第7話 因果応報ってやつ
⑦
「時間的に今日はここまでかな?」
今は迷宮内にいるから外の様子は分からないけど、もうすぐ六時、この時期なら薄暗くなっている時間だ。
あれから時間の許す限り色んな検証を行った。
おかげで色々分かったよ。
例えば、迷宮内で一時間過ごすごとにspが貰えること。恐らく一日一回だけど、新しい階層に移動するたびにspが貰えること。強い魔物ほど多くのspが貰えること。迷宮の魔物は死ぬと一定時間で分解され消えてしまうこと。
迷宮の壁や地面は破壊できるけど、直ぐに再生してしまう、なんてことから資源に利用できるかもって話もあったね。
迷宮でspが貰える行動からして、迷宮内に拠点を作るメリットがありそう。将来的には迷宮内都市みたいなのもできるかも。そうなったら攻略は楽になるだろうなぁ。
ん-、私の迷宮に作られそうになったら即排除しよう。めんどくさい。
人間関係なんて、画面越しのうっすーい物だけで十分なんだよ。それ以上は無用な
『おつおつ』
『俺たちで出来そうなとこはやっとくかー』
『お疲れ様です』
「はいはいお疲れ様。まあ、迷宮を出るまでは付けておくつもりだけどね。確認したい事があれば今のうちに聞いてね」
そういえば、迷宮の魔物が消える現象に対して面白い意見があった。迷宮の魔物自体、迷宮という存在によって発現された魔法による現象ではないかって話。
魔法がどういう存在か分からないから、何とも言えないけど、あり得ない話じゃないよね。
ついでにもう一つ、その時議論に参加していた面々が同じタイミングで同じ量のspを獲得したんだよ。その時していた行動で一致したのは、配信を視聴していたことと、迷宮の魔物について議論していたこと。
これは、つまりそういう事なのかな?
もしそうなら、世界の仕組みについて真実を解き明かすことにはインセンティブが発生するってことになる。それも、一万spって割と大きな。
うんうん、いいじゃない。知的探求を促進する、発展には不可欠な利得だ。昔は特許料が担っていた役割になるのかな。
『確認する事かー』
『ハロさんのスリーサイズ』
『好きな食べ物』
『次の配信予定』
『今日助けてくれた方ですか?』
「好きな食べものはチョコ。スリーサイズは知らない。次の配信は未定。とりあえず明日はおやすみかな」
『あ、そういう話題も大丈夫な人か了解』
『だからってノンブレーキだと秒でブロックされそうだがな』
『良識だいじ』
『道玄坂の辺りの地下のお店で……』
しかし、コメントの流れが早い早い。
スレッドも増えまくりでなかなか全部目を通せないなぁ。
ん、モデ、モデかぁ……。
って、ん?
「あなた、今朝の女の子? 無事帰れた?」
『はい! そうです! ありがとうございました! 今拠点の家族の部屋で配信見てます!』
「そう、なら良かった」
『目の色が違うし尻尾と角があるしで声が似てるだけだけかと思ったんですけど、服も一緒だし、そこ近いし、もしかしたらって確認しました! ちゃんとお礼が言えてよかったです!』
文字だけなのに前のめりになってそうな勢い伝わってくる。ちょっとむず痒い。
『なんかしらんが良かった』
『主はお人よしメモメモ』
『百合の匂いを感じた』
百合って。
下手に人間関係作りたくないし、残念ながらこの子とはこれっきりのつもり。
そういえば、友人たちの情報交換はどうだったかな。この姿だし、きっぱり関係を切ろうと思って行かなかったけど。
別に、あいつらの事が嫌な訳じゃない。ただ、人間関係とか、それで出来る柵とかが嫌になっただけで。
まあ、私が身体弱いのは知ってるし、死んだと思ってくれるかな。
あ、出口への階段。
「もうすぐ出口だね。みんな、長々とありがとう。お陰で色んな事が分かったよ」
まだ全部検証できたわけじゃないけど、十分だと思う。他の情報も色々集まったしね。
こういうのを求めて人も集まるだろうから、今後暫くは収入も安定するかな。
部屋の改装も殆ど終わってるし、配信するたびに黒字が増えるね。
『お、もう出口か』
『次はいつかなー?』
『この配信のおかげで生きていける』
『大げさ、でもないな、これ……』
ふふ、これも先行者利益だね。今みたいな状況限定のすっごい特殊な奴だけど。
情報が得られて、貴重な娯楽にもなる。
あ、でも新しいゲームが出た時なんかは近いのかな? 競争相手はいるけど。
まあいっか。そんな事よりも帰ったら即お風呂に入って布団に飛び込もう。
ふかふかお布団でココアを飲みながら読書。至福ね。
なんて思ってたんだけどなぁ。
「はぁ……。喜んで、みんな。配信、もうちょっと続きそうだよ。お客さんだ」
とびっきり悪意に満ちた、ね。
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