短編「君色ノ憧憬」(完)

不可世

一話完結

ただ人生が

ただ時間が

ただ生きる事が

苦しかった


もう誰も信じたくない

もう誰にも会いたくない

それでも君は

花束を置いていくから


その度に

すがってしまう

その優しさに漬け込んでしまう

君は必死に僕を蹴り飛ばす奴らに

立ちはだかり


その度に僕は

甘えて、変わることを怠った


君がどりゃぶりの雨にあってる時

やがて君が標的にされた時


僕は君を守れなかった

君は美しく凛々しく

立っていたけど


火傷した手とか

頬の殴られた跡とか

それを見たのに


僕は


何も出来なかった

自分が狙われなくなって

むしろ安心してた


君に救われていたのに

その恩すら返せそうにない

ああ、ほんとごめん


ごめんなさい


いつしか君は学校へ来なくなり

僕はその時

大切なものを失くしたと

そう

涙が流れた


君は傷を負い入院したらしくて

それなのに僕は

君の見舞いにもいかず


ただこそこそと生きていた


ああ、ごめん

ほんとにごめん


家に着くたびに

君が早く戻ってこないかと思う

でも君は目を覚ます事無く

死んでしまった


僕はただ泣いて

泣いてしまった


今頃、守れてたらと後悔した

だけどもう遅い

本当に大切で

生きるべき人が死んでしまった


僕はただ自分の無力さに暮れて

ただ立ち尽くす事しか出来なかった


ごめんなさい

本当にごめんなさい。


情けない僕でごめんなさい。


いくらそう嘆いても

君は帰ってこない

それが現実


そうして君の亡霊を見るように

閉じた部屋で君の居る空を眺め続けた。


それがせめてもの

償いだった。


それしか、出来なかった。

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