第61話 社畜は能事に思いを巡らす
現在、僕たちは19階層を絶賛爆走中です。
心の汚い僕は、狛犬の獅子の最期の言葉を信じられなかったのですが、19階層へと繋がる回廊の入り口に陣取った石像の群れの中に瀕死の狛犬の獅子の肉体(石像のモンスターの肉体って我ながら意味不明なんですけど)を投げ入れましたところ、モーゼの十戒よろしく石像たちが左右にザザッと分かれその間に出来たまるで花道のようになった隙間を粛々と通り抜けてこの階層へと至った訳です。
心の綺麗な
きっと僕には、世間に揉まれ過ぎて素直にものが考えられない弊害が出てきているのでしょう。
そう言えば、襲ってくるモンスターたちにも心がある事を狛犬の獅子は身をもって教えてくれました。
それなのに、朧丸にだって感情の起伏や発露がある事を目の前で見ているのにそれが特別なものだと信じ込んでいました。これはテイムされてからこその現象だと。
激しい戦闘だって向こうからすると不法侵入者を排除したいのですから当然の行動なのだと今は理解できています。
「どうしたんですか?
浮かない顔して何か食べ物にでも
僕は貴女と同じものを同じタイミングで食べていますから、僕が中る時は貴女も中るんですよ。
「ハネムーンの花嫁をほっぽってどっか変なトコに行っちゃうとか、シャレになりませんからダメですからね」
僕の戸籍は、まだ一度も結婚した事ありませんから真っ白ですんで。
こんな
竜巻一発で烏天狗たちは全滅しました・・・また未亡人を大量発生させちゃいましたかね・・・
「・・・(南無南無)いろいろと気を使わせちゃいましたね。
あまりに情けなくてオトナとしては反省しまくりなんですけどね」
「そんな事ありませんって!
あたしって気配りが足りないっていつも
へぇ、リリーさんって、自称勇者に引っ掛かっちゃった残念なヒトって言うのが僕の中での評価でしたが、それ以外の部分ではなんと絃紫さんのお手本みたいなヒトだったんですね。
男を見る目以外は・・・僕になぜかノボセまくってるトコを考えると、もしかして絃紫さんって手遅れなんでしょうか?
とにかく、それってちょっと貴重じゃありませんか?だって、服のサイズで妊娠を判別できるヒトなんてこの世に何人いると思っているんで?
「なんか不届き者のニオイがするんですけど?
妙な事考えてませんでした?」
「とんでもない、今までの事やこれからの事を色々と頭の中で考えを巡らせていただけですよ。
そうだ、室長のその後は御存じありませんか?」
「えっ!正妻の前で違う女の事を考えていたんですか?
もう、あたしの心が広いからいいですけどひとに依っちゃあ血の雨が降る案件ですよ!」
冗談めかして混ぜ返してくれましたが、・・・眼が笑ってませんよね。
話題を切り替える先を間違ってしまったようです。僕はこういう女性との機微には
あ、それからまだ手も握った事も無いのに絃紫さんたらいつから正妻に就任したんですか?
「だってよく考えてもごらんなさい。
あんなに騒がしい人が何も問題を起こさずにいつまでも過ごせている筈が無いじゃありませんか。どれだけの人に迷惑を掛けているのかと思うと・・・
僕があの人の教育係になって、どれだけの貴重な髪たちが強制的にバイバイしていったか解りますか?
あの暴れイノシシを制御する方法があるんでしたら僕は百万出しても惜しくはありませんでしたよ、ええ!」
「・・・でしたら
てりゃあ!」
絃紫さんったら、僕と話しながらでも横合いから飛び出してきた木の葉天狗を槍の一突きであっさり魔石とドロップ品に変えるんですもの、何のかんのと言っても乙級の実力に陰りはありませんね。
でも
そうこうしている内に、奥の方に出口らしき扉が見えてきましたよ。
御親切に階層を繋ぐ扉はどの階層でも、いえ、どのダンジョンでも見事な飾りが施してあってすぐに分かるようになっていますからね。
狛犬の獅子が言っていた通り19階層は単純な造りで迷いようがありませんでしたね。
簡単に言えば曲がりくねった一本道(迷路型迷宮ですから角の向こうは見えませんが最後の直線は100メートル程真っ直ぐですから)で左右の壁に並ぶ小部屋を覗くと中でモンスターが待っている形式ですね。
当然ながら中に入れば戦闘が始まり、無視して通り過ぎると部屋から飛び出して追撃をしてくるそんなダンジョンなんですよ。
当然のごとく通りすがりの両脇の小部屋から隙を衝いて出て来る(つもりらしい)雑多の天狗どもを弾き飛ばして僕たちの快進撃は終わりそうにありません。
いつの間にか色々と罪悪感に
結局のところ、殺さなければ殺されてしまうのです。
でしたら絃紫さんを生き残らせる為にも前に進んでいく他は無いんです。
それが探索者と言う外道の生きる道なのですから。
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