第26話 元社畜は交渉事に手を抜かない

 こんな機会がいつまでも続くとは思えないので、既成事実化されかけているグリフォンのテイムは置いといて(正直半ば諦めてます)次の質問をさせてもらいましょう。


この娘グリフォンが外で何を食べるのかとか色々聞きたい事はありますけどそれより先に聞きたい事があります。

 今のステータスを確認する方法って何かありませんか?」

【カードにのってるでしょ?】


 最初に登録した時のデータですがね。


 大体レベルがあるとか称号とかが増えるとか何も知らなかったからデータの更新とかしていないんですもん。っと言いますか、データが更新できるなんて情報有りませんでしたから!

 探索者免許カードのデジタルアプリ化にしてもデータを移すだけで改めて計測するとかやっていない、と言うかそんな無駄はしない方針だって図書館ダンジョンでどさくさ紛れに掴まされたパンフレットに書いてありましたから。


「今のステータスを確認したいんですよ・・・大体みんなレベルが上がっているならステータスの変化に気付きそうなものですけどね?」

【きゅうにあがらなきゃきづかないんじゃないの?】


 だから解る方法が欲しいと言っているんですよ!


「昔からみんなが虚空に向かって『ステータスオープン!』とか『鑑定!!』とか『パラメーターインディケイション!』とか『きらめける光の粒子よ、よどみたる闇の粒子よ、今ここに我が魂の刻印を示せ!』とかやってるのを見た事ありませんか?

 あれは、単なる厨二病の発作とかじゃないんですよ?みんな自分の変化を実感したいんですよ。少しでも変化があったら確かめたいのが人情と言うものですよ。

 せめて、外では無理にしてもダンジョンの中でだけでも見る事が出来るようになりませんか?」

【でもー♫あれはー♬さわっちゃダメっていわれてるのにー♬どーしよーかなー( ´艸`)】


 かなり舐められてますね・・・この野郎ダンジョンさやかお嬢様なみに太い神経してますね。大人を困らせるとどうなるか思い知って貰いますか。


「あぁ、他の方の裁可が必要な案件でしたか。それは残念ですね。

 では他の方、言い換えれば上司の方に話を通していただけますか?今すぐに」

【じょーしってなぁに?あたしがいちばんなのにほかのひとってなぁに?

 おともだちだとおもってたのにひどい(# ゚Д゚)】


 ほほう、上司はいないのですか・・・でもこんなお子ちゃまが全権を握っているとかダンジョンってちょっとヤバ過ぎではありませんか?と言うかまさかとは思いますが、世界中のダンジョンってこのお子ちゃまの支配下にあるんですかね?


「少し言葉が過ぎてしまった事は謝ります、すみませんでした。

 でもこれからのダンジョンの利用者は、これ次第で上がるか落ち込むかの瀬戸際だと思いますよ?」

【・・・そうなの?もしかしてだれもこなくなっちゃうの?(´;ω;`)】

「決断と言うものは時期を失うと全てを失ってしまうものですからねぇ」


 決断と言う名の誘導をする僕は悪い大人でしょうか?悪用しないからいいと思いませんか?


【すべてをうしなうなんてきっとうそだよね?】

「どう考えるかは個人の自由と言うものですよ、ええ。

 そうだ、一つたとえ話をしてみましょうか?

 ある男が鶏を見定めています。

 見ているのは赤い鶏と青い鶏と黄色い鶏が1羽ずつ入った鳥かごです。

 男は1羽を選ぼうと思っています、自分が欲しいものを思い浮かべながらね。

 赤い鶏は男をにらんで威嚇いかくしています。青い鶏はおびえて男の方を見ようとはしません。そして黄色い鶏は男を無視して寝ています。

 さぁ、男はどの鶏を選んだのでしょうか?」

【えー?わかんないよー(# ゚Д゚)】

「答えは違う鳥かごにいた茶色い鶏を選んだ、です」

【・・・あ?】


 僕の答えにダンジョンも驚いているようですね。

 ちゃんとしたたとえ話になっていないのは僕が即興で作った話だからです。どうやら提出物用の文章は書けても、物語を紡ぎ出す文才には恵まれなかったようですね。我ながらがっかりです。


「理由は解りましたか?」

【あかいのがこわかった?】

「それじゃ青や黄色のは?」

【なついてくれなかったから?】


 まぁ黄色は寝てるんだから懐きようは無いですね。


「惜しいと言えば惜しいと言うところですか」

【えー(# ゚Д゚)ちがうの?】


 驚くだけで怒ってはいないようですね。普通ならこんなインチキの答えに納得なんてしないでしょうからね。


「赤や青や黄色を選ばなかったのはからですよ。

 判らなかったから普通の茶色い鶏を選んだんですよ」

【それがどーしてたとえばなしなの?】


 鈍いと言うよりも幼い・・・


「ステータスが確認出来なければ実力が解らないんです。奇抜な見た目を選ぶも無難に平凡なものを選ぶも自由と言うものですよ。

 ですから、この男は奇抜なのを選んで後悔するのが嫌でごく普通の鶏を選んだんです。

 自分の実力が判らなければ無茶な探索で命を落とすかもしれないんです。

 だからステータスの開示をお願いしたいんですよ」

【たんさくしゃやるのにしんちょうなのってちょっとへんなかんじだけどおともだちのいうことをきけなかったらだれもこなくなるかもしれないんだよね(# ゚Д゚)


 これでステータスをみれるとおもうの♬

 じゃあ、このこをつれてかえってね♡】


 何の予兆も無くダンジョンの気配が消えて行きました・・・グリフォンのエサの事とかダンジョンについての情報とかまだ聞いていない事がいっぱい有ったんですけど、何の説明も無いまま消えて行っちゃいました。


 ステータスが開けるようになったらしいですけどどうやって開けるんですか?

 呼べど叫べどダンジョンからの返事は無く僕の声は誰もいないダンジョンにこだましていました。

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