ほら前言ったじゃん、パパ活」
「ああ、パパ活。まさか!」
驚いて大きな声で言ってしまった。
「ちょっと声大きいから、近所迷惑になるよ」
「すみません」
「あのとき、パパ活の話したら、ぜひっていう話になったんだよね」
えー、あのおじさんの、生理的に無理な要素しかなかったあのおじさんと……。私には無理だ……。
「あの一瞬で?営業力すごすぎませんか」
「まあそうでもないけど。普段あそこのカフェに来る人って、なんか別に金を払うほどじゃないけど、見に来ますみたいなライトなファンって言うの、パパ活に向いてなさそうな人ばっかだから、あまり相手にしないんだけど、あの人は違うなって一目見てわかったから行っただけだよ」
明日香さんがお客さんを相手にしない理由がわかった。
やっぱり明日香さんは正真正銘のおじさんのプロと言って差し支えないと思った。
「なんかすごいですね」
もうすごいしか出てこない。
「もう10万以上貢いでもらっちゃった」
10万。私の1か月の給料くらいだ。
「パパ活ってそんな儲かるんですか?」
「そうだよ~。春乃ちゃんもすごいお金困ってるんだっけ?」
「困ってますね。ジュース買えないほど」
「何それ~」
「ジュース基準です」
知らないですよね、すみません。
「まあそんな困ってるなら、紹介してあげよっか?」
「いいんですか?」
いや、これ完全に紹介してもらう流れになったけど、いいのか。
「全然いいよ~」
「あっ、でもあんなおじさんは……、ちょっと」
「大丈夫大丈夫、こっちで選べるから。まあ選り好みし過ぎるとなかなか稼げないかもだけど、でも嫌なら嫌って言ってもいいと思うよ」
「そうなんですか、じゃあお願いします」
あっ、言っちゃった。
明日香さんはスマホで何か文字を打ってる。これまだ断れるかな。
「明日香さん、あの……」
「そうだ、私春乃ちゃんのLINE知ってたっけ?」
完全に流された、これもう断れないやつだ。
「そういえば、交換してないですね」
明日香さんにLINEを教えると、すぐにURLが送られてきた。
「このサイトアクセスしてみて」
URLにアクセスすると、掲示板のページが出てきて、日時と場所と文を書けるフォームだけがある。
「ここで募集すれば、自然とパパ活したい人が釣れる仕組みだよ」
「このフォームに入力するだけなんですね」
「そう。パパ側は別のページになってて、フォームに入力された情報を基に会ってみたい人はいいねを押すって感じで。それで、いいねされたら、そのパパのプロフィールが届く感じで」
「なるほど。これ会員登録とか必要ないんですか?」
「パパ側はあるけど、女の子側はないよ。私も詳しくは仕組み知らないんだけど、そのURLがログイン情報みたいな感じだから、そのURLにさえ飛べば自分のページに行けるよ」
「そんな感じなんですね」
セキュリティはとても心配になったけども、まあ別に特にこっちの情報を何か出すわけじゃないからいいのか。
「まあパパ活って言うけど、若い男の人とかも結構いるから、そんななんか気難しい感じじゃないと思うよ」
「そうなんですね」
「あと、そのURLは春乃ちゃん個人のものになるから、他の人には教えないでね。一応裏サイトみたいな感じでもあるから」
そうだよね、こんなのが合法なわけないよね。いや、合法なのかな。やっぱりパパ活ってなんだろう。
「もちろんです、なんかすごい世界があるんですね」
「まあ気が向いたらでいいから、やってみると良いよ」
「ありがとうございます」
家に帰ってきて、とりあえずご飯を食べて、お風呂に入った。普段ならそのままベッドにバタンとして、次の日起きたらもう遅刻寸前だけど、今日はそのまま寝れる気がしなかった。
あの後、明日香さんから細かい入力方法を教えてもらい、このパパ活募集の掲示板の使い方はわかった。けど、こんな目の前に、縁もゆかりもなかったパパ活の世界があるなんて、まだ信じられない。
偶然にも明日はバイトが休みの日で、特に何か予定があるわけじゃない。そもそもバイト休みの日に予定なんてない。やるなら、明日か。でもな……。
とりあえず、言われた通り、明日の日付と18時に近くの駅の名前を書いて、備考欄に「デート1回5万(JK)」とまで書く。これは明日香さんにこう書くといいよと言われたままだった。でも、これってデートするだけで5万ってこと?それって。そもそもデートってどこまで指すの?明日香さんにあのおじさんとどこまでのことをしたか聞くの忘れた。キスとかするのかな。いや、さすがに。でも、5万だしな。手繋ぐくらいは覚悟してるけど。ハグもまあ。いや、キス以上とかある?でも、高校生だし、犯罪だしな。でも、これ……。
そんなことを考えてるうちに、寝てしまったらしい。朝起きると、手にはスマホが握られていて、いいねの通知が多数来ている。
「しまった」
昨日寝ているうちに、間違って募集するっていうボタンを押してしまったらしい。既に30件以上のいいねが来ている。
よく考えたら、顔写真も出してないのに、こんなにいいね付くって怖いと思った。とはいえ、せっかくだからと思っていいねを押した人を見ようとすると、いいねした人の登録された顔写真がたくさん出てくる。基本おじさんばかりだが、若い人もちらほらいる。
そこの中に、カイトという大学生くらいの彫りが深く顔立ちのはっきりしたイケメンがいた。別にイケメンだから良いってものでもないと思うけども、初めてのデートなのに、おじさんっていうのはちょっとないなと思った。
とはいえ、私みたいな、この地味な何のとりえもない、青春してない残念な女子からすれば、こんなイケメンとデートってラッキーな気がする。
でもまさか、こんなイケメンなわけないよねと思いながらも、このまま自分さえ決断すれば会えるということに少し迷ったが、結局会ってみるというボタンを押した。
意外にも朝は起きれたので、今日は弁当を作れた。いつも通り学校をテキトーにこなしながら、内心カイトと会うのが楽しみだった。途中、何度か先生たちに怒られたり、由美に「話聞いてないでしょ」って言われたけど、それは仕方なかった。由美に言うかどうか迷ったけど、そもそもこのカイトって人が実在するかもわかんないし、まだ行くかどうか悩んでるから、言えなかった。言ってしまったら、その時点でもうパパ活することが確定してしまうから。そんなこんなで、今日は全校生徒で一番早く由美とともに学校を出て、そのまま家に帰って準備する。
服装が一番迷う。高校生だから制服の方が良いのか、それともやっぱりちゃんとした私服……、よく考えたらちゃんとした私服なんてほとんどなかった。だからって、お母さんの借りたら秒でバレて面倒くさい。ていうか、ほとんど選択肢はなかった。結局制服で待ち合わせ場所に向かう。
果たして、最初のパパ活は無事成功するのか……。
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