第25話 元社畜は心配事を確認する

「そうですね、もしよろしければあの娘グリフォンについてもお教えいただけますか?」

【ともだちだもん、なんだってきいていいよ♬】


 鷹揚なダンジョンに付け込むようで気が引けますが今後の事もありますからちゃんと聞いておきませんとね。


「あの娘はテイムしたものと考えてもいいんですか?」

【もちろん♫あのこもきたがってたしういんういんってやつだよね?】


 ちょっと待って欲しいんですけど!


 テイムって使役士とか使役師とかって人たちが散々苦労して成功させてるって聞いた事あるんですけど!それにフロアボスクラスのモンスターをテイムした話なんて寡聞にして記憶にないんですけど?

 記憶では僕に使役士になれるスキルなんて全然生えていませんけど?


「突っ込みどころがたくさんあって目移りしそうなんですけど、まず一つ。

 なぜスキルを持たない僕がテイムできるんですか」

【しょーごーのこーかってのがあるでしょ?それだよ♪】

魔獣モンスターを卵から育てたら従魔になってくれるなんて世迷い言を一瞬思い出したんですけどそれとは違うんですね?」

【・・・ちがうもん(# ゚Д゚)】


 一つのダンジョンに潜り続けている探索者の中にはダンジョンに住み着いてある階層を離れるつもりがない場合、そこに住み着くモンスターの卵を入手して自分で育てて自分の仕事を手伝わせる疑似使役士テイマーと言ってもいい人たちがいることが報告されています。

 本物の使役士と違うところは従えているモンスターが違う階層に行く事が出来ずにその関係を維持する為にはそのダンジョンのその階層から動く事が出来ないと言うところです。


 人間が進出できた階層は一番深いところでも10階層程度、10階層を突破して11階層をのぞいた事がある探索者は世界中で十指に余るほどこれまで居ましたが戻ってこれた者は皆無、これが現実です。広くても人とほとんど会う事のない狭ければ生活圏内に常に危険が存在するそんな牢獄に自分から入りに行きたい人物とは、よほど後ろ暗い事をして俗世に戻れないか相当の人間嫌いでモンスターにしか心を開けないかだと言われているんです。


「それに自分のステータスを自由に見るとかゲームじゃないんですから称号の効果なんてここで解る訳無いじゃないですか?来たがっていたという事はあの娘は態々わざわざ僕を選んでこんな不利なダンジョンに現れたという事ですか」

【ここにきたのはぐうぜんんだよ?でもともだちにあげるはじめてのプレゼントだもの、ちゃんとあいしょうとかあうこたちからでてくるようにしたんだよ?】


 解釈すると、僕との相性を考慮してあの卵に入るモンスターの候補を絞って僕の運に託したとでも言う事ですかね?運が4の僕に(最大値は不明ですが)何の補正も無く託すってバカですか?


「ではこの娘をテイム出来たらこのダンジョンから外に出す事も可能という事でしょうか?」

【もちろん♬もっとひろいフロアにだってつれてけるよ♡】

〖クルルル~♬〗


 自分の事が話題になっていると気づいたのかグリフォンが狩りを止めて僕にじゃれついてきます。

 ・・・だから君のパワーでり付けられたら転んじゃうでしょ?はたから見たら鷲の頭に羽の生えた秋田犬に襲われる貧相なノービス親父の出来上がりじゃありませんか。


「でもこの大きさで外に出せるんですか?

 見た事のあるテーマ―さんたちが連れていたのはスライムか精々コボルト程度でしたけど」

【ダイジョブじゃない?いまのおおきさまでならでっかくもちっちゃくもなれるよ♪】

〖クルッ!〗


 話題の中心になったのが嬉しいのかグリフォンが卵からかえった時の大きさまで小さくなって見せてくれる。意外とサービス精神が旺盛ですね。

 この大きさだったら頭グリグリをされても体をこすり付けられても僕がケガする心配はありませんね。


「で大きくなるのはさっきの大きさまでなんですね」

【いまはね♫もっといしをたべてそだつとこのへやいっぱいになるぐらいにおっきくるよ♡】

〖クルルルルゥ♡〗


 大きくなる話になった途端、グリフォンがまた秋田犬サイズに戻ってしまう・・・小さい方がかわいいのに。


 はっ!すっかりコイツを飼う気になってました!

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