ラヴィ
ラヴィの姿が変わっていく。
肌は乾き、樹皮のように。目や口からは綿のような物が生えてきて――
何度も何度も溢れるように出てくる綿を払う。
視界は歪み、何も考えることはできなかった。
でも、どれだけ抵抗しようと意味など無く、ラヴィの姿はどんどんと変わり果てていく。
道中何度も見てきたあの化け物の姿へと。
変化が止まった。
「もう無理だ」
そんなことない。
ラヴィに縋る僕をエリックが引き剥がす。
「やめろよ! ラヴィはまだ無事なんだから」
「暴れるな!」
「嫌だ」
エリックの拘束を振りほどき、ラヴィへと駆け寄る。
一振り。ラヴィは、僕の左腕を容赦なく切り落とした。
何で? ラヴィ、僕だよ?
ゆっくりとゆっくりと歩み寄ってくる。
二振り目、頭蓋を貫かんと刃先が迫る。
はっきり言って僕はもう死んでも良かった。そのはずなのに体はとっさに振り下ろされたナイフを避けてしまった。
ラヴィと一緒にいなければ意味なんて無い。
そしてもう彼女は生きているなんて言えなかった。
どれだけ理解を拒んでもだめだった。
三振り目。足を狙った容赦の無い一撃、これもまたぎりぎりのところで避けた。
エリックの攻撃がラヴィに向かって飛んできた。
ラヴィはそれを軽々と避け、距離を取った。
「なにするんだ!」
「お前を助けるんだよ」
「いらない」
そんな所に都合良く現れる。
「こんなに発症が遅れるなんて面白いなぁ」
また全身を宇宙服のような衣装で覆った骸骨がやってきた。
胴部分に空いていたはずの穴がない。
「お前!ラヴィに何をした」
「おや、君出血がすごいね。治療してあげようか」
「そんなことどうでもいい」
「せっかちだね。そうだ、この子の体貸してよ。上手く行けば記憶や自我の回復くらいできるかもしれないよ?」
「だめに決まってる」
ラヴィに記憶が戻る可能性があろうがこいつにだけは渡してはいけない。それに事の元凶は奴なんだから尚更。
「じゃあ君に何ができるんだい?」
「……」
「なら交渉? 成立だね。それじゃ」
「待て!」
ラヴィの体を担いで奴は走り去っていく。
追おうとするもマリアとエリックに止められてしまった。
体にきつくきつく布を巻かれていく。
何をしているのか分からなかったが、その理由はすぐに痛みが教えてくれた。
意識が遠のく。
どうしたんだろう。エリックとマリアが何かを叫んでいる所まで僕は覚えていた。
結果的に僕は生き残ったらしい。医務室のような場所で目を覚ました。
どこかで見たことがあるようなコンクリート貼りの天井。
冷たい空間なのに左手には誰かの手の温もりのようなものが感じられた。
ぬくもりを感じた手の方を見ると隣には傷だらけの手で僕の左手を握っているラヴィが居た。
「おはようノイア」
ラヴィは化け物になったはずじゃ……
「わっ。どうしたのノイア」
気がつけばラヴィに抱きついていた。泣いていた。叫んでいた。
そんな僕の頭をラヴィは優しく撫でてくれていた。
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