第15話 実験ジッケン
⑮
お、来た。
一度に打ち込んだんだね。
えーっと?
うわ、長い。
後で口頭で要約しよう。
『あの魔人と呼ばれる異形の事件から魔人への種族変化の条件について考えたんですけど、ただ殺戮だけが条件で変化するとしたら流石にシステムとしてイマイチというか、行動を制限されすぎるんじゃないかって思いまして。もちろん宗教的な考え方や性善説のような思想ならあり得るんですけど、そうじゃないって仮定して一つ実験をしたんです。幸い私の所属していた研究室には研究用に飼育していた虫が大量にいたので、それらを使って実験を行いました。細かくは省きますが、同じ一種の虫、同じ分類で多種の虫、動物を含む多種を同じ容器に入れたモノを複数個ずつ用意して薬品を投与、互いに殺し合わせました。動物は他の実験室に残っていた実験用のラットを使っています。結果として、同じ一種のみで殺し合わせた時のみ異形体への変化が見られました。用意したもの全てで同じ結果です。今回私に契約を持ち掛けてきたのは、異形体に変化した虫たちです。契約の内容は聞いていません。以下は実験方法の詳細です――』
ふーん、なるほどね。
とりあえず、要約して他のリスナーさんたちにも伝えよう。
「魔人みたいな異形になる条件を探って実験してたら、異形になった虫から契約を持ち掛けられたんだね。でも契約の内容は決まっていないと。僕と契約して~的な感じ?」
『悪魔の契約にしか思えない』
『既視感』
『止めた方が良い気がする、、、』
ん-、これは、この人にとっては逆にチャンスかも。
下手したら破滅だけど。
「ダーウィンティーさん、差支えがなかったらあなたの魔力を教えてくれない?」
『大丈夫です。Dです』
『けっこう高いな』
『俺なんかFだぞ』
『私E』
『お前らのは聞いてないって。ちな俺F』
『言うんかい』
『最低値じゃねぇか』
Dで高い部類なんだ。
やっぱ私のBっておかしかったんだなぁ。
まあ今はもっとおかしいSSだけど。
「契約は魔力に大きな差があると、大きい方がある程度融通利かせられちゃうからね。魔人の魔力がBだったことを考えると、今のまま契約は不安かな」
一朝一夕で伸ばせるものではないけど、補う手段はある。
細かい数は、夜墨に相談かな。
『夜墨、一番大きいのでいくつ? 始祖の可能性あり』
やっぱり始祖は他の同種より強くなる傾向があるらしいから。
『ただの虫からの変化だからな。最悪で考えてもSとなると、五もあれば十分だろう』
『おっけ、ありがと』
この人、これまでの検証でそれなりにsp持ってるはずだけど、人柱になってもらう訳だし私が出そうかな。
「魔石極大っていくらで交換できる?」
『魔石ってあれか、迷宮の魔物倒した時に偶に出てきた石ころか』
『話の流れ的に自分の魔力の代わりに使えるのかな?』
『えっと、ひとつ五十万spです!』
たかっ!
夜墨に使った魔法薬の半分もする。
あれがエリクシールとか言う最高の秘薬に次いで効果の高い魔法薬だったはずだけど……。
「異形化した虫は何匹?」
『三匹です』
とすると、十五個だから七百五十万spね。
仕方ない、必要経費ってことで。
「今から十五個分のspを渡すから、一匹に五個ずつ使って契約してみてくれない?」
『十五個って、七百五十万spですか!? ダメですよ!』
「良いの良いの。下手したら死にかねないような実験の人柱にしちゃうわけだから」
こう言っておけば他のリスナーからのヘイトは減るかな?
「あ、大丈夫だとは思うけど、もしspネコババしたら自分が支配されちゃうかもだからね」
コメント見てる限り心配ないけど一応ね。
『分かりました、魔石を交換したらどうすればいいですか?』
「手に持った状態で魔石の魔力を使うよう意識しながら契約を結ぶと念じたら良いよ。条件は、あなたに絶対服従で。もしかしたら名づけを求められるかもだけど、それはして大丈夫。ただしこちらの条件は契約の瞬間まで秘密ね。……ほい、送ったよ」
『ありがとうございます!』
さて、大丈夫かな?
もしダメだったら炎上ものだなぁ。
流石に人柱にして死なせちゃうのは寝覚めが悪いし、成功してほしい。
『いけました! 問題なしです!』
お、良かった。
安心したよ、正直。
『元蜘蛛にアラネア、元蝿にベルゼア、元百足にオムカデアって付けました!』
コメント欄でも言ってるけど、由来分かりやすいね。神話とか妖怪とかのシリーズ。
そういうの好きな人なのかな?
「いいね。これでその異形たちのステータス画面が見られるようになったはずだよ」
ぶっちゃけると、これの確認のために契約を実行してもらったところがあるんだよね。
もちろん契約を断った時にこの人が殺されるリスクがあった事もあるんだけど。
『ホントだ! 種族は、三匹とも魔蟲になってます! それとアラネアだけ[始祖魔蟲]って称号がありますね』
蟲の字かぁ。
虫の字だったらもっと大きな範囲の生き物を表している説も考えないとだった。
この異形の始祖がより多く生まれる可能性があるって意味では悲報かな。
「そか。じゃあアラネアには特に気を付けた方がいいね」
『そういえば、最初に契約を持ち掛けてきたのもアラネアでしたね』
『始祖はやばいのかメモメモ』
『さらっと出される新情報』
HAHAHA、まだまだ隠してる情報は沢山だぜ!
なんて。
『しかし、魔蟲に魔人か。変化条件は、同族の大量殺戮か?』
『そんなところだろうな』
『総取得spに対する割合とかもあるかもしれんが、同じ種を沢山〇すのは最低でも条件に入ってるな』
だいたい私も同意見かな。
お、spが入った。
つまりはそういう事だね。
『つまり、魔人は基本的に敵か』
『戦争とか仕方ない場合もありそうだが、そうだな』
『アラネア達も本当は名前だけ手に入れて私を殺す気だったみたいですね』
『うわ、あぶな。ハロ様様じゃん』
私としては貴重な情報源だったってだけなんだけど、沈黙は金で。
『ん-、魔人に魔蟲、こいつらはとりあえず敵だと思っていいとして、魔族って呼ぶのはどう?』
『同じ理屈で変化するし、異形だし、漫画とかで魔族ってイメージつきやすし、いいんじゃね?』
なんか呼称が決まりつつある。
今後は人対魔族って流れになりそうな雰囲気だね。
一括りにするのは良いとしても、魔族全てが悪ってするのは如何なものかって意見もありそうだけど。
まあ私としてはその辺はどうでもいいかな。
生存戦略的に纏めて排除ってした方が良い段階かもしれないし。
「ん-、それじゃあ私の種族も明かしておくよ。ってことでほい」
『人龍、龍?』
『ほらハロさんは違った!』
『【朗報】ハロたんは龍だった!』
『人外は人外なんだな。推せる』
『龍人じゃないんだ』
これでも疑う人は疑うだろうけど、それはもう知らない。
っていうか、あんまり関わらない方が良さそうな人種だから向こうから離れてくれるなら寧ろ助かる。
「さ、それじゃあそろそろ配信の主題、渋谷迷宮の攻略といこうか」
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