第21話 吸血鬼やっかいそ
㉑
二時間近くかかったけど、これで今出来る実験はだいたい終わったかな?
「眷属化は、今は出来ないので一旦ここまでの結果を纏めてみましょうか」
『ですねー』
『まずは、ドジっ子か』
『ドジっ子だな』
『おっちょこちょい』
『ドジっ子だねー』
うん、それは間違いない。
霧化したまま風に吹かれたり、いきなり強く跳んで天井に頭をぶつけたり。
日光の時も思ったけど、本気でドジな子みたい。
「う、それは違います! 忘れてください! 全部!」
クリップ機能があれば誰かが全部残したんだろうね。
ショートも作られてたんじゃないかな。
とりあえず心のアルバムに刻んでおこう。
この画面、カメラには映らないからなぁ。
『満足した。真面目にいこう。まずは、なんだ?』
『うむ満足』
『霧化でいいんじゃね?』
霧化は、文字通り身体を霧と化す能力。
他のもそうだけど、ヴァンパイアの能力としては定番じゃないかな。
特徴としては、変化後の質量は人型の時と同じで明らかに魔力を含む点が挙げられる。
人間一人と同じ質量だから、密度を薄くすれば相当な体積になるね。
魔力を感知できれば分かりやすいから、隠密能力は微妙。
物理的な干渉を阻害するくらいかな。
たぶんだけど、あの魔力に干渉するように攻撃すれば普通にダメージ通る。
基本は格下向けの能力だと思う。
『あと風に注意な』
『風に注意』
『風危険』
「わ、分かってますから! 皆して念押ししなくて大丈夫です!」
次に動物への変化能力だけど、これは変化できる対象が限られていた。
狼に蝙蝠、それから猫。
動物じゃないけど、蜘蛛と蝿とムカデにも変化できた。
これは眷属の影響かな。
まあ、彼女が変化できる対象を隠している可能性もあるけどね。
『自分で出した糸に絡まらないようにな』
『ちゃんとアラネアにやり方教えてもらうんだぞ』
『もし糸に絡まったらすぐに人を呼ぶ事。配信を初めてもいいぞ』
「あの、なんで皆さん私が自分の糸に絡まる前提なんですか?」
最後に再生能力。
代名詞の一つなだけあってかなり強力。
これだけで体力をもう一段階上って考えても良いくらい。
吸血鬼全体がそうなのか、女王かつ始祖の彼女だからなのかは分からないけど。
かすり傷程度は瞬きの間に回復。
切断した四肢もすぐにくっ付いた。
本人曰く、首を斬られても大丈夫な気がするって。
皆止めてたけど、そう感じたなら本当に大丈夫なんだろう。
流石に脳を潰されたら死にそうとも言ってたけどね。
首から下はいくら削られても、それ程かからずに再生してたよ。
『これで多少の致命的なドジも安心だな』
『うむ、安心』
『致命的だけど安心とは』
「そこまで私ドジじゃないと思うんですけど……」
『え』
『えっ』
『え』
「え?」
残念ながらドジだと思うな……。
他にも身体能力に優れていたり魔法能力も高かったりで、相当に強力な種族って事が分かった。
私と違って能力値は参考にしかならないタイプだね。
年月を経るほどに私と彼女の差は縮まり得る。
何十年も同じように訓練していたら、本気で戦わないとといけないようになるんじゃないかな。
そうなったら、嬉しいね。
本気を出せる相手は大事。
流石に殺し合う気はないけど、今のところは。
彼女とも画面越しのうっすい関係を続けていきたい。
「えっと、今日はこんな所、ですかね? こんな所ですね!」
ん、配信終わるみたい。
もう殆ど日も沈んじゃったし、多くの人は明日に備えて寝てる頃か。
「一緒に色々と考えてくださった皆さん、ありがとうございました。また次の配信で会いましょう。お疲れ様でした、ダーウィンティーでしたー」
お疲れ様っと。
よし。
「それじゃ、晩御飯にしよっか。何食べたい?」
「そもそもどんな物があるかも知らぬ」
まあ、それもそうか。
迷宮の守護者には必要ない知識だし。
「じゃあ私の好きに選ぶね」
「ああ」
ん-、何にしようかな。
お、今日食べた迷宮食材が追加されてる。
めちゃくちゃ高いけど。
完成品よりかなり安いはずの素材段階ですら、数万spだ。
必要になったら取りに行こう。
ん-、ハンバーガーで良いか。
ジャンクなのはジャンクなので別のおいしさがあるんだよね。
学生時代はよくバイト帰りなんかに同僚と某チェーン店に行ってたなぁ。
あの日、情報交換のために集まる予定だった面々はその時の同僚が殆どだった。
「……夜墨、明日はちょっと、出かけてくる」
「そうか。必要なら呼べ。ロードなら私を召喚できるだろう」
「ありがと」
会いはしない。
会いはしないけど、少しだけ。
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