第33話 反省はしてる、後悔は無い。
㉝
はい、やり過ぎました!
いや、自分でもびっくりだよ。
冷静さの欠片もない程ぶちぎれるなんて。
人間だった頃から怒る事は殆どなかったのになぁ。
仏って言われた事すらあるくらいだよ?
リスナーさんたち確実に引いてるよねっていうか引いてたよね?
ていうか、これ迷宮大丈夫?
なんか壁の向こうに虹色の不思議空間見えるけど、崩壊したりしない?
あ、なんか大丈夫そう。
塞がっていってる。
まあ、アレをプッチんしちゃった事に後悔は無いけどさ。
それにしたってさー、ぬぬぬ……。
『なんかめっちゃ悶えてる』
『さっきまでの姿が嘘みたいな可愛さ』
『やり過ぎた自覚はあるっぽいな』
『ぬあああって叫んでるハロちゃん、新鮮で良き』
『同接がっつり減ったな。まあ仕方ない』
あ、はい。
落ち着きます。
「えーっと、なんか、ごめんね? 自分でもこんなに怒るとは……」
確かに私にとって最重要レベルに大事なことだけど。
あー、そか。
「これが逆鱗かぁ」
『げきりん?』
『龍の逆鱗ってあれだろ? 喉だか顎の下だかにあって触れるとめちゃくちゃ怒るっていう』
『なるへそ』
夜墨の言ってた物理的なものじゃないってこういう事ね。
あいしーあいしー。
そうすると、あの女の子の時は女の子の自由が奪われるところを見たからイラついたのかな?
自分の事じゃないからちょっとイラつく程度で済んだ?
でも今そういう話を聞いてもそんな癇に障らない気がする。
多少はストレスだろうけど……。
人龍になりたての頃だったからかな?
「まあいいや。そんな訳で、私、自由を奪われるとか奪うって言われるとか、そういうの特大の地雷みたいです!」
『絶対触れん』
『徹底周知だな』
『了解』
『いつも以上の無表情で絶影君を痛めつけるハロさん、マジ怖かった。。。』
『あのハロさん、私的には有り。ハァハァ…』
『別の意味でやばいのがいるな?』
いやぁ、本当にごめんよ、リスナー諸君。
さて、と。
あのゴミがチラチラ見てた方向はっと……。
「ちゃんと伝えなよ」
これで良し。
画面越しには絶兄も見ているだろうけど、現場で感じたアレコレってけっこう大きな情報だからね。
しっかり持ち帰って伝えて貰わないと。
最後のブレスに巻き込んでたら、ごめん?
こうして冷静になって、いるって分かってる状態で注意したら辛うじて違和感を感じるかなってくらいなんだよ。
巻き込まないように出来る自信がない。
殺意を向けられたら流石に気づくけどね。
ん-、感知能力磨いた方がいいかな?
能力に胡坐かいてたら足元掬われそう。
私が傲慢なのは分かっているけど、だからこそ、むしろ傲慢である為に努力は惜しまないのです。
それじゃあ、配信は締めようかな。
さっきのカメレオン混じりへの言葉にハテナが飛び交ってるし。
何より、もう一つの問題はあまり公開しない方がいいだろう。
誰にでも公開して、自由にできる世界が無くなるのは困るからね。
「今日の配信はここで終わりにするよ。次回からは秋葉原あたりの迷宮も良いかなって思ってるけど、まだ未定。じゃあね、おやすみー」
『乙ハロー』
『お疲れ様でした』
『ゆっくり休み―』
『お疲れ様でしたー』
はい、終了っと。
あ、守護者のリポップ。
やっぱりミノタウロスか。
サクっと首を刎ねて終了。
そんで、隠し扉はどこかな?
ん-、お?
あの壁周辺だけやけに綺麗。
他は結構ボロボロなのに。
軽く叩いてみたら、向こう側に空洞のある音がした。
ここで間違いないみたいだけど、どうやって開けるんだろう。
「……えい。あ、開いた」
とりあえず殴ってみたら、なんか凹んで横にスライドしてったよ。
押すだけで良かったみたい。
現れた石の階段を下ると、これまでと同じ、だけど滑らかに磨かれた廊下があった。
私の家はブロックを積み上げたような感じだったから、迷宮によって特色があるのかな。
それか階層の違い。
コツコツと足音を響かせながら最奥に行けば、最早懐かしい、殺風景なコアルーム。
白一色の部屋の中央にこの迷宮のコアが鎮座している。
うちのより少し小さいかな。
両手なら完全に隠せない事も無さそう。
【迷宮の攻略を確認しました。攻略報酬が授与されます】
その水晶球に手を当てたら、聞き覚えのある声がした。
文言が微妙に違う。
前は守護者をすっとばしてのコアルームだったからかな?
初攻略報酬、私を人龍にしたあれも無し。
初攻略って世界全体での話か、私個人の話かのどちらかみたい。
迷宮単位では無いんだね。
攻略報酬は追加のspと、この迷宮の支配権。
ゴミが配信できるようになってた事から、システム的には最後の守護者を倒した時点で攻略完了なんだろうけど、ここでいう攻略は別なのかな?
完全攻略、って事なのかもしれない。
まあいっか。
「ふぅ……」
兎も角、これで近所に変なのが住み着かない。
ここの管理は、これまで通りのオートで。
私との繋がりも最小限にしておく。
私の影響で出てくる魔物が変わったら、ハエトリ擬きも消えてしまうかもしれないし。
美味しいご飯は逃がさない!
「一旦これでひと段落、か。絶兄、次はどんな手を打ってくるかなぁ」
足取りの弾むのを自覚しつつ、コアルームから転移する。
迷宮の外には、誰もいない。
風が吹いて、白髪がなびいた。
相変らず血と生ごみの匂いが街中に充満していて、鼻が曲がりそう。
そういえば、今ここを牛耳っているのはヤーさんなんだっけ。
こっそりそっちを覗いてみるのも面白い。
新しい迷宮を探しがてら、散歩をするのも良いかもしれないね。
絶兄が次に仕掛けてくるまでの暇つぶしくらいにはなるでしょう。
何にせよ、暫くダラダラ生活かな。
こんなワチャワチャするのは早々ないだろうし。
今日はさっさと帰ってお風呂に入ろう。
ゴミの体液が所々に残ってる感じがして気持ち悪いし。
あー、ウィンテさん配信しないかなー。
癒しが欲しい。
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