第149話 四光の誓い
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歩みは、のんびり。
関係のない皇子や皇女は各々近くの町を目指しているようで、バラバラの方角へ向かっている。これなら、
向かう先、
兵たちが集い終わる頃に合わせて、その場所に到着する。
「待たせたわね」
「いや。ちょうど、こちらも集合を終えたところだ」
後ろの兵士たちから殺気が洩れるけど、知らない。お腹が空いてるんだよ、こっちは。
あと、力関係を教えるためでもある。彼らと私は平等ではない。
「それにしても意外ね。第二皇子までそちら側だなんて」
この場には私と兵たちを除き、三つの顔があった。一つは虎憲。私が呼び寄せた張本人。一つは今言った第二皇子。名は、
牛音に関しては最初のやり取りで分かってたから特に驚くことではない。皇帝が私の存在を認めないなんて布告を出してる中で、その私のことを
狼戦も戦ってる最中の動きからもしかしたらとは思っていた。もっと殺す気でこいって言った後の動きが違いすぎたから。ただ。彼の場合怒りで動きが良くなるタイプって可能性があったから、判断は保留にしてた。動機もイマイチ分からなかったし。
「二番目の兄は戦がしたかったらしい。一応、前線での兵たちの扱いに不満を持ってもいたようだが」
思ったより単純な理由だった。納得できたけど。
二番目の兄って表現はたぶん、翻訳の都合かな。たしか、同じ呼称の親戚が複数いたら上から数字なんかを付けて呼ぶ風習があったはずだから。
もう一つの理由についても納得できる。
「一応、そちらの胡散臭い男の理由も聞いておこうかしら?」
正直、だいたい分かるけど。
「一番目の兄は、勝ち馬に乗っただけ、だそうだ。音楽さえ出来るならどうでも良いと言っていた」
うん、やっぱり。これで優秀なのだから頭が痛い。……いや、私には関係ないか。彼らの扱いに関しては虎憲が頑張ることだ。
今もニコニコこちらを見ている第一皇子を一瞥しながら、点心に口をつける。本当に胡散臭い。けど、音楽さえできたらどうでも良いというのは信用できる。種族の本能とはそういうものだから。
「まあ、頑張りなさい」
一応、彼も虎憲を立てるつもりではあるみたいだし。
「それで、今回お呼びいただけたということは、そういうことで良いのだな?」
「ええ。皇帝は明確に私の敵となった。私は、あなた達を利用する。だからあなた達にも、私のことを利用させてあげる」
確実に、皇帝を殺すために。
「この地が新たな
桃園か。なら酒があってもいいだろう。
皇子たちと私の手元に朱色の盃を生み出し、
いつの間にやら雲は流れ、月が顔を出す。よく満ちた、円い月だ。
青白い光が私たち四人を照らし、盃を満たす。満たされたそれは私たちの動きに合わせて波立ち、歪んだ。
「夜明けに」
私の月を掲げると、皇子たちの月も掲げられて、四の光が重なる。特に綺麗とも思わないものだけど、ひと時ばかり記憶にとどめる価値くらいはあるだろう。
「夜明けに」
返ってきた三つの声は、手元の淡い月と共に飲み干した。
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