第63話 社畜は勝負事で談笑する

 広いボス部屋の中央で僕と絃紫いとしのさんと朧丸は団子になって積みあがってしまいました。


〖いつまでも外でごちゃごちゃやってっから思わず引っ張り込んじゃったじゃない!〗


 声のする方を見上げると、赤い炎がメラメラと揺れているクジャクみたいなのがふんぞり返っています。


 これが噂のヒクイドリなんでしょうか?


 何とも緊張感のないシチュエーションではありますがこればかりは仕方がありません、僕たちの長話が悪いんですから・・・しかしボス部屋って引っ張り込まれる事が有るなんて初めて知りましたよ(;゚Д゚)!


「妙な恰好ですいません。

 失礼ですが、貴女がヒクイドリさんですか?」

〖あ~!外のヒトなのにあたいの事知ってんの?

 そ~だよ!あたいがダンジョンボスのヒクイドリさ!〗


 質問の返事を聞きながら僕たちは、相手を刺激しないようにゆっくりと立ち上がります。


「実は、僕たちは狛犬さんからの依頼でここまで来まして」

〖狛犬?18階層の住人の分際で外に出たの?あたいよりも先に?

 信じらんない!

 ず~っとあたいには出るな出るなって言ってた癖して自分は出たっての?

 ゼッテェ信じらんない!〗


 こっちとしては喋れるモンスターの事の方が信じられないんですけどね?


「いえいえ、貴女が外に出たいと駄々こねているから説得してくれと僕たちが頼まれましてね」

「うっわぁ!師匠雅楽さん、言い方言い方!」


 絃紫さん、これは交渉事ですよ?相手の意表をついてナンボ、ですよ。


〖ほっほ~、あたいに意見しよ~とか舐めてるよね~〗

「ヤバいですってぇ、怒ってますよ、あちら」

「絃紫さん、静かにしていただけませんか?これは僕とヒクイドリさんの「エリーです!」・・・とにかく黙ってくださいね」


 話の腰は折らないで欲しいんですけどね。


〖それであたいが外に出ちゃいけないって誰が決めたの?

 お前?お前なの?〗

「おやおや、僕に威圧を飛ばすとはずいぶんとまぁ余裕がありませんね。

 そんなに意見される事がお嫌いですか?」


 僕の言葉に炎の色が青に変わります。赤より青の方が温度が高いそうですから随分とお怒りなご様子ですね。


が聞いてるんだけど?

 外のゴミムシがまぐれでここまで紛れ込んだ程度の癖して何でエラそうにしてんのさ?〗

「外を知らないという事は悲しいですね、折角穏便に話し合いで済まそうとしているんですけどお気に召さないようで」


 ヒクイドリは青くなった炎で出来た翼を振るわせます。


 苛立いらだたし気に体を動かすはずみで飛び散る火の粉も青く輝いてます、これは熱そうですね。


〖ふ~ん、身の程知らずのゴミムシはあたいを怒らせたいみたいじゃん?〗

「腹が立つという事は自覚があるという事ですよ、さすがはダンジョンボスですね」

〖え?そ、それほどでもね~よ♡〗


 そこはバカにされたって怒ってくれないとこっちの都合が悪くなるんですけどね。


 仕方ありませんね、攻め方を変えましょうか。


「それにしてもなんで外に出たいんですか?」

〖へ?あたいにだってカレシの一人や二人いたっていたっていいじゃん?

 だからそいつを捕まえに行くんだよ〗


 マジに婚活ですか・・・外は魔素がありませんから他のボス級のモンスターなんている筈無いじゃありませんか。


 しかし、それを素直に言ったところでこの色ボ、いえその、春仕様の頭では理解してくれるとは思えませんね。


「近くに居るといいですね、・・・それはそうとボスが外に出たらダンジョンってどうなるのかご存知でしょうか?」

〖そんな事ァあたいたちの知った事じゃねぇよ。

 あたいはあたいの生きてぇよ~に生きるだけだからさ〗


 ダンジョンちゃん、実際のところどうなるんです?


【えーっ、つごうがいいときばっかよぶんだもんヽ(`Д´)ノプンプン。

 おしえなきゃダメ?】


 そちらの都合が判らないんですからこっちの都合で呼ぶしか無いじゃありませんか(屁理屈ですけどね)、説得する材料が少なすぎてどうしようもないんですからお願いしますよ。


【だったらむりしてこんなトコまでこなきゃいいのに┐( -"-)┌ヤレヤレ...】


 週に一度はダンジョンに潜れとか言ってきたのはどこのどなたでしたっけ?


【えーん(つд⊂)、ヒロくんがイジワルゆーよー】


 ウソ泣きはいいからサッサと教えてくださいよ。


【えーん(つд⊂)、ヒロくんがつめたいよー。

 で、なにがしりたいの♪】




 BOMB!!


 目の前の床が激しく燃え上がっています。


 ヒクイドリの攻撃、いえ威嚇でしょうか?


 ヒクイドリの色が青から白に変わっていますね。


 白熱化ですか、相当怒っていますね。


 多分、僕が急に黙り込んでダンジョンちゃんと交信を始めたものでつんぼ桟敷に置かれたヒクイドリの機嫌が急降下していました。激おこぷんぷん丸ッて奴でしょうか?


 君は放置プレイと言うものを知らないのですか?上級者にとっては『おごちそう』なんだそうですよ?


〖あたいを無視すんな!〗

「無視だなんてとんでもない。

 貴女があんまり無知なものだからダンジョンマスターに確認を取っていたんですよ」

〖ダンジョンマスター?誰の事?ここにはお前たちとあたいしかいねぇじゃん!

 もしかして横のお前のつがいがそのナントカなのか?〗

「え?あたしですか?

 いえいえ、ダンジョンちゃんは師匠のおトモダチであって、あたしは見た事も会った事も無いですから!

 ・・・やっぱりあたし、師匠の奥さんに見えますか?

 フッフッフッ!見る人はちゃんと見てくれてるんです!師匠!そろそろあたしを認めてくれてもいいじゃないですか!」


 さっきまでヒクイドリにビビりまくっていた絃紫さんは、何か変なスイッチが入ったみたいで一人で暴走を始めてしまいました。


 少々うるさいですがビビりまくられるより生存確率は上がりそうですから黙っていましょう。・・・僕の見立てでは、実力的にも相性的にも貴女ヒクイドリに勝てますからね?楽勝で。


――――――――――――――――――――――――――


 遂に飛んでしまいました・・・たった2000字がこんなに遠いとは・・・


 予定としては3話前で決着が付いていた筈なんですけどまだもたもたしてるんですもの・・・終わるんでしょうか?


 それにしてもご迷惑をおかけしてすみません


 取りあえずのゴールはもうすぐなのでお付き合いいただけると幸いです


 

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