第141話 戦場着!
141
広大なユーラシア大陸を西へ向けてテクテクすること何か月か。正確な日付なんてものは覚えていない。夜も寝たり寝なかったりだったし。
配信はちゃんと続けている。でないと、すぐに人間らしい感覚を忘れかねないから。
まあ、なんか色々察したっぽいウィンテと令奈がちょこちょこ連絡くれるようになったから、大丈夫だったろうとは思うけど。
本当に、あの二人は私のこと好きすぎではなかろうか。割と嬉しいのは秘密だけど。
ここまで通ってきた町の様子は、まあ第一皇子の所とあまり変わらない。退廃的で、治安の悪そうな感じ。
もう少し未来に夢を見てても良いとは思うんだけど、今のこの国の制度じゃ無理かなぁ。
違う点も勿論ちゃんとある。
音楽関連が優遇されている様子がない所とか、武具や兵器の類いを作っている所が多い所とか。
あとは、腕に自信のありそうな人が多いかな。その分ケガ人も多いけど。
言ってしまえば、戦の匂いってやつだ。
それもあってここ数日は配信をしていない。今回は事前にちゃんと言ったから、リスナー諸君も別に心配はしてないはず。
「ん、火薬の匂いがするね。そろそろ戦場が近いかな?」
近いと言っても、まだそれなりにあると思うけど。
龍の嗅覚は犬よりも鋭いから。
「そのようだな。地上を行くか?」
「いや、飛ぼう。私らを見つけられる人はいなさそうだし」
ここらを治めてるらしい皇子なら分かるかもだけど、それらしい気配は感じない。
近づかないと分からないくらい気配を消すのが上手い可能性も、当然ある。
何にせよ、とりあえず行ってみよう。見つかったらその時はその時だ。
夜墨に少し大きくなってもらって頭に乗る。自分で飛ぶのはめんどくさいし。
地上はちょっと木々が減って来たなー位だったんだけど、空から見るともうすぐ先が砂漠地帯になっていた。
あの辺りが国境かな?
んー、あ、櫓やら何やらが向かい合ってるね。ちょうど小競り合いの真っ最中みたいで、煙が上がってるのも見える。
「境界はちょうど中間くらいか。侵略したところであまり意味ないのに、兵士諸君も大変だね」
基本、境界を越えてしまえば魂力に関わる恩恵全般を受けられなくなる。そうなればせっかく奪取した地域の防衛は絶望的だ。
だからこそ皇帝は、私がこうして他国で普通に活動してる手段を知りたがってるわけで。
そういえば、一回だけ皇帝の使いらしい人が接触してきたね。
一蹴したっきり忘れてたけど、あれから何にも音沙汰ない。
あっちじゃどういう言話になってるんだろ?
……まあ、なんでもいっか。
お、発砲音。
銃は旧時代の終わり頃に使われてたやつだね。火縄銃とかだったら面白かったんだけど。
「発射の瞬間には魔法を使ってるみたいだけど、以降は完全に物理か。それなら境界を越えても威力は維持できるけど、あー、まあそうだよね」
数十の銃弾が敵陣地に降り注ぐけど、魔法も使って強化された防護壁だ。大した効果もなく弾かれている。
圧倒的に威力不足だね。
人間相手なら、銃も使い方次第で通用するんだけども。
「向こうも動くぞ」
「ふむ」
向こうは、なんて国だったかな?
とりあえず種族変化してる人も多いから、中国みたいに規制があるわけではないみたい。
うん、第一皇子の所に忍び込んだ時も違和感感じてたんだけどさ、どうも上流階級ですら種族変化を制限されてるみたいなんだよね。
だから中国内で人間以外の種族を見たら、皇帝か、皇帝の子か、解放軍かだ。
「あっちは魔法で強化した投石か。原始的だけど、威力はこっちが上だね。あ、防壁貫通した」
「そうなるであろうな。中国側も投石機を用意しているようだが、物理的な仕組みのみだ」
両者の兵士の地力が違いすぎる。
中国軍も防御のために魔法を展開したんだけどね、魔法的な効果を持たない石ですら防ぎきれない始末だよ。
これ、仮に魂力の支配を教えたところでどうにもならないんじゃないかなぁ?
「見られているぞ」
「知ってる」
向こうの将校っぽい人がこっちをじっと見てる。中国軍はあまり眼中にないみたい。
おー、警戒されてる警戒されてる。明らかに向こうの空気が変わったよ。
あれだね、これ。向こうからしたら中国とのにらみ合いはただのポーズだ。それと、新兵の育成場かな?
将校さんに対して兵たちの練度が低すぎるし。
まあ、手を振っておこう。
私敵じゃないよーっ。
うん、通じないよね。知ってた。
寧ろ余計にピりついてら。
「どうする?」
「ここはもういいかな。他でもドンパチしてるみたいだし、そっち行ってみよう。皇子探しだ」
相手は別の国かな?
私の視力でギリギリ見えるくらいの距離。
多方面作戦になるわけだけど、よくやるなぁ、ホント。
皇帝さんの野心は中々凄いみたい。
と同時に、臆病でもあるみたいだけど。
あ、そうだ。国境まで来たついでに一つ実験しておこう。
ここ最近でちょっと気が付いたことがあるんだよね。
何にせよ、この戦場にはもう用はない。次行こう次。
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