第40話 元社畜は関心事をはぐらかされる
「呪い、発動してましたよね?」
「はい、しっかり」
おやおや、
「あのおばさんの様子からすると相当
「ええ、中々にガツンと来ましたね」
眉を
「僕がなぜピンピンしているかが解らない?」
悩まし気に溜息を
「さっき僕が何をしたか、思い出して貰えたら答えの糸口は見つかると思いますけどね」
「ホントですよね?」
僕ってそんなに信用無いんでしょうか?
「呪われるのも構わずに杖を取って収納から取り出した黄金に躊躇する事なく杖の力を掛けて投擲、エルダーセンチピードの防御を破壊してグリちゃんの風魔法でトドメを刺した。
それ以上でもそれ以下でも無いですよね?
そして追跡者のおばさんが黄金に触った途端呪いに掛かって瀕死の重体になっていると。
でも呪いを掛けるなんて事、人間に出来るって聞いた事無いんですけど・・・」
呪いを掛けるのは
僕はポーターですから。
「解呪ってどうするのか知っていますか?」
「坊さんに加持祈禱して貰うんじゃなかったっけ?」
仏教式の解呪を経験した事が有るんですね。
アレだと護摩を焚いたりその傍にいなきゃだったりとやたら熱いんですよね。
「あとは陰陽師の方に解呪符を使ってやって貰うとかキリスト教の方だったら頭からびっしょびしょになるくらい聖水を掛けられて入信しないかどうかずーっと尋ねられながら終わるのを待つとかそんなイメージでしょうか」
両方とも経験がありますから実体験として呪われてる苦しさと身銭を切って精算しなければならないみじめさとで
呪いに掛かる事を強要された挙句に、解呪に掛かる費用はお前が勝手にやった事だからパーティーの金からは一円たりと出さないとかふざけた事を言ったあの男の事は生涯忘れる事は無いでしょう。
そう言えばこの業界に戻ってきてからあの男の事は聞いた事が有りませんね。
「でもここに坊さんも陰陽師も神父もいないんですけど?」
「そんな人はいなくても解呪は出来るんですよ」
絃紫さんが疑わしそうな攻める目で僕を見ていますね。
ウソは言ってませんよ、現に僕はピンピンしてるじゃありませんか。
「呪いってのは呪いを移すものが有れば逃れられるんですよ」
正確には解呪ではありませんが、呪いの対象から外れられれば呪いは無かったのと同じなんです。
だから僕は呪いをあの金の延べ棒に移して呪いを解いたんです。
解いた後の延べ棒に誰が触ろうともう僕には関係が無い、それが呪いと言うものです。
ただ、呪いの
「それでは上に戻りましょうか」
「アレを放置してですか?」
「ダンジョンで物を拾うという事の恐ろしさを知る為の勉強代として苦しんでもらった方がいいんです」
「
「では
ダンジョンは、自分以外は全て敵だと思わなくてはならない厳しい世界です。
乙級にもなって人が好い、そこが彼女の美徳でもあるんですがここは心を鬼にして敵を潰す覚悟が必要なのです。
「ここに来るまで戦力を隠してきたのはたらいまわしに対する腹いせでもあったでしょうが相手に対する不信感の表れだったんじゃないんですか?」
出かけた言葉を思わず飲み込んで僕の顔を見つめる絃紫さん。そんなに間近で美人に見つめられるとか惚れたらどうするんですか?
「じゃあ助けないって事でしょうか?」
どこまでお人好しなんでしょうね、このお嬢さんは。
「・・・はぁ。では、ミッションコンプリートの確定を認めさせれば助ける事にしましょうか」
僕も甘いですね。その場しのぎでどんな事でも言うだろうと予想が出来るのに助けるだなんて。
「そこの方、何かお手伝いしなければならない事が有りますか」
我ながら手伝いなんかしたくない本音が
「お構いなく」
おや、おばさんは見殺しですか。
「お仲間では無いのですか?」
「行き先が一緒になっただけの他人ですので。
それに無防備にダンジョン内で物を拾うとか常識以前の行動をされてフォローをするほど人が好くないものでね」
だったら法律緩めてシロウトが拾いに来れる様な事を始めるんじゃありませんよ。
今に呪いが怖くなって誰も入ってこなくなる事が確定じゃありませんか。
「こちらとしては今回のミッションの成功さえ認めて貰えるのならあの方を外に運び出すぐらいの事はしてもいいと思っているんですが?」
「ダンジョン本庁としては今回は成功と
イレギュラーボス発生も確認できてますから丁種10階層及び戊種5階層の制覇認定致します」
外に出すのか出さないのかを聞きたいんですけど?
それと元々僕たちが求めているのは制覇認定では無くて、パラメーターの更新なんですけど?
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