第14話 ナイスタイミングだったらしい

 さてさて、今日は、何曜日だろ?

 分からないけど、ともかく夜墨との戦いから数日が経った。


 いやー、楽しかった。

 思わず男だった頃の口調が出ちゃったくらいにはハッスルしたよ。


 夜墨の傷は魔法薬とかいうのを使ったらすぐ良くなったから、問題は無し。

 まあ、交換に百万spくらい使っちゃったけど。


 そうそう、気が昂った時に私の目が金色になる理由も分かったよ。

 夜墨曰く、まだ龍の力が馴染んでない上に私がコントロールしきれてないから、普段は龍より人の部分が強く表面に出てるんだって。

 それで、高揚すると龍の力が強く出る。


 完全に馴染んでコントロール出来るようになったら、意識して変えられるようになるってさ。


 ついでに、技術を磨いた方が効率よく強くなれそうって事もあって、ここ数日は鍛錬に時間を使ってたんだ。あと読書。

 私の魔力量なら、夜墨との戦いはもっと一方的になっている筈だったって彼も言ってたしね。


 鍛錬の方が能力が伸びやすいって言うのは一般的な話だってさ。


 こういう知識も迷宮から与えられたらしいんだけど、本当に迷宮ってなんなんだろ。


 で、そんな私が今どこにいるかって言うと、その迷宮のある渋谷上空です。

 配信しに来ました!

 

 ついに今朝、夜墨に『私の初仕事はいつだ?』なんて言われちゃったから……。


 spには余裕あるし、別にまだのんびりしててもいいかなーって思ってたんだけどね。


「そんじゃ、行ってくるよ。夜墨はこのまま隠れてて」

「ああ。降りなくて良いなら、その方が良い」


 やっぱり臭いきついみたい。

 ずっと顔を顰めてるんだよ、夜墨。


 まあいっか。


 今いるのはそこらの山の頂がずっと下に見える位の標高だけど、気にせず飛び降りる。

 飛べるってこともあるけど、まあ大丈夫でしょ。


 終端速度になって速度が安定したくらいに、上を見てみる。

 夜墨のサイズになるとこの距離からでもまだ大きいね。


 他の人からは魔法で隠されてて見えないみたいだけど。

 私が見えるのは、龍の目のおかげ。


 龍の目は真実を見抜くんだってさ。

 よほど実力差がない限り、私たちに幻術の類は通用しない、らしい。


「よっと。ふぅ」


 なんて考えている内に地面だ。

 全身のばねを使って衝撃を殺したけれど、それでもクレーターになっちゃったな。

 今度から減速して着地しよう。


「それじゃ、配信始めますかー」


 配信開始っと。


『おはようございます良かった生きてた』

『うpおつー』

『こんにちは! 良かった!』

『なんかクレーターになってね?』


 あー、まあこんな時だもんね。間空くとまさかって思うか。


「ハロハロ。ごめんねー、色々あってさ」


 嘘ではないよ、うん。


「クレーターは、まあ気にしないで」


 ん-、始めたばっかりだけど、明らかに視聴人数減ってるなぁ。

 人間虐殺しちゃったからか、種族変化条件の疑惑の方か。


 まあ仕方ない。

 ぶっちゃけ、獲得spが百分の一になってる今でも十分すぎるspが貰えてるから、全然いいんだよねー。


『ナイスタイミングですハロさん!』

『いや、気になるて』

『クレーターの中心にハロさん、なるほど、わからん』

『いや分からんのかい』


「まあまあ。さて、今日の配信は……ん? ナイスタイミングって、何かあった?」


 ダーウィンティーさんって確か、検証スレッドに入り浸ってる人だね。

 理系の学生さんだったとかで、自分でも色々検証して情報上げてくれてた記憶がある。


『契約って分かりますか!? なんか研究してた虫から契約してくれって言われて……』


 ほー、これは、慎重に対応した方が良い気がするね。


 とりあえず夜墨と私だけが見られるプライベートスレッドを開こう。

 えと、管理用って名前にしたはず……。あった。


『夜墨、見てる?』

『ああ』

『どう思う?』

『魔に変じた者の可能性がある。迂闊に契約しては危険だな』


 やっぱそうだよね。


「契約は少し待って。スレッド作るからそこに経緯を書いてくれない?」


 さて、一体何があったのかな。

 まあ時間がかかりそうだし、ちょうど来た質問に答えておこう。


「そうだよ、私は契約について知ってる。ていうか契約してる」


『何と契約してるんだろ?』

『さすがハロたん』

『ハロさんってどれだけ先に行ってるんだろ……』


 管理用スレッドで夜墨を呼ぶ。

 彼については、聞かれたら答えるって決めてた。


 隠すこともできるけど、あの巨体だから。

 いつかはバレるだろうし、隠し続けるメリットもあんまりないし。


『うおっ!?』

『デカ!』

『黒い蛇!?』

『いや龍だろ』

『カッコイイ!』

『なるほど、これは配信できないな』


 降りてきた彼に皆びっくりしてる。それはそうか。

 これ、画面に収まってるかな?


 私の視界より少し広いくらいで映ってたよね、たしか。

 ちょっと後ろにカメラ位置設定してるから、たぶん合ってる。


 あ、なんか勝手に納得してくれてる。ラッキー。

 正直あんまり関係ないんだけど、まあそういう事にしておこう。


「紹介するね。私の従者、夜墨だよ。夜の墨って書いて夜墨。あんまり配信に映る事はないだろうけど、よろしくね」


 概ね好意的な反応。いいね。


 さて、そろそろダーウィンティーさんも書き終わるかな?


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